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R1落語を書いてみました
目黒の道具や
設定 江戸一番の道具屋を騙そうとする長屋の仲間たち
まくら 昔から、物の価値、人の評価を題材にした落語が多くあります。
有名なところでは「猫の皿」「へっつい幽霊」「ウナギの太鼓」「お神酒徳利」
自分の目で見たもの、それの安い・高い、でお話が進めてゆく噺が多いです。
三吉:おいおいちょっと聞いてくれやの文治のやろーのこったい。
江戸では指よりの道具屋が目黒に住んじゃいるが、どうにもならない
因業でいけねーや
おいらが道具を選びに行くと
あれはいい職人の作りだから高いのはあたりめー」
「お前の下駄は安つくりだね」
この道具の素材、鋼の作り、研ぎの手触り、作り手の名前までご高説
が長々と続く。
今で言う、「なんでも鑑定団」を自で行く目利きだ。
果てはお仏壇の彫り物から、年代の鋼、材質など詳しく、ちょっとほ
めようならくどっくどと
挙句の果てに
おめーのかかー ありゃひどいね よくも生きていられるね
奥にしまっておいたほうがいい。人前に出さねー方がいい
なんてね。おりゃ悔しくて、たまらんよ
一同:そりゃ あんまりだね 人前に出さねーのは納得だがね。
留五郎:おめーらに相談があるんだがよ。
ちょっとこんな事をして、(博打のしぐさ)しくじっちまって懐が
さみしくなっちまって、
道具箱を入れて用立てたんだよ
道具がなけりゃ仕事もできない。
そこらにあるやすい道具箱とおいらの大工道具を入れ替えたい。
そこで道具屋の文治をちょっと呼びだしてもらいてーんだよ,
三吉:おいらにもちょっと考えがる。
あいつは確かに目利きだが、酒となるとからっきし見境がなくなる。
そこで酔っぱらわして本物と偽物をを当てさせようじゃねーか
留五郎:おい!はんこー
古道具屋へ行って手あたり次第安いものを借りてこい
箱、のみ、くぎ抜き、かんな、ノコギリ、墨つぼ、玄能、ひと揃い
質屋のおやじにもおいらの道具箱も持ってきてくれとそう伝えてっ
くれ
三吉:やい 文治さんよ
仲間が集まっているんだが、1杯飲もうということになって
顔をだしちゃいただけませんか
文治:よー 珍しいね 飲みとくりゃ たとえ地の果て 陸の果て
ひと仕事かたずけておっとり刀で参上しますよ!
居酒屋
文治:ごめんよ 安い暖簾だね。褌をぶら下げているようだ。
半助:来た来た ようよう おめーさん、たいそう有名になって。
そんなに稼いで蔵でも立てるつもりかよ
まー 一献!
よっ いい飲みっぷりだね
文治:この酒はいい酒だね
内でかかあ相手に飲む酒は、あっちよれ こっちよれでなかなか飲み
込めないが、
すーっとはいっていくね
三吉:どんどんいってくれ
めっぽう目がきくと目黒界隈いや、江戸の中でも右に出るものなしと
評判じゃねえか
半助:借りてきたよ 古ぼけた道具箱がそこに、質屋の旦那にも来てもらっ
たイ
留五郎:こっちに来て、おいらの道具ともう一つの道具を見立ててくれやし
ませんか?
全部正解したらここの飲みすべてちゃらにしちゃう
文治:よー気前がいいね さすが大工の棟梁。
よしいっちょ 当ててやるか
三吉:手ぬぐいで目隠しをしてくれや
おい はんこー道具をもってこい。
文治:ちょっと使ってあるがこれは高級な道具だね
金額までしっかりわかるね、古道具屋から持って来た。
こりゃひどい道具だね、手入れもままならない使い古し
それを見ていた質屋の旦那がこんなふうに言います。
旦那:もし全部当てたこの場で返してやろう
もし一つでも外したら倍のきんすにしてもらおうじゃねーか
文治:かんなだね この台尻は使い込んでいていい肌触り、桜材だねこりゃ
2両はするもんだ、
カンナ身が命だ この鋼は南部鉄だ
次は何だい
鑿(のみ)だね 刃幅がつーっと通っていて臍を刻むいい道具だ
柄は桂の木だね こりゃ値打ちもんだ
質屋の旦那:こりゃたまげた。めっぽうな目利きだ
三吉:やり取り持ってこい
半助:やりとり?んだそりゃ。
文治:おしたりひいたり のこぎりのこっちゃ
こりゃ甘いね。柄もゆるいじゃねーか
半助:かしてみな「どれどれ ぺろっ」げー」
文治:鋼の焼のことだい
こっちの道具をかしてみな、
「このしなりは新潟の燕 三条の鋼 目立ては
薄すぎず、厚すぎずいい道具だ
三吉:次は えんまだ
半助:指きりかい?
文治:そりゃ げんまん 閻魔とはくぎ抜きのこと。
地獄ではサギシ・嘘つきは舌を引き抜くという符丁のこったい。
半助:んじゃ
これはどうだ
触れれば弾散る氷の刃
尾っぽにふんどし紐を巻き付け
目の前に横たえます。
おいおいかなり酔っ払らっちゃって大丈夫かい
文治:てやんでー文治さまに見立てができないものはないよ
この刀は短刀だな。ずしっとしていい塩梅だ
包丁にしては身が厚いね
んーなんだか酸っぱい匂いがするじゃーねーか
半助:あたいの褌がわかっちまったか
八日も洗ってねーんだ
おもてで四日、うらで四日
三吉:はんこー せめて四にしろい
留五郎:表裏で2日づつな
きたねーなー
結び目が黄ばんでるじゃねーかー
これじゃ後で食えやしない
文治:んー ずいぶんしなるね
半助:昨日まではぴーんと立ってたけど
今日は少し兄貴かもしれねーや
文治:刀がしなるのは名刀の証だ!
折れにくく波紋が複雑な証拠だ
なんだか魚臭いね
半助:上がってきいたときには、なんとも言えねー
香りがしたもんだが
文治:こんな短刀は煮ても焼いても食えない
まがいもんだろ、
三吉:いやいや
煮て良し
焼いて良し
殿様だってお召しになる
目黒の刀だよ
文治:殿様がお使いになる?
どんな名が彫ってあるんだ
どれどれ
目隠しをとってみると
こりゃ
名だけで無く頭も付いてる
お値打ち品だ!さすが 目黒のかたなだ
お後がよろしいようで!