勿忘草、語ります。/困って迷って声かけられて
「道なりに進む」は難しいと知ったから語る。
年末はあらゆる手続きが必要だ。
例に漏れず、私も役所へ手続きに行った。
私は、「いっぺんにやった方が楽でしょ〜。」という思考の元、溜めに溜めた書類を持って行った。
結論から言うと、その作戦は失敗だった。
手続きをするにあたって、近くの建物に行かなければいけなくなったのだ。まあ、書類を溜めた自分が悪い。総合案内所で聞くと、簡易的な地図をもらって、案内所の人に道を説明してもらった。
「今いる場所が第一庁舎。あちらの扉から外に出て、道なりに進んでください。2分ほど歩くと第二庁舎建物が見えてきます。そこで手続きをお願いします。」
第二庁舎。
一本道なのかな?
よし、いってみよう!!
てこてこ、てこてこ、、、
てこてこ、てこてこ、、、?
第一庁舎から出て少し歩く。
なんと。
分かれ道があった。
み、道なり、、、?
まっすぐ行くと裏路地のような道がある。
しかし、左の道は大通りに抜けられそうだ。
どちらが正しい道か、もらった地図と道を照らし合わせながらうろうろしていた。
道なり、みちなり、ミチナリ、、?
その時、声が聞こえてきた。
「手続きしに行くのかい?」
高齢の女性が、先程私がいた第一庁舎から出てきたようだ。うろうろしている私を見て、声をかけてくれたらしい。
「こんにちは。第二庁舎といわれたんですか、、、」
「ならこっちだよ。この道、少しわかりにくいよねえ。」
高齢の女性は、私を先導してくれた。
大体二分ほどだろうか。
一緒に歩いてくれた。
「今日は手続きに来る人、多いねえ。」「年末なので、色々手続きがあるんですよ。」「あんたもかい?」「そうなんです。途中で道に迷ってしまって。」「ここは少し入り組んでるから、最初はわかりにくいよねえ。」
からからに乾いた落ち葉を踏みしめながら、はじめて会った女性とお話をする。道なりだけど、曲がり角が多くて迷路のようだ。二分の間に4、5回は曲がり角があった。
女性とおしゃべりをしていたら、いつの間にか第二庁舎にたどり着く。重いガラス扉を開けて第二庁舎の中に入る。正面に私の目的地である手続きがあった。
窓口に行く前に、私は女性にお礼を言った。
「困っていたところ声をかけてくださって、ありがとうございました。」
女性はなんでもないことのように微笑んだ。
「わからなかったら、周りの人に聞くといいよ。」
「はい。」
私は深く頷いて、もう一度頭を下げてお辞儀をした。
素敵な道案内をしてもらった。
分からなかったら、聞けばいいんだ。
それは、教訓にも似た優しい言葉だった。