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音楽における「創客」について
音楽にしても演劇にしても映画にしても、直近の集客への取り組みは昔も今も月毎に、週ごとに直前は、、とメディアでの宣伝方法、最近はSNSを利用した告知など誰もが熱心に取り組んでいます。企画に力を入れたり、主だった人間を著名な人にしたり、メディアで影響力のある人に声をあげてもらったりと、その短期間では集客に成功するでしょうけど、果たして皆さんはどのような「創客」をしているでしょうか。
「創客」とはマーケティングの勉強で出てくる言葉なのですが、文字通り「顧客を創ること」です。ある事柄のために「集客」をして、継続的な「接客」をして(ファンクラブや、興味を持ってくれたフォロワーへの積極的な情報提供)、その人を中心とした周囲にいる人間を探し出す、いわゆる「探客」を行い、次へその人たちを繋げる情報提供をし足を向けてもらい「増客」していく。これは昔からマーケティング専門の理論として提唱されていることで私もかなり昔に読んだのでうる覚えではあるのですが、どの業界でもなされていることで、きっと、今現在もマーケティングの勉強をすれば最初に習うことかと思います。
「なんだいつもネットでやってることだ」と、この文を読んで思う人もいるかと思います。ネットで告知をして足を運んでくれたファンとその後も交流を繋げて、その周囲の人も足を運んでくれて、、、確かに「創客」をしていることになります。ところが、インターネットの便利なようで必ずしもいいわけではないところが「レコメンド機能」です。皆さんも、Youtubeを見ていたら”おすすめ”に好きそうな映像が出てきてそこを見て、さらに好きそうなところへ、、、とずっとネットサーフィンをしてしまうことがあるかと思います。音楽にしても、好きな俳優にしても、なんだかPC(携帯)はいつも私にお勧めしてくれる〜と楽しめていることでしょう。ところが、それはそのユーザーの行動データが決定したルールに基づいて商品やコンテンツを提案する仕組みに乗っ取ったおすすめなのです。ということは、好きなもの、とそのちょっとした周辺だけを延々とおすすめされていく、AとA’というパイを延々と極めていくので、BやCに興味を持つことおろか、Zは知ることもない、、ということにつながるのです。
ネットだけの「創客」の落とし穴は実にここにあり、その影響を一番ウケそうなのは実はネットの「創客」を一番便利に活用している音楽家だと思っています。
「創客」という仰々しい単語を使わないで例えば、「好きなこと(もの)」としましょう。スポーツや食べ物、書籍やテレビ番組は実は年齢とともに趣向も変わりやすいという傾向があるそうです。子供時代に野球をやり、高校生でサッカーをやって、大学生でテニスを楽しみ、社会人になってゴルフをする、老後は相撲を見る、ちょっと王道すぎますがそういう流れがあると、その人はそれら全体にその時期ごとに目を向けて消費していきます。食べ物も年齢とともに好みがあり、書籍も読めなかったものが読めたり、テレビも趣味が変わっていきます。そしてもちろん音楽も子供の頃聴いていた子供番組からシンガーソングライターやロックが好きになり、、と変化はあるでしょう。作り手側になった場合を考えてみましょう。
例えばクラッシックを演奏する人は大人になって演歌を演奏する人に変わる率はどのくらいあるでしょう。オペラを勉強してた人がアイドルコンサートをするようになる確率はどのくらいあるでしょうか。音楽家が、仮にロックバンドであったとして、ロックの好きなファンがいつも応援してるライブで、「今日から童謡を歌います」とイベントを開いて既存のファンはどのくらい来るでしょうか?反対にそのイベントに童謡好きな人が来るでしょうか?あまり成功する絵が浮かびません。それは私だけ?いえ、浮かばない気がします。なぜならば、音楽家は「この音楽をする人」という色を打ち出して仕事をしていることがほとんどだからだと思うのです。それは固定観念ではなく、それが売りだからです。こういう歌を歌う人だから好き!というファンがいるのに、違ったジャンルを歌われたら果たしてどのくらいついてきてくれるか。未知数のリスクを冒して違うことに意味があるでしょうか。音楽に”年齢によって昔は聞かなかったけど今は聞く”という可能性は、食べ物や身体的な成長と加齢によるスポーツの趣味の変化と比べて、どのくらいあるでしょう。音楽は意外に、ずっと好きなジャンルは変わらないのではないでしょうか?
とすると、今の、レコメンドされ続けている世界(PCや携帯を通じた)である人はずっとAやA',A''が好き続けて聴いている音楽から、MやZを聞いてもらえるようにするにはどうしたらいいでしょう。MやZの音楽の人がA好きな人に出会えるようにするにはどうしたらいいでしょう。
それはAもZも出演するようなイベントやフェスに出ること、自分自身がAやZの要素を盛り込んだ新しい楽曲を模索してみること、などかと思うのですが、皆さんは何か「創客」に向けて策を練っていますか?音楽における自分の色を大切にした上で違った人たちを取り込むこと、知ってもらうのは非常に大変な作業だなと日々思うので書いてみました。(答えは見つかってません)
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