音の響かせ方
先日、娘のピアノの発表会がありました。
毎年ソロの演奏と、バイオリンとチェロとのアンサンブルを企画してくださるのですが、そのアンサンブルがとてもよくて楽しみなんです。
プロの演奏と合わせていただけるなんてとっても贅沢で、子どもたちにとって豊かな経験になっていると思います。
本番の前に、それぞれ15分程度のリハーサルの時間があります。その順番待ちで、うちの娘の前の子のアンサンブルを聞いていました。
ピアノの音は弱く小さめで、なんとなく恐る恐る、そろりそろり弾いている気配を感じました。美しい音色だけど、心許ない感じもする。曲調がゆったりと優しい雰囲気だったので、その弾き方も悪くなかったんだけど。
舞台の上でプロの演奏家と合わせるんだもの、そりゃ緊張するし、さぐりさぐりだよね。と思っていると、チェロを演奏する先生がこんな声かけをされました。
「ただ弱くて小さい音を出すのは、優しい音や美しい音とは違うんだよね。自信がなさそうに聞こえてしまう。弱くても小さくても、確信を持って弾くっていうのかな。すると、響き方がかわる。弱い音も遠くまで響くんだよ。」
その言葉にはっとして、なんだかとても腑に落ちたのです。
大きく強い音を奏でることが得意な人もいれば、小さく弱い音を奏でることが得意な人もいる。
大きく強い音は、圧倒的なパワーで刺激し人を惹きつける。それははっきりと遠くまで、そして多くの人の耳に届くかもしれない。
小さく弱い音はどうだろう。小さく弱い音が頼りない音であるとは限らない。小さく弱い音も確信をもって弾くことで響き方が変わる。
確信をもって弾くって、いい言葉だなあ。
この舞台の上で、私たちはそれぞれの演奏をするしかない。だとしたら、どんな風に奏でたい?
目を閉じて、耳をすますと、舞台の上で音を奏でる私がいた。小さくても弱くても、私の中の確かな音色がホールの中に響き渡る。そんな理想を描いていると、あっという間に娘の番。
今年もマイペースに練習をする娘の、素敵な発表会が無事終わりました。