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短歌 - (控)



初めて行った居酒屋で、ママさんと
見知らぬ常連さんとカウンターでお話しした。

わたしは『一見さん』でいるのが好きなので
どの店でも基本的に静かに呑んで食べ、ほとんど誰とも話さず、一定の距離と理性を保ったまま店を出るようにしている。
誰の記憶にも残らないように。
自分でもその店のことを忘れるように。
そんな風に生きているためか
たま〜に店で人と話すことがあったら
自分のなかでその店のことは濃く印象に残る。
よくもわるくも。



ちょうどその頃はサッカーの世界的な大会の時期で、連日深夜にもテレビで試合の放送があったらしく、其処彼処でサッカーの話題を耳にした。
わたしはスポーツは高校野球と箱根駅伝しか観ないので(ひどく偏っている)、
それ以外のスポーツの話題は興味もないのだけど
居酒屋のカウンター席にいたときも、
やはりサッカーの話が聞こえてきた。


「夜中に始まるサッカー観なあかんからこれから帰って一回寝るねん」
とママに早寝の予定を報告していた常連さんが、
突然こちらに話しかけてこられた。
試合の放送は午前3時だか4時だかのスタートらしく(はっきりとは覚えていない)、
平日なので試合を観たあとそのまま仕事に行くという。過眠体質のわたしは眠りを差し置いてスポーツ観戦など苦行にしか感じないけれど、
それを好きな人にしてみれば最高の一日のスタートだという。陽氣が過ぎる。寺の朝より早いぞ。
会話の流れから
「お兄さんはサッカー、されるんですか」
と、訊いてみると
常連さんは含み笑いをし、代わりにママが
「この人は野球よ〜!野球顔やん」と答えた。
言われてみると圧倒的な『野球顔』だった。



「ほんまや!野球顔で内野顔ですね」
「内野顔!?www」
「え、内野ですよね?」
「内野よ、内野内野!」
「セカンドショート顔」
「ブフォw」
「どちらかといえばショート顔」
「ショートショート!!!控えベンチやけど!!!」
「あぁ〜!!ベンチ顔〜!!!」
「ベンチ顔て!!!😂」


ママも「ベンチ顔〜!」と笑ってくれた、
ぐらいの朧げな記憶はあるけれどそれ以降の会話はおろか、どのように別れたか定かではない。
たまに人と話すとそんなに呑んでいなくても
いつもより酔いが回るらしく、
余計なことまで話してしまった……ような氣がしてくる。
この件に至っても数年前の出来事だというのに、
いまだにふいに脳裏をよぎっては
ひとりで「わああぁぁあ😱」となってしまう。
ベンチ顔て……!(すいませんでした!!!)
でもなんか足速そうやし機敏そうやし、
カウンター席の端っこから反対の端っこのわたしにでっかい声で話しかけてくるような陽氣でタフな感じからして、ベンチを盛り上げてるイメージがみえたんですよ……!!!(ほめています)



願わくば、誰の記憶にも残っていませんように。


数年経っても再訪できずにいるその店のことを
ときどき、思い出す。




⚾️サッ=͟͟͞͞( 'ω' =͟͟͞͞( 'ω' =͟͟͞͞)=サッ



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写藍
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