初めての恐怖体験 ひとつめ
人は与えられたモノが、自分の思い絵描いたものと違った時どうするのだろう?
落胆する?それとも受け入れる? 怒り、不満を思うがままに撒き散らす人もいるのだろうか?
オイラの場合は、現実逃避 である。
オイラは、どれも選ばない。 というか、選べない のかな?
世間知らずだってことくらい、自覚はあった。かっこいい大人に憧れて、随分と背伸びをして見せたりもしていた。
だから、一軒家なんか探してみて、いい感じな生活スタイルを友人に見せびらかしてやろうと 下心も正直 あった。
自由気ままに 俺色の生活スタイルを確立するぞ! と息巻いて探し当てた一軒家。
引っ越し初日、僕の目の前にあるのは 説明出来ない程の 大量の呪符。
茶の間に隣接した磨りガラスの引戸を開けると、部屋の至る所に大量の呪符が貼ってあった。それだけではない、畳は大きく腐り、丸い穴が開いていて、床下がはっきりと見えている。
オイラでも解る! これ、きっと怖いヤツ!!
心の声はそう告げているが、当の本人はまだ荷物も搬入していない茶の間に座り、 天井を見上げて、ボー としていた。
理解が追いつかなくて、考えるのをやめていたんだ。
まだ昼過ぎだというのに、窓の向きが悪いせいか家の中は薄暗くなり始め、自分の周囲から色味がなくなっていく。
しまった、早く荷物を入れないと。 会社から借りたトラックから六畳一間分の荷物を下ろし、一軒家へと移していく。
僅か数十分の作業だったが、すでに茶の間は電灯が必要な暗さになっていた。先ほど気になっていた気味の悪い2階には行く気にもならない。
なんとも説明出来ない不安感が、夕暮れの影と一緒にオイラに近づいてくる。
最初の怪奇現象はこの日の夜だった...
コンビニ弁当を食べ終え、町外れにある銭湯で今日の一日を思い返す。 ハァ、帰りたくない...
どっぷりと夜が深くなり、いよいよ布団に潜り込むと寝室の電気を消した。
この寝室は玄関から見ると、茶の間の左側にあり、必ず茶の間を横切らないといけない。比較的 車が通れる道路は呪符の部屋側になる為、この寝室は最も道路と離れた場所に位置しており、窓の向こうは何も無い ただの田んぼが遥か奥まで続いている。50M程先には田んぼを横切るように線路がある、が、夜間は走らない為完全な静寂が広がっている。
電気を消して、真っ暗な部屋の中.. 自分の呼吸しか聞こえないほどの深い静寂
暗闇の中、僅かに聞こえる音に過剰に反応してしまい、音の正体を探してしまう。
全然寝れない! 外の音は殆ど聞こえず完全な無音がオイラを包み込んでいる。
次第に暗闇にも目が慣れ、部屋の天井が見えるようになって来た。 チラッと右を目だけで見ると茶の間の向こうに玄関の扉が見える。ここから見える扉までの距離が遠く、その間に存在する暗い空間が更に不安を増幅していた。
トタタタタタッ..!
!? ビクッ!! ??
自分の頭上で突然音が鳴り響き、身体が強張る! なんだ?? ネズミか? ネズミだよな?
突然聞こえた何かが移動する音。 耳で音を追いかける。 不規則な音ではなく、一定なリズムに聞こえる? ネズミだよな?
気が付けば、かなりの深夜。 怖くて眠れない。 しかしやがて睡魔が打ち勝ち、いつのまにか まどろみ..の な. か ...zzz
突然 ギュッ...ギュッ... と音がした!!
オイラの両脇の下のところで??
一瞬にして現実世界に戻ってくる意識! 間違いない!仰向けで寝ているオイラを踏むように、誰かが足踏みをしたんだ!
しかも、オイラを通り越して!
ちょうど脇の下のところで 布団が足で踏まれたような 浮き、沈みを確かに感じた!
おい!ふざけんな! 強がろうとする気持ちはあるが、声にはならない。 耳の中が、ドッドッと脈打っているのが解るし、呼吸も早くなる! 間違いない!