童話:ガゼルとライオン
アフリカのサバンナに雌のガゼルと赤ん坊のライオンが一緒に住んでいました。この二匹が出会ったのは群れからはぐれてサバンナをさまよっていまガゼルが親を亡くして泣いていたライオンの子を見つけたのがきっかけでした。ガゼルは母親の遺体のもとでピーピー泣いていた赤ちゃんライオンを見て母性愛を感じたのです。勿論ガゼルはライオンが自分たちにとって恐ろしい存在である事はよく知っていました。だけど泣いているライオンの子供を見捨てる事は出来なかったのです。ガゼルはライオンの子供にお乳を与えました。それまでガゼルは子供を産んだ事はありませんでしたが、不思議なことにお乳がたくさん出たのです。赤ちゃんライオンはこの母親代わりのガゼルのお乳を勢いよく吸い上げました。
こうしてガゼルとライオンは一緒に暮らしてきましたが、ライオンが大きくなってきてもう自分のお乳だけでは育てられなくなってきました。だけどガゼルにはお乳しか与えられるものはありませんでした。ガゼルは考えました。私だけならなんとか生きていけるけどそうしたらこの子は死んでしまう。この子にとって必要なのは肉なのだから。ガゼルはどうしても我が子同然のライオンの命を助けたいと思いました。
ある朝のことです。ガゼルはすっかり痩せ切ってしまったライオンの前に自分のお腹を見せて言いました。
「お母さんをお食べ。そして逞しいライオンになるんだよ」