どう生きりゃいい?
息もできない(2008/韓国)
監督:ヤン・イクチュン
出演:ヤン・イクチュン キム・コッピ イ・ファン パク・チョンスン
監督自身の体験がベースになっているというこの作品は、借金をし、家を売ってまで完成させた執念のデビュー作。暴力の連鎖から爆発する心の叫びや苦しみが生々しい。
特に主人公は暴力でしか気持ちを伝えられないから、思いやりを表現できなくてつい殴ったりしてしまう。暴力は彼の言葉。彼は捨てられて凶暴化した野良犬なのだ。
愛に飢えている人間は、愛でしか救われない。だから、出会った2人は支えあう。
そんな似た者同士の2人が、河原に座って堪えきれずに泣くシーンときたら、これがもらい泣きせずにいられようか。ここで膝枕は反則だ。
2人の父親が共に暴力的なのも、ベトナム戦争という歴史的背景を無視しては語れないだろう。彼らは、国の豊かさと引き換えに犠牲を強いられた世代。その歪んだツケが、子供たちの世代に回ってきているのである。
そのせいか、暴力満載なのに嫌悪感や不快感よりも哀しみが漂う。ハッピーエンドから程遠いのに、絶望感よりも切なさが身に迫る。
彼は彼なりに変わろうとしていたんだよ。