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健太郎

 街中の公園で彼女が呆然としていたんだ。僕は彼女が心配で声をかけたよ。したら彼女は言うじゃないか。

「死んだ健太郎のことが思い出されて時々死にたいぐらい悲しくなる」

 ってさだから僕は言ったんだ。

「いつまでもそんなに悲しんでたら天国の健太郎だって悲しむぜ。いい加減泣くのをやめろよ」

 って。したら彼女は怒って僕をビンタして去ってしまったんだ。あなたには何もわからないって言い残してさ。

 僕は自分の愚かしさに呆れたよ。彼女の悲しみにつけ込んで気を引こうとしたことに激しい罪悪感を感じた。

 その二年後さ。彼女から突然結婚式のしょうたいじが届いたんだ。相手は健太郎と同じく僕の全く知らないヤツだった。チャペルでの結婚式が終わって教会内の食堂での披露宴が行われていたが、司会者がでは二人が参列者への感謝の言葉をって彼女と新郎の康夫って知らないやつに挨拶を促したんだ。どっちが先かって彼女と新郎の康夫ってヤツがいちゃいちゃしながらの譲り合いをしたけど結局彼女が先に挨拶することになった。

「皆さん私たちの結婚式に参加してくれてありがとう。私と彼が出会ったのは約二年前でその時私は大好きだったアニメのキャラクターの健太郎が死んですごい落ち込んでいました。バカな男友達にはいつまでも泣いてたら悲しむなんて何を勘違いしたのか見当違いの慰めをかけられてますます落ち込んだのです。そんな時私の前に現れたのが彼でした。彼もアニメファンで私が健太郎が死んで後追い自殺したくなるほど悲しいって訴えたら、一生に泣いてくれて『僕も一緒に君の悲しみを分かち合いたい』って言ってくれたんです。それを聞いて私彼とずっと一緒にいたいって強く思いました。私は彼と一緒に健太郎のために生きていきます。皆さん、いつまでも私たちを見守ってください」

 僕はあんまりなまでの衝撃の真相に頭がふらついて倒れそうになった。あの健太郎ってのは実在の人物じゃなくてアニメのキャラだったのかよ。そを知っていたらもっとマシな対応してたのに!僕はウェディングドレスを着た眩しすぎる彼女を悔し泣き状態で見て思った。

 俺も分かち合えばよかった!

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