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膝小僧の思い出
子供の頃の私は暴れん坊でそこらじゅうを走り回っては転び、その度に膝を擦りむいてかさぶたを作っていた。あんなに転んでいたのに今もちゃんと二本の足があるのを不思議に思う。今考えると私には膝小僧の精霊がいたのかもしれないと思う。きっと精霊が私のこの足を守ってくれていたんだ。でないとあれだけ擦りむき、一年中かさぶたを貼り付けていたような私の足が今も二本ちゃんと生えていることの説明が出来ない。だから私は感謝の気持ちを込めて膝小僧にキスしたのだった。すると膝から何かが飛び出してきた。子供だった。子供は私につばを吐きかけるなり、私に向かって怒鳴った。
「このクソ野郎!何が感謝だ!人を散々こき使いやがって!オマエのおかげで俺は何度も死にかけたんだぞ!コノヤロ!それどころか今でもオマエ転ぶじゃねえか!一体お前は俺のことを何だと思ってるんだ!お前は俺に感謝してるらしいが、俺に一度でも感謝の恩返しをしようと思ったことはあるのか?俺に絆創膏も貼らねえ!俺にオロナインも塗らねえ!せっかく作ったかさぶたはすぐに取っちまう!ああ!お前は最低だ!それにいつの間にかブクブク太りやがって!俺は今じゃお前のその豚みたいな体を支えるために毎日死ぬ思いをしてるんだ!お前!いますぐ俺と役割を交換しろ!しねえと俺は二度とお前の膝になんかなってやんねえからな!」