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レッスンの不条理 (講師の個人的なイメージや勘違い)

講師のイメージを言葉にして教えるのが普通のレッスン

発声指導は基本的に講師が自分の持っているイメージを口に出してレッスン生に伝えようとする場合がほとんどなのは明らかだと思います。
そういう自分も全くやっていない訳ではないし、見えない器官を使う演奏である以上はイメージ誘導が多くなるのは仕方のない事と思います。
特に歌唱のディレクションとなると芸術的な側面が増えるので、イメージ伝達こそが中心で良いのかもしれません。

しかし、発声指導という、楽器としての体や喉の使い方のレクチャー関しては、講師の個人的に持っているイメージや思い込みをそのまま伝えても、レッスン生が同じように声を出せるとは限りません。又、個人的に持っている発声の認識が正しいとは限らないので、イメージした感覚を生徒にごり押しするレッスンはマイナスになる場合すらあります

歌えるから理解しているとは限らない

自分が上手に歌えるからといって、その状態をちゃんと把握しているとは限らないという事。もちろん理解している場合は、自在に歌い自在に教えることもできるでしょう。しかし、天然で歌が上手かった講師などは、特に自分の漠然としたイメージだけで指導しても、上達したい人の力にはなれないでしょう。自分の歌唱感覚を色々な方法で検証し色々な体の部位の動きに敏感になることができれば、教えることも上手くなることと思います。

例えば、「頭頂に響くようイメージを持つと高い声が出る」

例えば、「頭頂に響くようイメージを持つと高い声が出る」と言うような一般的な教え方。

悪くはないと思いますが、何故そうなるのかと言う事を知らずに、高音は頭に響かせれば出るから、と単純な理由付けしをして、共鳴のイメージが万能なように偏った捉え方や、勘違いしてしまっている場合もかなり多いのです。

しかし実際は頭頂に響くイメージを持たないと高音域が必ずしも歌えない訳ではないし、他の場所に響くイメージを持って歌っている人が間違っている訳でもない。違うイメージでも出ているなら、そういう指導がどの程度有効なのか検証すべきでしょう。
また、講師の言いつけを守り、頭頂に響くイメージを持って歌っているのに、同じように高音域が歌えるようにはならない人も多いことでしょう。

それに気がついた時に、じゃ「頭頂に響くイメージを持て」って何?
という疑問が湧いてきます。ある個人の体験や思い込みになります。流行の言葉で言うとエビデンスが無いと言うことでしょう。

では、頭頂に響くイメージを持つと、どうして高音が出やすいと感じる場合があるのか、また逆にそうならない人がいるのは何故か
それらの理由と、イメージによって発声器官はどのように動くのか。
という事をしっかりと理解していれば、高音のイメージ誘導も、もっと的確に効率的に使えるようになるはずだし、受講生を迷わせたり、間違った練習から開放してあげる事ができるのです。

これが少しでも理解していけないと、もう古いボイストレーニングですと言わざるを得ないし、どれだけ熱心に教えても、残念ですが上達に導けるかどうかは、受講生との相性や運みたいなものになるでしょう。

解剖学的な知識までは無くても良いかもしれませんが、
どのようイメージすると、体や喉がどのように動きやすいのか
どのようなバランスによって声帯の性質に影響を与えるのか
また、通常のイメージで動かない場合は、体や喉がどのようにイレギュラーなのか
といった基本的なパターンくらいは把握していないと、講師は自分の言葉が生徒にどう影響するかを、予測したり把握する事ができないでしょう。
当然、レッスン生の上達も運任せになってしまいます。

次のレベルへ、ボイストレーナーの進化とは

上記は、例えばという事で、高音の共鳴のイメージについて書きましたが、他の色々な発声指導についても、同じような事が沢山あります

できれば解剖学的に発声の構造と動きを知る事で、自分の発声イメージが個人的な思い込みで、実際の動きとギャップがある事に気がついていけば、レッスン生にかける言葉は確実に変わっていきます
たとえ同じ言葉を使う場合があったとしても、補足説明などを入れるなどして、間違った方向にいかないように、フォローを入れつつ、意図する動きに導けるようになります。

イメージ的な言葉で、生徒の実際の動きがどのように誘導できたのか筋連鎖のレベルで理解する事こそが、ボイストレーニング指導として、次世代のレベルに進化した、という事になると思います。
運まかせのレッスンはもう必要なくなり、確実に上達に導く事ができるレッスンになっていきます。

そしてまた、理解の深さと感知の精度を日々深めていく事で、あらゆるレッスン生の筋反射や声の使い方の傾向をも理解できるようにもなり、身体全体と喉の動きの連鎖も見えてきて、喉や体のイレギュラーなレッスン生にも有効に対応できるようになすのです。



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