バトル風雑二次創作(?)小説(短編小説)
「何かすみません、付き合ってもらっちゃって…」
一人の女子高生が、学生カバンを地面に置き、大きく背伸びをする。
「ないちゃから声かけてもらったし、全然大丈夫だよ。」
それに答えるように、綺麗な黒髪をなびかせた一人の女性が同じように伸びをする。
「でも久しぶりにその姿見たかも…」
「そうですね…まぁ一番合ってるので、体動かすのにちょうどいいかなって。」
つま先を地面に数回叩きつけ、奥まで指先が入ったのを確認する。
「では、いいですか?始めても…」
長いスカートを確かめるように一回転し、動きを見る。
「うん、いつでもどうぞ。」
その一言を合図に、女子高生、夏水ナシが手を前にかざす。
「太陽(Sun)!」
夏水ナシの手から小さな、といってもバスケットボールくらいの大きさの光の弾が現れたかと思った瞬間、それはものすごい勢いで対面する女性、まんだこむぎへと放たれる。
「ふふ、太陽で様子見なんて、甘いんじゃない?」
まんだこむぎは地面にゆっくり手を添えると、呪文を唱えた。
「成長せよ、小麦(Grow up, wheat)」
まんだこむぎの手の隙間から、大量の小麦が、まるでその光の弾を阻むように急成長する。
「太陽の恵みは、植物の成長にいいからね。」
余裕の笑みを浮かべるまんだこむぎの後ろに、防がれるのを見越したように夏水ナシはいた。
「それは百も承知の上ですよ、まんださん…無(nothing)…」
夏水ナシはまんだこむぎをその手で捉えようと手を伸ばした。
しかし、それは空を掴むことになる。
「ずるいっ!」
「そっちこそ。」
透き通る体(perfectly clear body)を発動したまんだこむぎは、何者にも捉えることができない。
裏を返せば、それは空気すらも通り抜けてしまうことを、両者は理解している。
つまり、一時しのぎに過ぎない。
追い打ちをかけるために踏み込んだ夏水ナシは、足元の違和感に気付くのが遅れた。
「っ、小麦が絡んで…」
その隙にまんだこむぎは距離をとり、地面にそっと触れる。
「膨張せよ、小麦(Expand, wheat)」
その呪文に呼応するように、夏水ナシの足元からはパン生地のようなものが大量に生まれ、その大きさを増していく。
一瞬にして膨張したパン生地に、夏水ナシの姿は隠されてしまった。
「これで終わり、じゃないでしょ、ないちゃ。」
パン生地のど真ん中にぽっかりと穴が開く。
手を天にかざした夏水ナシは、自分に纏わりつく小麦にも手を触れ、存在を消す。
「質量なら、負けませんよ。水(water)」
夏水ナシが地面に手をつくと、そこから逆向きに滝のように水があふれ出す。
「太陽(Sun)」
同時に、その滝の真ん中に最初と同じような光の弾が打ちあがる。
それに水が一斉に反応したのか、辺り一帯が水蒸気で埋め尽くされ、視界を失う。
「目くらましとか、裏取りとか、ないちゃは好きだねぇ…凝固せよ、小麦(Coagulate, wheat)」
まんだこむぎは地面に手を触れると、自分を囲うように硬い、クッキーのような壁を張り巡らせた。
その壁自体が乾燥しているからだろうか、辺りの水蒸気が少し薄らいだ。
「あれ?ないちゃは?」
辺りを見渡すまんだこむぎの上、夏水ナシはそこにいた。
「とどめ!太陽(Sun)!」
夏水ナシはありったけを手のひらに込めた。
手のひらの先には一軒家がゆうに収まるであろうサイズの光の弾が出来上がる。
そしてそれは、夏水ナシごと、自由落下に身を任せ、まんだこむぎへと襲い掛かる。
「やるね、ないちゃ!凝固せよ、小麦(Coagulate, wheat)!」
まんだこむぎは周りを囲っていた壁を積み重ね、自分の上に何層もの防御壁を組み上げた。
「いっけー!」
太陽と壁がぶつかった瞬間、辺り一帯を眩しい光が埋め尽くした。
「っていう感じの話を思いついたんですけど、どうですか?」
「Weizen(続きも待ってるね)」