見出し画像

「申し訳なさ」という秘密の感情

若い頃は、手紙をよく書いた。
自分の結婚式で、新婦からの手紙を用意していたが、前日に便箋3枚は多いと夫に言われ、小さな小さな字で1枚にギュッと詰めこんだ。

当日、私が便箋を開いた時、夫が典型的な二度見をしたのを忘れはしない。


結婚した後、どうしても夫に訴えたいことがある時は手紙を書いた。

夫とは同期入社。入社7年目結婚。数年共働きしたあと、私が先に退職(妊娠のため)した。

あの頃は、夫に対して遠慮していたのだと思う。
共働きしていた時は感じなかった気持ちが、自分の希望を伝えたり、夫婦の未来を語るのを怖くさせていた。

私は勤務内容も理解し、激務の辛さが分かる。
自分は先に辞めてしまった
申し訳ない
そんな気持ちでいっぱいだった。

私は夫を立ててきたし、彼の考え過ぎるところや弱い部分を理解していたから、言葉を選んできた。
そんな私にとって、手紙はとても効率的で無駄な口喧嘩を避ける良い手段となっていた。


とは言うものの、言い合いや喧嘩に発展することもある。
理論的に話す夫に対し、感情的に話す私。でも、常に心の中の申し訳なさが口に戸を立てる。

この思いを夫には言わなかった。
言うべきではないと思った。
言わないことが、ほんの少しの自己否定と不安感を生み出していた。



夫は50歳を機に転職。
何年も悩んでいたのを知っていたので、反対する気持ちは一切無かった。

転職と同時に、私の申し訳なさと小さな不安感も徐々に薄れていった。

もちろん、どこの会社であっても働いてくれている感謝は忘れないが、夫と堂々とぶつかり合うことができるようになった。


もう遠慮することもない
言いたいことが言える
手紙を書かずに、声に出す


夫婦の秘密は、ストレスや不安を増やす種だ。できれば少ない方がいい。

ひとつ消えても、ひとつ増える


人生折り返し
数年前の断捨離で日記や手紙類を捨てた。これからはSNSの終活も考えなければならない。

だって、このnoteが私の最大の秘密なのだから。



今回、珈琲次郎さんの企画(秘密がテーマ)に参加しました。いつもありがとうございます。


いいなと思ったら応援しよう!