確率と自分と。
「人の原点を考える」 長谷川真理子 著
進化生物学者の作者が、その名の通り人の原点を考えながら、現代の社会を見つめて語っていく本です。
気楽な感じで読める本でした。
〜〜個人的な見どころ〜〜
①いつも通り
この手の本に、いつも書かれてる事。
今回もしっかりと書かれています。
ええ。
「人類は大半を狩猟採集社会で暮らしており、産業革命はもちろん、農業革命にもしっかり適応出来てはいない」
ってやつです。
農業革命から1万年。
だいたい400世代って事です。
なかなかだと思いますが、それでも遺伝子や身体が適応、変化していくには到底足りないようです。
しかも、農業革命から産業革命、今の情報革命。
目まぐるしすぎて、対応できるわけない!
ってところですね。
今は色々試行錯誤していって、そのまま淘汰されていく個体もあれば、残っていく個体もあって。
混沌としていってる時期なんでしょね。
②なんとなく思ってたことの言語化
昨今の統計とか。そういったブームありますよね。
今もそうですが、確率論。
宝くじが当たる確率の低さとか。
交通事故の憂き目にあう確率。
自動車を運転していたら想像以上に高いとか。
こうした方が確率的にはいい!ってやつですね。
それが、正直イマイチピンとこないところがあって。
ちなみに、僕は宝くじは買っちゃいます。
ジャンボとか話題になってるやつだけですが。
可能性がほぼ0%でも、買わな当たらんからね。
で、交通事故に関して。
これは予想以上に感じる所があったので、配達系の仕事をを辞める事にしました。
そんなわけで。
ある事象が起こる確率はX%といわれても。
その事象に対処するための行動は、やるかやらないか。
二者択一なんですね。
つまりは、元々人間はそういう思考が苦手!ってところを、上記のように見事な言語化してくれてます。
言い訳には使えるなって思いました。
そんな言い訳ばっかしてたら、黙って淘汰されちゃうんでしょうけれどもね。
③優しい視点
ウクライナの戦争からコロナ禍、環境問題まで。
本当に少し前の社会問題にふんだんに触れられてます。
そんななかの作者の視点がとにかく優しくて柔らかだなって印象を持ちました。
ほら。進化生物学者ですからね。
生物の99%は絶滅してるってことを語っておられて。
しかも、人類の密度が他の生物に比べて半端なさすぎるって事も語っておられて。
そうなりゃ人が争うのも、病気が流行るのも、環境が人間にとっては限界を迎えるのも…。
「当然だよね。フッ」
ってならずに、なんとか打開策はないだろうか?
って訴え続ける姿勢がすごいなと思いました。
〜〜まとめ、雑記〜〜
さて。いくつか雑学や追記を。
・髪の話
本文で、人間の子供は、猿のように母に体毛がないので、母に捕まることができないってお話を読んでてふと思い出したこと。
赤ちゃんが、成長遅いのは脳がでかいってのもありますが、人間には基本体毛がないってのもあります。
親に掴まれないから、生まれた時にそこまで握力がなかったりするわけです。
で、これは別の本からの仮説にすぎないお話ですが。
人は予想以上に水の近く。水上生活してたのでは?
って話がありまして。
体毛がほぼなくなった理由として、水上生活だと邪魔になるからって大胆な仮説ですね。
そこでは、少し大きくなった赤ちゃんが、母親の髪の毛に捕まってたんじゃないか?って話。
だから、母親。つまり女性は禿げにくく、男性はあまり必要ないので禿げやすいのでは?
って。なんじゃそりゃ?な仮説を思い出しました。
・知識を積み上げることの重要さ
最近の??大学生を見て違和感を感じた内容が面白いです。
あるテーマで話をしてて、ある言葉が出てきた時に、なんの躊躇もなく、その言葉の意味がわかんない、教えて!
って言ってきて、それを当然のように感じてると。
それがすごい違和感で。
多分、作者的にはすげー甘ったれてる。
少なくとも自分で調べりゃすぐわかるし、調べるべきものなのに、聞くのが当たり前。答えてもらうのが当たり前ってなってるところに大丈夫か?ってなってるのが印象的でした。
例えば、夏目漱石の「坊ちゃん」について互いに語りつくすってテーマ。授業があったとして。
赤シャツって誰?教えて!
っていうようなもんですね。
わかりにくいですかね…。
呪術廻戦について互いに語りつくす授業で、五条悟って?教えて!
っていうような…。
とにかく、シンプルな不勉強で他人に教えてもらった知識じゃ、しかも、それを恥と思わないようじゃ、自分自身にとっても知識をしっかり落とし込めないだろ?ってお話。
・人が発展してるわけ。
いきなり本文↓
人の文化がなぜ蓄積的に発展できるのかと言うと、
人の脳が互いの心を読み合って、目的や価値を共有することができるから。
実は、人間の脳が大きくなった理由。
社会ができたからって言われてるんですね。
社会でどのように生存するか?
そして、生殖するか?
これが、今では考えられないくらい想像以上に頭脳がいるようです。
昔の殺人ってのが、今の世界のどんな治安が悪い地域より頻繁に起こってたようなんです。
副産物なんですよね。
文化の発展ってのは。
・子供が大声で泣くのは人間だけ。
これも意外でした。
確かに。普通、赤ちゃんが大声で泣いていたら、捕食者の餌食になるだけですからね。
人間は、いつもの狩猟採集社会時代には、赤ちゃんを共同で育てていたと思われてるんです。
母親じゃなくても、周りにいる誰かに自分の状態を知らせるために泣くといわれてるんです。
なので、今でも我々は赤ちゃんの泣き声に反応してしまうんですね。人間は何万年も前からそーゆー風にできてるので。
なので、電車の中でも赤ちゃんの泣き声がすると反応するし、今だと、他人の赤ちゃんだったらこちらはどーすればいいかわからないですよね。
様子を見にいくのも今は憚られますからね。
仕事中や、寝たい人によってはイラついたりするわけです。
でも、これも、実は赤ちゃんからの信号を受け取っても、何も出来ない自分にイラついてるって感じかもですね。
あと、赤ちゃんを育てるのも、1人じゃキツいのは当たり前なんですよね。みんなで育てていたんだから。
もっとみんなでかかわっていくもんだったんだなと。
個人的には色々考えなおさなきゃと思いました。
では、また。