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未来のロックンロール

「俺たちはオヤジたちから受け継いだこのワーキングクラスのロックを鳴り響かせていつか革命を起こすんだ!いくぜ『ロックレボリューション!』

 五万人収容の巨大ドームの観客に向けてこう叫んだのはワーキングクラスヒーローズのボーカルアンドレイである。アンドレイのこの咆哮と同時にギターのジェイソンが思いっきりギターを鳴らした。このライブになけなしの金をはたいて買った服を着込んで参戦した観客たちはアンドレイと一緒に全力で歌った。ステージのメンバーの演奏と観客の合唱は一体化し音の猛烈な波でドームは揺れた。

「最高だったね!これも会場のキッズたちも盛り上げてくれたおかげだよ!これでやっとオヤジに顔向けが出来る!」

 ライブの終了後ワーキングクラスヒーローズのボーカルアンドレイはジャーナリストのインタビューにまずはこう答えた。このジャーナリストは学生時代からの遊び仲間でアンドレイの父で大物ロックミュージシャンであるトニーとも知り合いだった。二人は家族ぐるみの付き合いでなんでも気さくに話せた。

「確かにキッズたちは盛り上がっていたね!これで君は名実共にワーキングクラスヒーローそのものになったね!」

「ああ!やっとオヤジに顔向けが出来るよ。ガキの頃調子こいてオヤジの大事な爺さんの多分オークションに出したら億はいくんじゃないかっていうレスポールぶっ壊してお前は俺たちが親子二代で成し遂げたロックをぶち壊すつもりかって怒鳴られまくったけど、今日やっとその罪滅ぼしが出来たぜ!」

「お前はヤンチャだったからなぁ〜!うち普通の弁護士家庭じゃん。だから金なんか全然貰えなくてさぁ、有金バンバン使いまくるお前が羨ましかったよ。お前の爺さんと親父どんだけ稼ぐんだよってさぁ!」

「まぁ、親子三代ワーキングクラスのロッカーだからな!世間の常識からどうしたってはみ出しちゃうのよ。だけどそのワーキングクラスのスピリッツが俺たちをここまで導いてきたんだ。俺の中にはヒートルズでワーキングクラスのヒーローになった爺さんとオルタナロックシンガーだった親父のスピリッツが濃厚に流れているんだ。世界の貧しい子供たちを救おうともせずただ金を無駄遣いするだけのハリウッドのセレブども。ファッションなんて薄っぺらな世界に生きるパリコレのモデルども。そして世界中のワーキングクラスから搾取を働くシリコンバレーの生き残りども。俺はそういう連中と一生かけて戦っていくんだ。ワーキングクラスの権利を手に入れるために!」

「熱いねぇ!だけどお前そのセレブなんかよりずっと金持ってるし散財だってずっとしまくってるだろ?それにスーパーモデルのジェニファーと付き合ってんじゃん。後さ、お前今度リンゴアースのCM出るじゃん。あんまり吹きすぎるとみんなに嫌われちゃうよ。ほどほどにしないと」

「あっ、いっけね。みんなこれワーキングクラスのパフォーマンスってわかってるよね?マジに怒ってお前なんか二度とパーティに呼ばないなんて言い出さないでね。そんなことされたら僕泣いちゃうよ!」

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