保存をして閉じる
のが現代にとって最も重要だ。なんでも保存して閉じろ。現代の我々にとってはもはや脳は情報の格納先として機能していない。クラウドサービスの流行でわかるように情報は外部に預けてしまったほうが遥かに効率的なのだ。人間の記憶など信用できない。記憶とは嘘をつくものだからだ。だから同僚に昨日こういう事を言ったよねと言っても、相手は真顔でいや、そんなことは言っていない、と言われてしまう。そんな事にならないように情報は全て外部に格納すべきなのだ。自分など信用できない。他人はもってのほかだ。だから何でも外部に情報を預けてしまえ。そう思った私は自分の中の全ての情報をクラウドサービスに預けた。預ける時保存をしますか?と聞かれて私は保存をしてすぐにページを閉じた。これで情報は一生消えないだろう。
確かに消えなかった。恐ろしいぐらい消えなかった。翌日の朝、会社の誰かがいきなりキャー!とか叫んだ。私たちは彼女のそばに行って何事かと問いただした。すると彼女はデスクトップを指差しながら言うではないか。
「クラウドから会社の情報をダウンロードしたら変なのが出てきたんです。なんかのウィルスでしょうか?」
残念ながらそれはウィルスではなかった。それは昨日私が預けたデータだったのである。ああ!今画面には私がためまくったAVコレクションの動画がバンバン流れている。確かに私はあの時はデータを自分用のクラウドに入れたつもりだった。だが何故会社のクラウドに!しかし私は自分に疑惑がかかるのが怖かったので当たり前のように嘘を着いた。これは間違いなくウィルスだ!ライバル会社の陰謀だ!課長!警察に訴えましょうよ!しかし課長は私の肩を叩いてこう言った。
「ちょっと話したいことがあるんだけどお時間いいかな?」
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