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地仙大付属高校野球部の奇跡 第一話:新任監督

「俺が今度監督になった谷垣だ。はっきり行って俺はお前らと仲良くする気はない。ただお前らに野球を一から教えてやるだけだ。この間お前らの練習を見たんだが、ひでえもんだ。まともにグローブもはめられない。ボールも投げれない。バットなんか持つことさえできないんだからな。それでよく甲子園で優勝だなんて言えたもんだな!恥ずかしくないのかお前ら!ええ、俺はなあお前らに現実というものをわからせてやるためにここ来たんだ。お前らが甲子園どころか地区大会初戦さえ勝つことができないってことを身にしみて教えてやるためにな!」
 地仙大付属高校野球の部員たちは新任監督の谷垣のいきなりの挑発的な挨拶に怒りを感じ、彼に向かって言い返そうと思ったが、しかし何も言い返すことができなかった。
「なんだその目は、なんか文句でもあるのか?言ってみろよ!お前らが野球の野の字も書けねえってのはこっちはとっくに知ってるんだよ!ほら、言えよ!野球の野の字ぐらい書けますって言ってみろよ!」
「やめてください!」
 声を上げたのはマネージャーの鳥子である。彼女は野球部のマネージャーで一年生の頃からずっと野球部を支えていた。
「たしかに私達は野球のことはよくわかりません。三年間ずっと野球に関わってきたけどそれでも野球のことはわかりません。それでも私達野球を愛しているんです!みんなを侮辱するようなことを言うのはやめてください!みんなの甲子園で優勝するっていう願いをバカにしないで!」
「バカに向かってバカというのがなぜ悪いんだ!こんな連中にいつまでも夢を見させていいと思ってるのか!」
 谷垣の嘲笑に耐えられず鳥子は泣き出した。そしてその場に崩れ落ち大声を上げて号泣してしまった。
「やめろよ!鳥子をいぢめるな!甲子園に行くってのは彼女の夢なんだ!俺たちは三年間ずっと彼女の夢を叶えるためにきつい練習を耐えてきたんだ!俺はお前を許さない!これ以上彼女を侮辱したら……俺はお前を殴る!」
 そう叫んだのはキャプテンの横島である。彼はマネージャーの鳥子が侮辱されるのが許せなかった。怒りが収まらなくなった彼は拳を握りしめ谷垣に詰め寄った。
 谷垣はそんな横島をせせら笑い、呆れた顔で彼をみてこう言った。

「お前らな、甲子園を目指すのは勝手だがな!まずユニフォームの着かたぐらい覚えろよ!あとグローブにはちゃんと指もはめろよ!なんだよ!グローブに拳骨いれて!それじゃボールつかめないだろ!あとバットは細い方を持つんだよ!なんで太い方持って振ってるんだよ!それとお前ら野球ってスポーツをほんとにわかっているのか?ピッチャーとバッターの立ち位置逆じゃねえかよ!なにマウンドにバッターが立ってんだよ!それとキャッチャー!なんでおまえライトにいるんだ!お前が構えるのはバッターボックスの後ろだ!あと守りの全員!お前らがいる場所はスタンドじゃなくてグラウンドだ!なに客に混じって応援してんだよ!あと攻め!お前らはグラウンドじゃなくてベンチだ!なにバッターの打った球拾ってんだよ!それとさっきも言ったけどなあ!お前ら高校生なんだからいい加減野球って字を覚えろよ!ひらがなで『やきゆう』って書くな!」

《完》



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