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「分けとく山」日本のおもてなしの心、ここにあり。

何年前のことだったか思い出せないけれど、ある時テレビで偶然見た日本料理人のその方に釘付けになりました。いつか会ってみたい、この人の料理を食べてみたいと思い、手帳の端にメモをしたのです。

それが「分けとく山」というお店の野崎洋光料理長でした。

それから私、野崎さんの本をたくさん買いました。レシピ本も、エッセイ的な本も、日本料理の指南書もうちの本棚に並んでいます。

野崎さんのレシピで作るお料理は、食卓に何度も登場しました。どれもとてもシンプル。材料も工程も、家庭で作ってみようと思える範囲に留めているのにもかかわらず、日本料理の極意というものを感じられるものばかりなのです。

そして今回念願が叶い、分けとく山の暖簾をくぐることができました。

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若い料理人のお弟子さんが、丁寧に一品一品出してくださるお料理の美しさと言ったら。それは、食べる人を驚かせようと図られた、ありがちな奇をてらったものとは明らかに違っています。不要なものを削ぎ落とし、足るを知る日本的美意識のあり方そのものでした。

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有名になれば、人は期待をして来るのだから、その期待を上回ることをしなければという考えに至るものかと思っていました。でも分けとく山というお店では、ただただ真摯に、日本のおもてなしとお料理の真髄を表現しようとしているに過ぎないのだと感じるのです。

お料理を運んでくださるお弟子さんに、「ここは料理人の方がお料理を運んでくださるのですね?ほら普通はよく、客席係の方が別にいらっしゃるじゃないですか。」と言うと、

「独立して自分のお店を持ったときのことを考えて修行をさせていただけるので、一通り全て経験するんです。」と。

それを聞いて、野崎さんという方のお料理やお店の経営に向かう姿勢を垣間見たような気がしました。

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王道の日本料理の中に、分けとく山のオリジナリティも随所に表現されています。美味しいという言葉だけで終わらせたくないけれど、どれも全て、本当に美味しい。

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接客、お料理、店の内外観、どこをとっても素晴らしい。

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美味しいお料理のお店は色々経験しているけれど、様々な点において、私の中の最高の日本料理店となりました。

冷たい雨が降りしきる中、料理長もお弟子さんも最後はお店の外に出て待ち、お見送りをしてくださったのです。

テレビや本を通して知っていた野崎さんを間近で見たとき、その優しく強いオーラに感動し、ご馳走様でしたと言うのが精一杯でした。もっと何か、伝えれば良かったのに。

その人の在り方次第のお料理で、人を心から感動させ癒すことができる。素晴らしいオーケストラの演奏を聴いたり、美しい絵画を鑑賞したり、引き込まれる小説を読んだりするように。お腹を満たし栄養となる、ただそれだけでは終わることはないのです。

正に、ホンモノ!日本を誇る名店、ここにあり。

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