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初めての子猫とおじさん 闘

「銀がね、」

「うん?」

「噛むのよ、子供達を。こうガブ!って」そう言って嫁が自分の手で喉に噛むような仕草をして見せた。

「噛むって、誰が?  銀が?」            突然の告白に、聞き流して相槌を打っていたオイラは瞬時に理解しようとしていた。

「そう!子供達だけじゃなく、     ほら あたしも!」          そう言って、セーターの襟元を広げて首の辺りを見せてくる。

赤い点々が。 あら、痛そう。

銀が我が家に来て、早いもので1年が経つ相変わらず姉妹とは仲が良く、銀のおかげで嫌いなお留守番も出来るようになった。

しかし、当人はキチンとお留守番が出来ないらしく、日中の家の中は全部が彼の遊び場になっていた。  なにせエネルギーが有り余っているらしい。

甘えん坊にも磨きがかかってきた。   いや、磨き過ぎてワガママになっていた。

抱っこしろと上に乗り、抱き方が気に入らないと首を噛む。最初はゴロゴロ言ってても、その内鳴き方が変わって威嚇の様な声になるんだそうだ。

「子供達も最近怖がって、銀に近づがないんだよね。」

しばらく居ない間にそんな事になっていようとは...   

叱ってはいるものの、まったく聞く耳を持たないらしい。 立派な耳ついてるのに..

言われてみれば。いや、言われたからか ソファでくつろぐ彼は、どこか横柄に見える。 知らんけど。

あの無垢で、皆んなに愛を振りまいていた銀は消え、             『これが俺のスタイルなので!』 的な。とがったアイツがそこにいた。     そう言えば、君の寝ている場所オイラの 特等席だった!  

多分、彼の中では順位があって     自分が一番 で次に嫁、娘達、オイラ  なんだと思う。

たしかに、普段家に居ないからオイラは仕方ないにしても、嫁と娘達よりもエライと思っているのかぁ...?

犬なんかでは聞いた事ある話しだけど、 猫もそうなの?  あるあるなの?

長女が2階から降りて来て、テレビを見始めると、のっそり動き出して当然の様に娘のひざ上に乗る。   しばらくすると、『痛ーい!!』と娘の声 振り向くと首にしっかりと大きく喰らい付いている銀。

本当にビックリするくらいしっかりと噛み付いていらっしゃる。ピクリともしないし

怖くて退散した娘の後に、嫁がやって来た。 また当たり前のように座る銀。  今度はじっくり観察してみる。

ゴロゴロ言いながら嫁の顔を見上げている。しっぽがウネウネと動く。 ん?  これって猫が獲物とか捕まえる時にやる仕草じゃないか?            次の瞬間、案の定 嫁の首にガブリ!!

「痛った!! 銀ちゃんダメでしょ!  あぷーっ!」


嫁よ、それで叱っているつもりなのか.... あぷー て何よ...

それから数週間 噛み癖は酷くなり、  いよいよ どうすればいいかわからなくなっていた。

なにせ猫を飼うのは初めて。時間が経てば治るかと思ったが、気配はなし。


ある日の夜、家族団欒の時 4歳の娘に噛みついた銀              それを見て堪忍袋が切れたオイラ。



『何しとんじゃ!、ゴラァァッ!」

びくっ!とする銀、

真っ向から睨みをきかせ、逃がさんぞ!と気迫で伝える。すぐさま、人差し指を口に咥えさせ、嫌がる銀にオイラの指を噛むよう強要する。  

「そんなに噛みたいなら!好きなだけ噛めっ!!」 

嫌がる銀に何度も指を噛ませ

「ほら!噛め! ほら!ほら!」

何分くらい そうしていたのか、オイラの指は血だらけになっていた。  そりゃ、猫の口に指を入れて噛ませるんだから切れますわな。 なんであんな事したのか今でも解らん...    (´・ω・`)


しばらくすると、2階から戻ってきた銀 オイラの方をチラチラ見てくるけど、いつもと変わらない。ちょっと距離を置いている。

何事も無かったように、あくびして寝ようとしてる。              猫の感性凄いな!           メンタルめっちゃ強ない?       これが人間同士なら、指噛め!って強要して来た人の近くで寝れる?


あれからしばらくして、嫁から電話がかかってきた。              あの夜以来、銀が 一切噛まなくなったそうだ。                なるほど、あれで正解だったのか???

でもたしかに、銀とサシで対峙したあの時なんとなく、感情の疎通が出来た様な気がするんだよなぁ...    知らんけど。


あれは...何というか? 兄弟ゲンカのようなものだったのではないだろうか? 

不思議と以前より銀に親しみを感じるようになったし、彼も理解しようとしているのが伝わってきたのだから。

この後の彼は驚くほどしっかりした猫格者となり、その後12年間の間 我が家に訪れる5匹の子猫達の良き先輩兄猫へと成長していくのである。  



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