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靴下のかたっぽがみつからない ㉗運転手とアオイ
そうこうしているうちに、わたしは35歳を目前までになった頃です。
むくむくと、またわたしの妄想癖がやって参りました。
「家が欲しい」
です。
子供の頃から、異様なまでの「家好き」な趣味がとうとう爆発するのです。
と、いうとオーバーなのですが、単純に住宅ローンを借りるなら35歳までがいいと、どこかで聞いたことがあったので、買うならこのタイミングかもしれないと思っただけです。
社長の奥さんからは、古新聞をもらっていて、いつも中古物件の項目はチェックしていました。
間取りを見ては、わたしならここにテレビを置くなぁとか、ら想像するのが習慣になっていました。
実家に帰れるわけでもないですし、娘たちに帰る場所を作ってあげたかったし、アパート代は捨て銭な気もしていました。
たまたま姉から、面白い物件があるよ、と教えてもらい、娘たちと姉とで不動産屋さんにお世話になりました。
姉が教えてくれた物件は、山の中の一軒家で、「懐かしいおじいちゃんの家」という謳い文句で、250万円程度で売られていました。
ワクワクして行ってみてびっくり、山を一つ越えて、次の山に行く途中くらいな、遠いところに感じました。
(実際後から見てみたら、距離的には全然遠くなかったのですが)
その家は、比喩ではなくてリアルにボロボロで、家の中は電気がないのに光が差し込んで明るく見えます。靴のままどうぞと、言われるくらい、家の中なのに、もはや外なのです。
これは住むにはかなりのリフォーム代がかかりそうだなとなるわけです。
そしてわたしの姉はさすがです。
せっかく不動産屋さんを通して物件を見れるならと、とても買うには贅沢な、ふざけた作りをしている一軒家も下見の希望を出していて、お邪魔させてもらうことになりました。
その物件は、わたしが日々新聞をチェックしていて知っていたところで、こんな家があるのかと印象に残っていた物件で、本当に見せてもらえるなんて、と、ウキウキしました。
結果…この家を買うことになります。
その経過は
「2児の子持ちのシングルマザー、34歳にして中古の一軒家を買う」
というページがありますので、よろしかったらご覧ください。
なんて、ページは存在しませんが。
無いのかい。
ボリュームがありすぎるので、割愛させていただきます。
いつか、お話しできたらいいのですが。
わたし34歳、アカネ小学6年生、アオイ小学4年生のことです。
こうして、アカネにしてみたら、4回目の転校になりました。
6年生の夏のことだったので、あと半年もすれば小学校卒業です。
卒業するタイミングで引越しでもいいんだよと、伝えたのですが、彼女なりに考えることがあったのでしょう。
結果購入後リフォームが終わって、すぐに引越しということになりました。
正直、地区の役員のことがあったので、わたしもどこかほっとしました。
途中で引っ越す人は異例だったらしく、引き継ぎにドタバタはしましたが、役員の仕事は大抵春に多くて、私がなから大変な仕事は済ませていたので、引き継ぐ人にしてみたら、かなりラッキーなようで、あっという間に後任が決まりました。
わたしの人生どうしてこんなに、行き当たりばったりなのでしょうか。
振り回されている娘たち、本当にごめんなさい。
購入後したその家は山の中の一軒家です。
そうなると、その転校先の小学校も…見事に山の中にあります。
1学年で10人程度の、絶滅寸前のトキのような小学校です。
今まで通っていた小学校は同じ市内にあって、びっくりするくらいのマンモス校だったのに、このギャップは流石の娘たちも衝撃だったようです。
山の中の学校で、生徒たちは満遍なく学校まで距離があります。
市では特例で、民間の人も申請すれば使えるスクールバス制度がありました。
なんとありがたいことでしょうか。
あろうことか、わたしの家から徒歩3分のところまでバスがきてくれて、いろんな子たちを乗せて学校まで連れて行ってくれます。
これは、、、運動不足まっしぐらだぞ。
とびっくりしました。
娘たちがバスを乗るのを見とどけると、これはまるで、幼稚園児のスクールバスみたいだなぁ、なんて有難いんだと、心底思いました。
転校して間もない頃、
「聞いて聞いて、給食当番で牛乳瓶を持ったんだけど、今までは2人で重い思いをして運んでいたのに、この学校は1人でちょっとしかない瓶を運ぶんだよ」
と、教えてくれました。
授業もかなり丁寧だったようで、アカネは5年生のブランクがあったので、本当にありがたかったです。
そんなことで、アカネには良かったのかもしれません。
アオイはもともと男の子のお友達が多かったせいか、この人数の少ないクラスは、つまらないとぼやいていましたが。
娘たちと畑を作って、野菜を作ってみたり、山の中を散歩してみたり、忙しい中にも楽しいことを見つけて、3人で過ごしていました。
雪も多くて大変です。
毎年の渋柿を人からいただくようになって、3人で皮を剥いて、干すのも楽しかったです。
すみませんこれは、全部わたしの主観なので、娘たちはまた違ったかもしれませんが。
そんな生活が一変した出来事がありました。
アオイが5年生のころ、一学期の終業式を終えた日に、仕事中私の携帯に電話がきました。
担任の先生からでした。
こんな時間に、こんなタイミングで電話が来るなんて、ケガでもしたのかと、背中を冷たい手で撫でられた気がしました。
電話の内容は、頭ではすぐに想像が出来ない話ですぐに信じることは出来ませんでした。
「今日アオイさんが、私のところへ話をしにきてくれたのですが、アオイさんが言うには、スクールバスの運転手がアオイさんに性的に何かされていたそうで…」
