AIで再び新曲!失語症のランディ、新たな音楽
Country Singer Randy Travis Releases AI Song after Stroke
カントリーミュージックが好きな人ならランディ・トラヴィスを知らない人はほぼいないでしょう。数々のヒット曲、受賞歴、2016年にカントリー・ミュージックの殿堂入り、何よりあの魅力的な声。しかし、2013年の脳卒中からの失語症、数年かけてオプリのステージに顔を出した現在まで彼はもう新曲をリリースおろか、歌うこともままならない状態で、それでも色々な授賞式には客席で元気な様子を見せてくれていました。
そしてなんと先週のことですが、ランディは新曲を出したのです。
えっ?どうやって?
と、最初音源だけを聴いた私は驚いたのですが、AIを使ってランディの声を忠実に音符にのせて仕上げ、この曲はどう聴いてもランディ・トラヴィス!!
それには彼の今までの数々の楽曲、素晴らしい仲間、何より彼の声をわかっているエンジニアの功績が大きいと思います。まず最初に、ロンドンのコンピューター・プログラマーたちが、トラヴィスの声を再現できるAIシステムを作りました。トラヴィスのキャリアから12のボーカルサンプル(楽曲サンプル)、42のサンプル(1985年から2013年までの声)の2種類が用意され、(この翻訳の表現は私の限界なのでどなたか細かい手法の意味がわかる人がいたら教えてください)次に新曲のための楽曲選びがなされました。彼の声がAIにうまくのせやすい、彼らしい、いくつか提案されていた曲の中から選ばれた曲だそうです。
そしてまず、デモ・ボーカル(ジェームス・デュプリーが歌った)が 曲を録音し、その後、AIシステムが曲を分析し、トラヴィスの声を当てはめました。その分析はたった5分でおおよそ70%の仕上がりだったそうです。そしてレコーディングスタジオにはヴィンス・ギル、キャリー・アンダーウッドをはじめとした彼に近しいミュージシャンが集まり、このヴィブラートはもう少し、ここはランディならもう少し伸ばして歌うはず、ランディらしくゆったり、と微調整を繰り返して作り上げられたそうです。たくさんの時間をかけて、大勢の人の手と耳で丁寧に作り上げられた新曲。
ところで、先月、200人以上のアーティストが非営利団体アーティスト・ライツ・アライアンスが提出した公開書簡に署名し、人工知能技術企業、開発者、プラットフォーム、デジタル音楽サービス、プラットフォームに対し、"人間のアーティストの権利を侵害し、価値を下げる "AIの使用をやめるよう呼びかけがありました。共同署名したアーティストには、スティーヴィー・ワンダー、ミランダ・ランバート、ビリー・アイリッシュ、ニッキー・ミナージュ、ピーター・フランプトン、ケイティ・ペリー、スモーキー・ロビンソン、J・バルヴィンらがいます。
いたずらに、そして詐欺行為や儲け主義のためにAIで他人の声で創作されることには反対ですが、さて、ランディのこの曲は”神からの贈り物である”と言われています。人間の損失を補う今回の楽曲作り、ランディの歌声が出来上がった瞬間、家族も本人も涙を浮かべている映像もありました。2013年で止まっていた彼らの時間が動きだしたのだと。
色々な考え方があり今後も検討が必要なAIの楽曲作りですが、ぜひこの映像を見て、聴いて見てください。映像の中には、ご家族、スタジオにいるヴィンス、キャリー、演奏者の仲間達の姿、何より嬉しそうなランディの姿を見ることができます。
『Where That Came From』Randy Travis
そして早速ニュースにもなっています。今後いろいろな意見が飛び交うのかもしれません。ランディのチームとしの見解は、「これはランディが望んで行っていること。歌を歌いたい!でも叶わない彼が、AIを使って新しい音楽を生み出せたことの感動の方が大きい。」と話しています。私も、これはランディとご家族にとっての生きがいに繋がることで素晴らしいことだと思います。
最後に
今回このプロジェクトでデモシンガーとして関わったジェームス・デュプリーはカントリーシンガーであり、2019年にはランディのための企画ツアーに歌手として参加していました。声質がとても似ていて、、そこもポイントだったのかもしれませんが、今後は彼自身の活躍がさらなるものになりますように!