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最高と最悪のタイミング レペゼン地球とスパルタ教育のアプローチ

しばらく前#いまから推しのアーティスト語らせて というタグで擁護に擁護を重ねまくった(過去記事https://note.com/nattoutoast/n/n8143e78f3978)「レペゼン地球」であるが、パワハラ炎上もおおむね沈静化した今、またとんでもない曲をリリースした。

乙武洋匡氏とのコラボレーション曲である。

私が10代の頃、乙武氏の著書『五体不満足』がメガヒットを飛ばし、障碍者という概念に一大革命が起きた。と思う。

教師も親もこの本を課題図書として推薦しまくり、何事にも感情移入の激しい我が家の御母堂などは目に涙を浮かべて作中エピソードを語ってきたものである。

しかし時の人となった乙武氏は、その時点でまだ「聖人」みたいな空気であったのだ。

長らくその界隈の聖人、革命児、であっただろう彼は、しかし十数年の時を経て「不倫騒動」というメチャクソ凡庸なスキャンダルをもってその地位を追われることとなる。

不倫くらい我が家の親父殿でも通った道である、当事者にしてみればタマランだろうものの有名人のスキャンダルとしては一番ベタなやつ、ガチャでいうところのレアリティ「N」であるが、革命児として散々持ち上げられてきた乙武氏のイメージダウンには充分すぎた。

当方生涯厨二病を貫いているため、24時間テレビの障碍者企画については物心ついた時からお寒いですなぁというスタンスを貫いており、昨今攻めの姿勢で誰もが絶賛するNHKの『バリバラ』ですら、結局こう、奥歯にものの挟まったやり方しかしねぇなというか、腫れ物に触る扱いでフェザータッチかましやがって国営放送特有の垢抜けなさがしょうもねぇと感じ斜に構えている。そんな、私みたいな全国不謹慎同盟所属メンバーに乙武氏のスキャンダルは格好の面白トピックスだったろう。乙武氏のイメージはこの不倫騒動で一気に「イジってもいい人」みたいな扱いに変化したと思う。

その風潮がすっかり定番化した今、レペゼン地球とのコラボレーション楽曲『He is perfect』が発表された。

正直もう、24時間テレビとか、バリバラとか(このふたつの番組の掘り下げ方にも大きな差はあると思うが)そのへんの番組がイマイチ垢抜けない企画の数々で表面を撫でくってる間に

「調子がいい奴手叩け 彼の分まで手叩け」

「一目瞭然俺はハッピー なのに皆優しいんだぜラッキー」(乙武氏の歌詞)

キッズに絶大な人気を誇るレペゼン地球の、この歌詞がガッと核心を掴んで引きずり出した。タイミングも最高だった。乙武氏炎上なうでもレペゼン地球炎上なうでも、これより遅くても早くてもこのインパクトは出せなかったと思う。

メンズエステでいうところの、オッサンの鼠蹊部をサワサワしていたセラピストが急にタマキンの縫い目を破って精巣を引きずり出したに近い。(この辺の例えは極一部の変態にしか理解できないので読み飛ばして欲しい)

若い感性の勝利だと思う。

……ここまではただの推しと、その若い才能に賛同した乙武氏への賞賛である。

この革命から遡ることもはや20年前、レペゼン地球とは全く関係のない一人のお笑い芸人が、まだ「聖人」扱いであった乙武氏をめちゃくちゃイジって大炎上した。

その御名を「スパルタ教育」という。

現在も名前を変えて活動されているが、当時熱烈なお笑いファンだった幼い私にとって、彼もまた個人的な革命児の一人であった。

当時の私はインキャを通り越してお触り禁止レベルのやべぇオタクであり、その反動から三十路を越えてEDM等クラブミュージックに親しむ可哀想な女なのだが、お触り禁止故にマジで一人も友達がおらず、お笑いライブにソロ参戦するしか趣味がなかった。キャラクターとしては『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い』のヒロインもこっちを1000億倍不細工にした感じでイメージしてもらえるとわかりやすいと思う。そういうガキはとかく同世代の他者と差別化を図りたがる。私は違うこいつらとは違う、そんな想いを抱いてひとりお笑いライブに通っていた。

スピードワゴン、オードリー、アルファルファ(角田氏加入前の東京03)等、錚々たるメンバーの中に、スパルタ教育氏は、いた。会場の空気を一気に熱狂させる求心力、確実に笑いを掻っ攫うフリップネタのクオリティ、その実力はあっという間に人気ネタ番組『エンタの神様』へと彼を押し上げ、ネタ本までが発売され、着実にサクセス街道を進んでいくかに思えた。

そして、上記の動画における「乙武氏ネタ」で大炎上し、あっという間に事務所の退所まで追い込まれた。

とまれ、ほかのネタもアホみたいに過激だったので乙武氏のネタがなくとも炎上は不可避だったのかもしれない。そもそも乙武氏は2ちゃんねる(当時)みたいなアングラ掲示板(当時)ではそこそこのイジられ方をしていた。だからこそスパルタ教育氏の乙武ネタは一部のお笑いファンにとって「大っぴらに笑っちゃいけないけど享受するぶんには有難くウケる」みたいな扱いを受けていたとも言える。

当時のエピソードは御本人がYouTubeで語っている

https://www.youtube.com/channel/UCy-u5dNV2LKtPAzcajnfBXw

し、ただの1ファンであった私が詳しく述懐できようはずもないが、2019年12月の今、レペゼン地球と乙武氏のコラボソングがリリースされ、それに強く感銘を受けたと同時に

「うまくいかねぇなぁ」

そう感じたのも確かである。

スパルタ教育氏は単に、乙武氏をちょかすためにあのネタをやったのではなかったと思う。なんか名前は忘れたが障碍者プロレスみたいな集団との交流もあったようだし、あのネタが炎上することそのものが言ってしまえば逆差別だったのではないかと、捻くれ者の私は未だにそう考えたりする。

そして約20年もの間、様々な価値観が怒涛のスピードで進化していった。乙武氏に対するイメージも色んな意味で変化を遂げ、スパルタ教育氏の時代であれば活動休止に追い込まれたであろうレペゼン地球が、このように絶妙の感性とタイミングで、スパルタ教育氏と全く逆の評価を受けている。

うまくいかねぇ。

この複雑な感情を胸に、私は『He is perfect』を時代の革命として絶賛するのである。

スパルタ教育氏、現在のまん☆だん太郎氏は、当時の過激さこそ薄れたもののストイックで先鋭的な笑いをもって地下お笑い界に君臨している。あと、元芸人として数度コミュニケーションを取らせていただいた身として言わせてもらうとめちゃくちゃ優しい。

ぜひライブ会場に足を運んでみてほしい。

あと『He is perfect』も聴いてくれ。

「時代を変えるのは老人ではない」

シャア・アズナブルの言葉である。切ない。




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