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ここから逃げ出したい

ロスト・イン・トランスレーション(2003/アメリカ・日本)
監督:ソフィア・コッポラ 
出演:ビル・マーレイ スカーレット・ヨハンソン

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スカーレット・ヨハンソンのお尻って、案外平坦で日本人ぽいんだなあ。和み尻とでもいいましょうか。ジェニファー・ロペスの噛みつきそうなラテン尻に比べると、一歩下がってあなたを待つような謙虚尻。

しょっぱなからいきなり画面いっぱいに広がるこの尻が、透け気味のピンクのパンツに包まれて、ゆっくり息をしている。それはまるで、ベッドの上に捨てられた生き物のよう。

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ガイジン・イン・トーキョー。

そういえば私も東京のホテルに1週間滞在した時、こんな気分になったことがある。

街の人工的な喧騒。ホテルの煮詰まった空気。人混みでごったがえした夜の交差点を歩いていると、時々自分がどこにいるのかわからなくなる。

自分が異邦人であることを、ふっと気づかされる瞬間。気づいてしまう瞬間。周りがにぎやかであればあるほど、不安定な気持ちになるのだけれど、その切なさが嫌いじゃなかった。

あれは、ああいうのは、東京でなければ味わえない。たぶん。

この2人の関係を淡い恋だの何だのと言ってしまうと、何だかすごくチープな感じになってしまうのだけど、じゃあ、何?同志的友情?

いや、その前に、どうして彼らの関係を言葉にしなくてはならないのだろう?

異国の地で寂しげな男女が出会い、数日で別れていく。形になる前の混沌とした感情の中で、彼らはお互いの気持ちを口にすることなく、肌を触れ合うこともなく、しかしお互いの心奥深くに何かを残して、自分の場所に戻っていく。

そのあたり、これはとても日本的な映画ではないかと思うのだ。「ローマの休日」みたいに日本人が好むタイプの話。

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でもさ。男はいいでしょうよ。最後はあれで、ある程度スッキリしたでしょうよ。

でも女の方は、そう簡単にはいかないんじゃないの?男は元に戻れるかもしれないけど、女は変わってしまうものなのよ。どうしてくれんのさ。ねえ?

なんて思いつつ、やっぱこれがイケイケ尻の女なら、こんなことにはならないと思う。きっとヨハンソンのあの思慮深い尻がこの結末を導いたのだな、と一人で納得している私。若い新妻の初々しさとあやうさが、あの尻に象徴されている。

尻の話ばっかりしすぎでしょうか。

ところで、ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンが親子ほど年が離れているのに、友だち以上恋人未満の好意を寄せ合っても全く違和感がないところが、さすがだ。要するに精神年齢がほぼ同じだって話だけど、なんだか似合いのカップルで、きっと寂しさの種類が同じだったのね。

でもよく考えてみたら、ぜいたくな話だよ。束の間の思い出になってしまったとはいえ、そんな人とめぐりあえて。

ちょっとうらやましい。

でもやっぱり、女の方はそう簡単にはいかんのよと、何かを耳元でささやいて去っていった男に私は言いたい。

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