クシャクシャになった紙は二度と元に戻らない
妻はクシャクシャの離婚届を夫に突きつけて言った。
「こんなことをしても私たちの仲は二度と戻らない。このクシャクシャになった紙が二度と元に戻らないように、あるいはヒビの入った壺が二度と元に戻らないように私たちの仲も永遠に戻る事はないのよ。残念だけどあなたが判を押してくれるまでずっと離婚届持ってくるから」
夫は俯いて頭を抱えた。それから彼は頭を叩いて自分を責め始めた。だがそんな事をしてもクシャクシャになった紙が二度と元に戻らないように、ヒビの入った壺が二度と元に戻らないように私たちの関係は元に戻らない。妻は頭を抱える夫を眺めてさよならを告げるとサッとテーブルから立ち上がって去ろうとした。しかしその時夫が待てと叫んで妻を呼び止めた。妻は夫の異様に真剣な顔に思わず立ち止まった。
「もう一度だけチャンスをくれないか?クシャクシャになった紙がが二度と元に戻らないなんてそんな事あるはずがないよ!同じようにヒビの入ったツボだって元に戻せるんだよ!俺たちの関係だって絶対に取り戻せるはずなんだよ!だから俺、お前のためにいろいろ考えたんだよ!」
夫の必死の言葉が別れようとする妻を引き止めた。彼女は夫に向き直って言った。
「じゃああなたはどうすればクシャクシャになった紙のような、ヒビのある壺のような私たちの関係を元に戻すことができると考えているのよ!」
夫はテーブルから立ち上がり妻を見つめて言った。
「まずクシャクシャの紙のようなお前を寝かせてその下に濡らした布団を敷く。そしたら水で濡らして固く絞った布巾でクシャクシャの紙のようなお前を拭きまくる。その次は新しい布団でお前の上下面に挟んでその外側から締め板でさらにお前を挟む。最後にその上から百キロぐらいの重石を乗っければ、俺たちの関係はクシャクシャの紙のようなものはなくなって、まっさらな新しい紙のように蘇るんだ。今からその方法で俺たちの中のクシャクシャを取ってしまおう。もしかしたら俺たちは紙じゃなくてヒビの入った壺かもしれないけど、そうだったらヒビの直し方を考えるさ。まぁいざとなったらお前を釜にぶちこんでもう一度生まれた頃からやり直せばいい!だからお願いだ!今からお前を伸ばして百キロの重り乗せてクシャクシャ取るからおれとやり直してくれ!」
「アホンダラ!そんなもの断るってか、すぐ警察に通報してやるわ!」