カレーパン・ハイウェイ
カレーパン。なんだか無性にカレーパンが食べたい。
パン粉のかかったカリカリな衣は噛むとじゅわっと油がしみて、もちもちムチムチのパン生地からピリ辛のカレー餡がとろとろって流れ込んでくるような、アツアツのカレーパンをほふほふ食べたい。
それも、高速道路、サービスエリアのカレーパン。
きっかけはTVニュース。行楽日和の高速道路は渋滞もなく、というキャスターの言葉でグワーッ!とマグマのようにカレーパン欲が噴火した。
高速道路のサービスエリアはオアシスでありテーマパークだ。
運転で疲れたドライバー、強風に凍えるバイク野郎、固まった腰を伸ばす大人たち、窮屈なチャイルドシートの憂さを晴らして跳ね回る少年少女。老若男女、旅の道中、必須スポット。
トイレ、ガソリンスタンドだけでなく、売店、屋台、レストラン、ゲームセンター、農産物の直売所、温泉や宿泊施設を備えていたりする。
大量の来客を一度に裁くためのトイレの誘導に感心したり、清掃スタッフの気遣いだろう花瓶の花や折り紙に癒されたり、フードコートでご当地名物に舌鼓をうったり、目的地の途中なのに土産物をみたり、顔出しパネルを楽しんだり。
限られた休憩時間をめいっぱい満喫し、最後に向かうのはベーカリーだ。
サービスエリアのベーカリーにはあんパンやクロワッサンなどの定番品から、ローカルなご当地パンや、工夫を凝らしたサービスエリア名物などがずらりと並んでいる。
バックヤードで焼き上げているところもあって、そうしたら香りの誘惑も相まって訴求力は天下一品だ。
車中で小腹がすいたときに食べればいいし、なんなら明日の朝ごはんでもいいんだから、 と言い訳しつつ、毎回トレーいっぱい選ぶのだけど、
気分のままに入れ替えるメンバーの中で、カレーパンはいつもスタメン入りで間違いない。
ところで、カレーパンと言っても多種多様、なにせカレーが一筋縄ではいかぬ万能選手。
肉はチキンかポークかビーフか、あるいはフィッシュ?野菜だけ?
名産和牛のビーフカレー?アサリたっぷりのシーフードカレー?玉ねぎがシャリシャリ甘いドライカレー?
個人的に好みはオーソドックスな家庭用、市販のカレールウ辛口の味がするような、具は小さく細かくて、
ときどきニンジンや肉のかけらが発見されるような全体的には滑らかなカレー。ジャガイモがほとんど溶けてるようなタイプが好き。
半熟卵入りのリッチなタイプもあるけれど、プレーンのほうがカレーパンに集中できていい。
カレーパンの生地だって、揚げる、焼く、蒸す、さまざまだけど、やっぱりパン粉に包まれた揚げものタイプに一番はしゃぐ。
カレー粉が生地にも練り込まれていたりして、こんがり茶色の表面を一口かじったあと断面がサフランイエローだったりすると万々歳。お得感があって嬉しくなる。
味合わせるならとことんカレー!カレー!カレー尽くし!その心意気や良し!
フードコートでカレーライスじゃなくカレーパンを欲するのには、片手で気軽に食べられる利便性だけじゃなく、
揚げ物になることで大幅にアップする満足感、すなわちカロリーを体が求めているんだと思う。ドライブって意外に疲れるものね。
それに、もちもちの生地がどことなくナンを思わせるのも理由の一つだろう。お店のナンってカリッサクッと揚げ焼きしてるところが多いから。
揚げたてがゲットできたら最高だけど、温めてくれたりするところもあって、その心遣いがありがたい。
冷めてももちろんおいしいけれど、できれば熱いところをぱくつきたい食べ物だから。
頬張るとパン粉がカリカリッと音を立て、ぽひゅっ、と口の横から空気が抜け、もちもちのパン生地をかじり取ると熱々のカレーに遭遇する・・・。
カレーのスパイシーさ、パン生地の甘さを一口で頬張るマリアージュ。
カレーパンってなんだか洒落てるし、そのくせちょっとやんちゃだし、遠出で浮かれた気分にちょうどいい。
行楽でも仕事でも、高速道路で遠出する、その道中のよき相棒。
梅にウグイス。紅葉にシカ。ハイウェイにはカレーパン。
相性抜群の組合せを、早くのびのびと堪能したい。