話の滑り出しは、そんな流れでした。
意味がわからなくて、聞き返してしまいました。
「え?バスの運転手さんが?いつですか?本当ですか?」
信じてやれよ、おかーさん…と今になって思います。
だって、毎朝普通にしてましたし、今朝も学校に元気に行っていましたし。
「それが、いつというよりも、アオイさんが言うには、何回かあったらしくてですね…」
いやいやいやいや、意味がわかりません。
だって、今朝も元気に学校へ行ってましたし。(2回目)
「そのお話が本当だったとして、具体的にどんなことをされてたのですか?」
と聞くと、
「膝にアオイさんを座らせて、、身体を服の上から触ったり、口ではなくて、頬やおでこにキスをしてきたり、下着をのぞいてみてみたりされたと、、」
いやいやいやいや、今朝も元気に学校へ行ってましたけど?!(3回目)
その後校長先生、教頭先生ともお会いして、お話しすることになりました。
正直この時点では、まだ信じられなくて、他の子と間違えてるんじゃないかとか、とにかく「いやいや、違うでしょう」と思ってました。
実は私、アオイではなくて、私の方が、転校早々アオイのクラスメイトの男の子に、参観日の日に後ろから抱きつかれて胸を鷲掴みにされることがありまして。
たまたまふざけて…ではなく、確信的な行為の触りかたでして…
もう、傷ついたり、きゃーと悲鳴をあげる年頃ではないので、そっと担任の先生にお伝えしたところ、話がそりゃもう大きくなってしまいまして。
参観日の後、事務室に連れて行かれ、担任の先生に状況を説明しなければならなく、、話し終える頃今度は学年主任の先生がみえて、、また同じ話を聞かれるわけで、、そうこうしているうちに、保健の先生、教頭先生と、人数は増えていき、その度に同じ話をすることになり、なんともシュールな体験をさせていただいた時に、教頭先生と面識が出来きたという出来事がありまして。
まさか、ここで、今度はアオイがお世話になるとは思わなかったので、親子揃ってお騒がせしてすみません…という気持ちでお会いしたのを覚えてます。
でも、今回はそんな笑い話ではすみませんでした。
一連の流れはこのような話でした。
スクールバスは、山の1番はじっこに住む私の家からスタートして子供達を乗せていきます。
何人か子供達や、地元の学生、登録している地域の方を拾って、小学校へ向かいます。
小学校でまず、子供たちを下ろしたら、そのまま今度は中学校付近や、最寄りの駅にいきます。
帰りは、その逆からスタートします。
最寄り駅から利用者を乗せて、最後にアオイをおろします。
この一対一の間に、出来事が起こりました。
そのバスは時間調整で、よくわたしの家の近くの、ちょっとしたスペースで駐車をしていたそうなのです。
運転手の年配の男性は、アオイに、ランドセルをおろしたら、ここにいるからあそびにおいでと、声をかけていたそうです。
アオイは、嬉しくてホイホイと自らバスに乗り込んだらしいのです。
かなりの年配のかたで本人が言うには、おじいちゃんみたいな人だったと思ったそうです。
まさか、そういうことになるとは、本人は思わなかったらしいです。
実際お孫さんがいるそうで、同じくらいの年齢だと言っていました。
はじめのうちは、話をしたり、そのバスにあるマンガ本を開いて見せてくれたり、楽しかったそうです。
それが何回か続き、回数が増えると、運転手さんは膝の上にアオイを座らせ始めたそうです。
アカネとも面識がありましたから、
「アカネちゃんは、もう下の毛は生えたのか」
とか
「ブラジャーをつけ始めたのか」
など、卑猥なことを聞いてくるようになって、そのあたりからアオイは違和感が出てきたそうです。
アオイを膝に乗せて、身体をさわり、首もとから、服を伸ばして下着などを覗き込んできたりしたそうです。
服の上から胸を触られたりもしたそうです。
頬やおでこにキスをしてきて、
「このままバスを走らせて、おじさんと遊びに行こうか」
と言ってきたそうです。
アオイは、もうこれはおかしいと気づいたけれど、翌日になるとまたバスを降りとるきに、運転手さんに
「ここで待ってるからね」
と言われると、いかないといけない気がしたそうです。
アオイは私の知らないところで、アカネに相談をしたらしく、アカネはそれは大人に言った方がいいよ、と言ってたらしいです。
私はそんなやりとりがあったなんて、全く知らなかったのです。
それから、アオイは、運転手さんが嫌で無視を始めたそうです。
そうなると、運転手さんはつまらないのか、アオイにちょっかいを出してきます。
バスを降りる瞬間に、バスのドアを閉められそうになって、慌てて降りることもあったらしいです。
その嫌がらせがアオイの中では耐えられなかったようで、先生に言ったそうなのです。
最悪な事態にはならなかった、それだけは救いでした。
「お母さんに言えなかった?」
とわたしがアオイに聞くと、アオイは
「夕方は遊びに言っちゃダメって言われてたのに、ランドセルを下ろして遊びに言っちゃったから、怒られると思った」
と言っていました。
私は、目頭が膨張して、壊れて、大粒の涙が出てきました。
ダメなお母さんで、こんなところで子供に苦労をさせてしまうなんてと、心底後悔しました。
日頃から、厳しくしすぎたのかもしれないと、思いました。
部屋を片付けなさい、勉強しなさい、など、わたしは怒りすぎたのかもしれないと思いました。
この家に引っ越してこなければ、こんな思いをさせなかったかもしれないと思いました。
離婚しなくてあの家に住んでいたら、アオイにこんな思いをさせなかったかもしれないと思いました。
私が我慢すればよかったのにと思いました。
勝手に離婚をしたから、と思いました。
なにがそうさせた?
