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僕は息を吐く 君も息を吐く お互いの、少し暖かくなった息が混ざり合う 僕は息を吸う 君も息を吸う 少し暖かな息が、体の芯をくすぐるような気がした 僕は話す 君は聞く 僕の言葉が宙に舞い、君の耳へ、届いていく気がする 君が話す 僕は聞く 君の言葉一つ一つが、大切なものに変わりながら、僕の耳へ、僕の心へ蓄積される 僕は手を差し出す 君は答えるように握り返す 手から伝わった体温は、ゆっくりと、氷を解かすように、僕の心を溶かしていく 僕は手を広げる 君
息をするのが苦しい 喉が、肺が、全部小さく、細くなっている気がする 大きく息を吸い込んでみても、全く体の中には入っていかない 逆に、呼吸を止めているときの方が、少しだけ、楽になれる気がする 空気に、溺れているみたいだ きっと、息継ぎが上手くできないんだ ここは地上で、立って、動けるはずなのに、水の中みたいに、身体も言うことを聞かない 先に潜っていったダイバーは、山の数ほどいる きっと、上手い息継ぎの方法があったり、酸素ボンベを持っていたり、美味しい空気が溜まっ
眠い 目を瞑れば、幸せな空間が目の前に広がる 仲が良かった友達、自分の想い人、優しい家族 一目で夢と分かる景色だ このまま夢の中へ落ちていけば、どんなに幸せだろうか でも、それは出来ない いや、してはいけない 目をあけて、伸びをする 瞼が重い 夢の中へ隙あらば落ちようとする意識 夢は夢だ 溺れたら、戻ってこれない いや、戻ってこれないのなら、それはそれでよかった 中途半端に戻ってくるから、ダメなんだ 夢は覚める 幸せも、いつかは終わる 幸せが続
人間は難しい 心があるから 心は複雑だ 時には、自分でもよくわからないほど、複雑な世界になる 幸も不幸も、全て混ざっていく 白と黒がぶちまけた絵の具のように、ぐちゃぐちゃに混ざっていく 何が正解か、何が不正解か、そんなの、分かりっこないくらいに これを制御できるのが大人で、これを制御できないのが子供なのだろうか そうなると、僕は昔の方が大人だった気がする 今は子供だ 心に振り回されている 何故か 心同士が干渉することが、子供の頃よりはるかに多いからだ