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続 声帯のコントロールは筋連鎖を使う (声帯ストレッチ)

今回は「声帯のコントロールは筋連鎖を使う」の続編
過去記事の「声帯のコントロールは筋連鎖を使う」を読んでいない方はそちらに目を通してから読んでいただけたら、内容がわかりやすいのではないかと思います。

声帯ストレッチ


声帯ストレッチとは僕が20年前くらいに考案した、ナチュラルヴォイスストレッチ(のけぞり体操)のことで、発声に必要な身体の部位を全て一緒に伸ばすことで、声帯を連鎖的引き延ばしフラットにすることができるというもの。
この画のようにやるのですが、表情筋、口の動き、口内の動き、舌、首、肩、胸(横隔膜)腹直筋などを一度に伸ばすことが重要で、頭の中で高い音のイメージを持ちながら行うことで、声帯が最大限引き延ばされます。
声を出さずに行うので、声帯にはなんの無理もなくストレッチされます。
(喉に故障や炎症がある場合は別です。あくまで通常時に推奨)
声帯を最大限伸ばすにはこの中のどこかが欠けていてもできません。
それだけ多くの部位との連鎖が発声というものに影響していることがわかります。

発声学の 解剖学的+建築構造学的な捉え方


発声を解剖学的に捉えている先生方も近年では珍しくはなく、発声とか喉の構造とかでググればいろいろなサイトから喉の解剖図やらその説明が出てきます。
過去記事でも書きましたが、輪状甲状筋の収縮が高い声を出す動きをするというのは、医学的にはずーっと前から解っていることであり、そんなことがわかったからと言って、生徒が高い声が出せるようになるわけでもなくそれを知った講師が生徒を高い声を出せる状態に誘導できるわけでもないのです。
ただ講師側が理論武装して、あたかも自分は発声の秘密を知っているすごい先生であるように振る舞うための飾りにしか過ぎません。
他にもいろいろな喉頭筋の動きや役割を解説している医学書もたくさんあります。しかしそれら全てが、直接は見ることができない、触れることもできない、動きを細かく感じられない部位であることがほとんどです。
単なる知識でしかなく、発声指導そのものには役にも立ちません
要するに表面上の知識だけでは、何の役にも立たない。
今時は誰でもググればすぐ分かることであり、レッスンの価値にはならないいのです。

無意味な知識を有効にするには


そこでそれらの知識を有効にしてくれるのが、筋連鎖や筋反射的という観察点になります。
要するに各筋肉や各部位の連鎖反応や反射反応を知ることによって、見えている体の動きや見えている表面的な部位の動きも、喉(内喉頭筋)にしっかり連鎖をしていることがわかれば、どうすれば喉をコントロールできるのかが見えてくる訳です。
言い換えると、筋肉や器官の動きの連鎖を理解していくことで、声帯のコントロールをする事が可能になるという事です。
見えない声帯という部位も、見て感じることのできる分かりやすい体の部位の動きによって、リモートコントロールできるようになるわけです。
そして一旦リモートコントロールするようになれば、その操作に伴って得られる喉のかすかな発声感覚の違いにも気がつけるようになるので、今まで見えてこなかった喉の動きを繊細に理解することができるようになります。
もちろんそれは、歌唱指導をする時には、かなり大きな術となります。
声を聞けば声帯の動きもわかるようになるし、動きを見ればどのようにアドバイスすれば良いのかもわかるようになります。
それによって、たった一回1時間のレッスンでも、確実に目に見えて歌唱レベルを上げることが可能になります。

今まで無駄だった他解剖学の知識が、筋連鎖による声の変化を理解できれば、一気に有効な知識になってくれるのです。

では具体的にどう理解できるのか?


すでにここまで読んで、「試せばわかるかも」と思われた方もいるかもしれません。しかしここからはあまり簡単ではありません。
文字にするもの難しいですが、理解して感覚まで得るのはもっと難しかもしれません。しかし確実に言えるのは、「勘とか雰囲気とかイメージ的なこととかではなく、喉の使い方の説明書と言っていいくらい確実に発声を理解できる方法がある」ということです。
そこには、人の体を建築学的に当てはめた解剖学的な見方が必要になってきます。

建築学的な捉え方とは

基本的には声帯を中心に身体の位置関係を地面に立つところから捉えるということです。


例えば、観覧車を建築するとします。
回る主軸の角度が精密に水平でなければ、かなり不安定な動きになることは分かりますよね。ですから回転の軸を支える足(土台)は重要で、しっかりした計算によって設計されるのは当然です。
キャビン(人が乗る部分)の内部をいくら綺麗に装飾しても、観覧車は動きません。
回転の主軸が5度でも傾いてしまえば、キャビンはその方向に滑ってずれていきます。15度も傾けば垂れ下がるような状態になるため、観覧車全体の重さもかなり偏ることになり、キャビンとリムの接合部分や、軸にもかなり負担がかってきます。キャビンがリムにぶつかり破損する可能性も出てきます。うまく回らなくなりすぐに故障するでしょう。
しかし、水平を保てていれば設計通りバランス良く回ってくれます。

声帯に話を戻すと、声帯と筋連鎖する内喉頭筋、そして内喉頭筋群を連鎖で支えるその周りの筋群や頚椎(首の骨)や顎など、そういったものの位置や動かし方次第で、声帯という膜の位置や性能が変わってきます。


位置や性能を具体的に説明すると
1、声帯の張りを均等に作るには、喉頭筋が正常で繊細に機能できる状態で無いとならない。
2、2枚の声帯のエッジ(近づき振動する部分)の角度や、位置(喉頭内の上下の位置)がどのあたりで振動するのかによって声質や声帯の可動範囲が変わる。
3、気道をなるべく真っ直ぐにできれば、効率良い響きが作れる(喉頭蓋がうまく開く角度であるかも含む) 
4、などなど…

身体は建築物ではなく柔軟に常に動くものだから、建築学的(位置関係や構造や角度)な考え方は関係ないと思い込んでいる人がほとんどです。
しかし、スポーツの世界ではどうでしょうか?
野球のバットやゴルフクラブの持ち方一つにもこだわります。
繊細さが必要な動きほど、関節の角度や柔らかさにこだわります。
声にも当然同じことが言えるのです。

建築学的で人間工学な、というのは、大雑把に表現すると、
声帯の振動の関わる部位がどのような状態であるかによって、声帯の機能が左右されるということです。特に胸椎(胸の後ろの背骨)と頚椎(首の骨)の位置関係は、上記の観覧車における主軸とそれを支える足のような役割があり、ズレるとキャビンが傾いて負担がかかるように、発声の負担が出てくることになります。

このような考え方は、横隔膜を効率よく動かすためにも利用できます。
さらに横隔膜の動きは声帯の動きにかなり関連付いてきます。
この辺りはまたの機会に書ければと思っています。

ここから先は、なかなか文章にするのが大変な作業なので、具体的にお知りになりたい方は是非当スタジオのレッスンをご受講いただければと思います。
さらに研究されたい場合は、長期間のコースになりますが、ボイストレーナー育成講座を予定していますので、是非ご参加ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
プロシンガーの育成とは別に、歌を大切にされている人達に、少しでも役に立てれば嬉しく思います。
今後ともよろしくお願い致します。

原宿ナチュラルヴォイス研究所 代表 谷本真規
https://www.natural-voice.com/

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