666チャンネル(短編小説)
ある夜、目が覚めると、そこは実家だった。
それも自分が幼い、といっても、中学生くらいのときの記憶だ。
当時、一人部屋のようなものはあったが、完全な一人部屋というわけではなく、少し複雑な構造だったのを今でも思い出す。
造りの関係からか、人の存在はどこかしらにあったし、ご飯なんかのときは普通にノックなしで部屋を開けられるものだから、プライベートな空間というには、少し違うような感覚だった。
ある夜、いつものように電気を消し、布団に寝転んでいると、すっと、扉が開いた。
ロックなどもないため、開くことに違和感はなかったが、開き方がおかしい。
古い家だから、扉が少しガタつき、少々音が鳴るのが常。
それなのに、一切の音がせずに扉が開いた。
薄目で確認するが、人が入ってくる様子はない。
見てはいけない何かだと感じ、目を閉じ、寝返りを打つ振りをして、布団にくるまった。
しばらくして、テレビがついた音がした。
時間は確認していなかったが、当然夜中だということはわかる。
何も映るはずがない。
恐る恐る、また寝返りを打つ振りをしながら薄目でテレビを確認すると、画面は案の定、砂嵐だった。
しかし、おかしい。
その時代に砂嵐は存在しない。
何故なら地デジ対応が終わった後の時代だからだ。
おかしい、と感じると同時に、右上のチャンネル表記が気になった。
昔のテレビでは、チャンネルを切り替えた時、右上にどのチャンネルか表示されていたからだ。
数字をみれば、「666」となっていた。
一説によれば、エンジェルナンバーと呼ばれ、一説によれば、悪魔の数字とも言われている数字だ。
いずれにせよ、扉を開けた何かが入ってきているのであれば、それは人ではない何かに違いないと思った。
砂嵐は表示こそされど、特有の音はなく、明かりだけがテレビから漏れているだけだった。
ふと、扉の方に何かが通ったような感じがした後、テレビが音もなく消え、そしてまた音もなく、扉が閉まった。
気付けば目をつむり、寝入っており、目を覚ましたころには、現実の自分に意識が戻っていた。