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勿忘草、語ります。/水と油が混ざり合う時
ちょっと言いにくいのだけど、語る。
私は、昔から生野菜が苦手だ。
美味しく食べている方を見ると、尊敬する。
どうにも、苦手なのだ。
味覚とは恐ろしい。
一度苦手を意識すると、苦手だと思ったものが入った料理は、どれほど細かくても濃い味付けでも気づく。なんなら、食べる前に匂いで気づく。
生野菜が苦手な私にとって、サラダは遠慮したいものだ。だから、ちょっとオシャレなレストランに行きたくても、前菜のサラダが怖くてなかなか行けない。美味しくいただけないのに、行くことは出来ない。
そうやって、私は食べることがあまり好きではなくなっていった。
みんなが楽しみにする学校の給食の時間も、
修学旅行など旅先で出される料理も、
「苦手なものが出されるかもしれない」時間が、恐ろしくてたまらなかった。
そんな私に、転機が訪れた。
きっかけは「水菜」だった。
あるお店で、水菜のサラダが出てきたのだ。
どうやらサラダ付きのメニューを見逃したらしい。
やだなぁ。
そう思った私は、サラダから目を背けた。
そして、机の片隅に置かれたドレッシングを見つけた。
ドレッシングを味見してみよう。
サラダが乗せてあるお皿の端っこにドレッシングをちょんちょん載せた。そして、味見する。
このドレッシング美味しいな。これなら、、、
サラダの端っこにドレッシングをかけて、水菜を一葉食べた。
ドレッシングの味がした。
もう少し食べれそう。
ドレッシングをかけて二葉食べた。
やっぱりドレッシングの味しかしない。
こうなったら!!
サラダ全体にサラダをかけて、一口分食べた。
シャキシャキする。
なんだこれ。
歯ごたえがいいな!
もう一口なら、もう一口、、、、
食べきった。
あれほどサラダを避けてきた私が、サラダを食べきった。
私は思った。
ドレッシングは、水と油のコラボレーション。
混ぜれば分離する水と油。
ドレッシングとは、いわば相反するものをかけあわせることで、より美味しいものを作り出そうとした者たちの、努力の結晶なのだ。
反発し合うもの達。
それを見事組み合わせた方がいる。
心の奥底から尊敬する。
私の世界に、「美味しいもの」が増えた。
私はそれから、ちょっとずつサラダを食べるようになった。
もう随分前の事だが、あの時の衝撃を忘れることはないだろう。
ちなみに、私のお気に入りはオニオンドレッシングとごまドレッシング。柑橘系のドレッシングも美味しいし、塩系もいける。
水菜とは親友である。
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