見出し画像

時よ止まれ!

「時が止まったらいいね」
「そうだね」
 と真理子が言ったので、それを聞いたたけしが夢見がちな真理子に半ば呆れつつ真理子に向かって答えたのだが、それが彼らの運命の分岐点となった。なぜなら真理子がそう言った瞬間本当に時が止まってしまったからである。時の止まった真理子はいつまでも高校生のままで、真理子の言葉に呆れつつ同意したたけしは時の経過とともに老けてしまった。やがて時の呪縛は解けて真理子はハッと我に返り隣のたけしを見た。するとそこにいたのはたけしではなく杖を着いたヨボヨボのジジイだったのだ。しかもそのヨボヨボのジジイは自分をだいてキスを迫っているところだった。彼女は老人をボコボコにして交番まで老人を引きずっていった。交番の警官は真理子から事情を聞くと老人をそのまま逮捕して取り調べを行った。老人は警官の尋問に対し涙ながらに訴えた。
「あの事は高校の同級生でずっと付き合っていたんだ。なのになんでワシがあの子に訴えられなければいかんのじゃ!これはなにかの誤解じゃ!あの子をここに連れ戻しておくれ!ワシはあの子の恋人の合田たけしじゃ!」

 結局合田たけしは不起訴となりそのまま老人ホームに収容された。年齢はとうに90を過ぎ、完全にボケている彼には身寄りなどいなかったのである。一方皆本真理子は今も高校生活をエンジョイしまくって、今度は来生君と付き合っているそうだ。彼女は来生くんにもこう言っているのだろうか。

「時が止ったらいいね」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?