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切り売り伝説

 僕は追い詰められていた。自分の全てを切り売りするしかないと思った。幸いにも僕は頭と体に恵まれていた。IQは200以上あるし、身長も180cmある。BMIも24.0のバランスのいい体型だし、運動神経もいい。そんなわけで僕は自分の体ごとにオークションにかけたのだ。買い手はすぐに見つかった。まず僕の精子が売れた。人工授精で優秀な子供が欲しいらしい。次に僕の髪が売れた。薄毛の人が僕のツヤツヤとした髪で付け毛を作るらしい。次に僕の血が売れた。精力を上げたい人が僕の血を入れて何回もこなせるようにしたいらしかった。

そうしてとりあえず僕は身をバラバラにすることなく多額の金を手にして危機から救われたのだが、数年後にその買い手たちから一斉に訴訟を起こされた。騙された。と彼らは一応に僕を責めた。まず精子を買った客に猿が生まれたと訴えられ、次に付け毛の客からは僕の髪をつけてたらハゲになったと訴えられ、最後に僕の血を買った客からは僕の血を飲んだらインポになったと訴えられた。

 しかし未来とは不確定性の存在である。我々の世界に於いて確実にありうることなど何もないのだ。僕は彼らに未来への可能性を与えたに過ぎない。

 というわけで僕は訴えを全く無視していたが、ある日突然訴訟人の誰かの依頼を受けたものが僕のマンションに入ってきて僕を縛り付けてノコギリを手にこう言った。

「人から頼まれてね。アンタから裁判で金が取れないんだったらアンタの身を切り売りして金をもらうしかないってさ。気の毒だが依頼をうけた以上最後までやらせてもらうぜ」


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