
時が来れば私はやって来る
ムトゥ 踊るマハラジャ(1995/インド)
監督:K.S.ラビクマール
出演:ラジニカーント ミーナ
今思うと、何で私はあんなにたくさんラジニカーントの主演映画を見たんだろう。あの頃の私は、どうかしていた。でもそれを言うんなら、あの頃の日本もどうかしていた。
「インド映画ブーム」だった頃の日本。正確には覚えていないけど、「景気のよさそうな娯楽インド映画で、今の不況をぶっとばせ!」みたいなノリじゃなかったっけ?
でもインド映画って何本も見るもんじゃないというのを、何本も見てから気づいた私たち。スパイスてんこ盛りのインド映画は、日本人の胃袋では消化しきれんのよ。悠久の時を生きていない日本人には、ちょっと手に負えないテンポなのよ。
でも、日本公開インド映画から「ベスト1」を選ぶとしたら、迷いなくこれですな。
女優の豪華さといい、踊りの多さ(これが大事!)ときらびやかさといい、かなりのレベル。これが最初にドーンと公開されたものだから、続くインド映画がどれも物足りなかったほど。いや、ホントに。
南インドの地主の息子が、一目ぼれした旅芸人の女優。ところが、その坊ちゃんの使用人ムトゥも、彼女に恋をしてしまう。
大変だあ。
やがて主従関係と三角関係が絡み合い、「ご主人様をとるか、好きな女をとるか」で苦悩するムトゥ…ってことにはならないのが、インド映画。ご主人様に黒い陰謀がしのびより、ラブロマンスは勧善懲悪のアクション映画へ。そうして、涙涙の大団円へとなだれこむのであった。
タオルをヌンチャクのように操って悪漢を倒し、自信と慈悲に満ちた笑みを浮かべながら、階段を駆け降りる主役のラジニカーントは、本国のファンクラブ会則によれば、「血を売ってでも、彼の出演作を見なくてならない」ほどのスーパースターだ。
でも私らから見ると、吉幾三似のオッサン。
この幾三が、若い娘相手にはじらってモジモジしたり、ケンカしてすねたり、たまに観客の方を見て流し目をしたりするのである。
これって、サービスショットなんだろうか。たまらんなあ。
そこでこのラジニの濃さを中和してくれるのが、相手役の女優ミーナ。文字通り「目の覚めるような」美女である彼女のムチムチな健康美に、女の私もクラクラ。どーんとした胸とお尻がおいしそう。いいじゃないか。三段腹でも!と何だか気分も大きくなる。
インド映画お決まりの唐突に始まるダンスシーンは、当時「インドの小室哲也」と称されたラフマーンの音楽に乗って、衣装がどんどん変わるわ、振り付けが笑えるわで、めくるめく夢の世界。口あんぐりしてこの娯楽を堪能しよう。
ところで、ラブシーンはご法度のインド映画だが、ラジニがミーナを膝に乗せ、その女体を楽器に見立てて音楽を奏でるシーンが、振り付けの一環とはいえ、すんごくやらしかったんですけど。
他にも、川に落ちたミーナのむっちりボディに、濡れた服がぴたーっと張りついたりして、大らかなエロっつーんですか?お色気シーン禁止に対する苦肉の策が返ってやらしいので、未成年者には目の毒だ。
てなわけで、インド的あっかるい喜怒哀楽を堪能するんなら、コレをオススメします。長いけど休憩が入るから、トイレタイムはご心配なく。