いろんなことから逃げてきたから?
勉強も出来なくてまともに就職もできなくて、いろんなことから逃げてきたから出来損ないになっちゃったのかな?
どうして出来損ないなの?
フサコさんの家に生まれたから?
全部過去まで掘り返してしまいました。
そこからが大変でした。
私には、決めなければいけないことが大きくて多かったです。
まずは申し訳ないですが、その運転手さんには辞めていただきました。
それは運転手さんを雇用していた会社の、社長さんの方針でもあり、学校側も強くて要求してくれたようです。
ただ、この件で辞めてもらうとなると、まだこちらの気持ちが定まっていなかったので、とりあえず、日頃の仕事の勤務態度ということで、辞めていただきました。
警察に被害届を出すか、学校側から決めるように言われました。
被害届を出すと言うことは、いつだか泥棒に入られて大変だったあの夜を思い出します。
警察の人が来て、色んなことを聞かれました。
それを、アオイがどの程度耐えられるのか分からなかったので、本当に悩みました。
当時は小学5年生です。
最悪な事態は免れたのだし、これはそっとしておこうかとも思いました。
警察の人も、被害があってから日にちが経っているので、実況見分は厳しいので証拠がなく、本人の証言のみの話になるので、被害届を出しても、かなり厳しいと思うと言われました。
罪に問われたとしても、そんな大きな処罰にならないでしょう。
こんな時、お父さんがいたらどうなっていたかなと、思いました。
1日でも早く決めないと、いろんなものが風化してしまいます。
証拠も気持ちも。
私は、被害届を出すことにしました。
それが結果相手が捕まらなかったとしても、世の中にこういうことをする人がいるんだと、知ってもらわないといけないなと思ったからです。
そこで結果どうなるかは、世の中が決めることなので、今私が決めることじゃないな、と思いました。
そうなると、急スピードで周りが動き出しました。
警察の方はアオイに考慮してくださり、事情聴取は女の若い警察の方がしてくれました。
警察署だと緊張してしまうと配慮して下さり、自宅に何度も出向いてくれました。
学校側も全面的に協力してくださり、事情聴取をするときは、決まって教頭先生が様子を見に来てくれました。
本当にありがたい話です。
けれど、それで終わってしまいました。
あっけなかったです。
あんなに悩んだのに。
警察の方から、
「アオイさんに当時のことを聞いても、はぐらかされてしまいます。本人は話したくないみたいです。それでは非常に厳しいです」
と言われました。
「あの運転手さんのことは嫌い?」
質問に、アオイは「嫌い」と答えたそうです。
そうなると、嫌いな人を陥れるために嘘をついているのではないかという見解もでてきてしまい、発言の信憑性に欠けるとも言われました。
そんなことってあるんかい。
衝撃でした。
そんなことをされれば、嫌いな気持ちだって湧くでしょう。
嫌いと言ったのがいけないのなら、これからアオイの発言は、大人の世界の駆け引きのいる世界のための発言になってしまいます。
これはもう戦えないなと、思いました。
あっという間の敗北宣言でした。
私がもっとちゃんとしてたら、ちゃんと普通の人だったら、もう少し違ったかもしれない、というモヤモヤした気持ちが残りました。
それから2年くらいしてからか、たまたま朝の情報番組をつけて、流し見をしていたのですが。
国内ニュースのトップに、エレベーターの中で同じアパートに住む成人している男性が小学生の女の子のおでこにキスをして逮捕、という報道をしていました。
事件は半年前の出来事で、エレベーターの中の防犯カメラが証拠になって逮捕されたとのことでした。
私の中で衝撃だったのは、「半年前の出来事」だったというところです。
きっと発覚して実際に逮捕されるまで、いろんなことがあったことでしょう。
防犯カメラで鮮明に証拠が残っていたのに、半年も必要だったのです。
いかに大変で、私がやろうとしていたことは無謀だったのか読み取れました。
私の判断で、沢山の人を巻き込んでしまいました。
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