トップ会談

なんの巡り合わせか、まさかこんなところで会うなんてと思った。あれは大学時代だったろうか。異国から留学してきた彼女と私はたちまちのうちに恋に落ちた。夜の彼女はその東洋風のお淑やかさをかなぐり捨てて情熱的に私を求めたものだ。私は彼女にプロポーズしたが、彼女はそんな事はできない、絶対に両親は許してくれないわと涙ながらに言った。その彼女の後ろ姿に向かって私はこう叫んだ。

「僕は何があっても君を忘れない! 君に何かあったらすぐに駆けつけるよ! だから君も僕をずっと覚えていて欲しい!」

君は僕を覚えているだろうか。またこうして、こんな形で巡り会えるなんて……。僕はよちよちと君の下へと歩いてゆく。

「きゃあああ! なんなのこのゴキブリは! 大統領、これは何? あなた身だしなみもろくにできないの?」

「ソーリー、まさかゴキブリがいるなんて思わなかった。おい、誰か殺虫剤でゴキブリを仕留めるんだ!」

私は絶望に打ちひしがれて彼女を見た。彼女はあの時の約束を覚えていないのだろうか。僕は君と別れてすぐに腹上死で死んでしまったんだ! だけど僕は君との約束を守るためにゴキブリに転生してこうして会いにきたんだ!  なのに君は僕の存在に気づくどころか殺そうとするなんて! 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?