旅路 第一話「荒れ果てた大地」(小説)
※このお話は以前のVRCのイベントで撮影した写真をイメージして作成した作品になります。
「どうですか?ニイさん。」
可愛らしい見た目をした少女が、ロボットに話しかける。
「少しお待ちを。…、許容値、人間でも立ち入り可能です。」
ロボットは辺りを見渡すと、そう少女に告げた。
「よかった。サン、ほら、おいで。」
少女は建物の陰に隠れた何かを呼び寄せる。
少女よりもさらに小さい女の子が、物陰からゆっくりと二人に近づいた。
「イチ姉、ニイ兄…疲れた…」
「随分歩いたからね…ニイさん、乗せてあげられる?」
「可能だ。ほら、肩に乗るといい。」
イチと呼ばれた少女が、サンと呼ばれた女の子を抱え、ニイと呼ばれたロボットの肩に座らせる。
「ねぇ、イチ姉、ニイ兄、どこ行くの?」
「そうね…もっと、人間が住みやすい、綺麗なところかな。」
「私の仲間の反応が、もう少し行ったところに複数ある。
そこまで行けば、私達皆が住める場所があるかもしれない。」
「あるのかな、ほんとに…」
「あるよ、きっと。心配しないで。」
「では、進むとしよう。」
ニイがサンを肩に乗せると、そのまま荒れ果てた大地を歩き始めた。
戦争により、辺り一帯が戦場となったのが約一か月前。
大量のロボット兵器や、有害な破壊兵器によって、この大地は一か月で大きく変わってしまった。
汚染された大地で人間が生き残ることは厳しく、大半が死んでしまった。
サンは、この辺りで生き残った、唯一の人間だ。
「そういえば、イチ姉とニイ兄、ご飯は?」
サンが懐からいつの間にかパンを出し、少しずつかじっている。
普段から食事をしない二人のことを不思議な目でサンが見つめる。
「私は壊れたロボットから、オイルなどをもらいながら動いている。
それがサンでいうところのご飯だ。」
「ふーん、イチ姉は?」
「私は、食べなくても生きていけるの。そういう体にしてしまったから。」
「よくわかんない…」
「サンがもう少し大人になったら、きちんと教えてあげる。」
イチは少し悲しそうに笑った。
その意味を、ニイは知っているが、今のサンに伝える術は、ニイも持ち合わせていなかった。
しばらく歩いていると、雨が降り始めた。
人体にはあまり良くない雨だ。
「あそこで雨宿りしましょ。サンの身体に響くから。」
「あぁ、分かった。」
イチが指さした先、一軒の崩壊した家が見える。
辛うじて、屋根が一部分残っているため、雨はしのげそうなほどのスペースはある。
「二人とも、入らないの?」
「うん、私たちは大丈夫だから。」
「少し、辺りを探索してくる。サンの食べられるものがあるかもしれない。」
「お願い。」
ニイは雨の中を歩きだす。
サンは屋根の下で、少し寒そうに腕をさする。
それに応じて撫でようとした手を、イチは引き、雨に打たれ続けた。