エディット・ピアフの名曲「愛の讃歌」の訳詞
今回のパリ五輪開会式、色々物議はあるようだけど、私としては二つ。
1)レディー・ガガが、セリーヌが出演することで自身の印象が薄くなることが確実だけど気にせず、のびのび素晴らしいジジと同じパフォーマンスを見せてくれたこと。
2)闘病中なのにあそこまでしっかりした歌声を披露してくれるとは本当にセリーヌ・ディオンはすごい。彼女にとって残されたものはもう「歌うこと」だけなのかと思わせるほどの力を感じた。
で、エディット・ピアフの名曲「愛の讃歌」ですが、日本語の訳詞は岩谷時子さんで越路吹雪さんが歌ったのがとても有名かと思います。ただ岩谷さんの歌詞は、もとの歌の歌詞とは違った解釈の歌詞になっています。そこについては、音楽評論家の田家秀樹さんの分析によると、「岩谷さんの訳詞はいわば、意訳です。原語を直訳すると、越路さんの雰囲気に合わなくなってしまう。彼女は原語の世界を大切にしつつも、“越路さんにはこんな歌を歌ってほしい”と願って訳していた。それは、岩谷さんが越路さんのファンの代表だったからだと思います」(女性セブン記事より)ということだそうです。岩谷さんはどうやら、越路吹雪には男女の愛だけでなく、普遍的な広い意味での愛について歌ってほしかった、、という思いがあったようです。多分当時の日本の音楽としてもそういう歌詞が求められていたことも原因にあったのではないでしょうか。
とにかく、本来ならば、既婚男性と恋に落ちたピアフが、亡くなった彼を思って「あなたのためなら何もかも捨てていい」という内容の歌で大ヒットしたものですが、日本では全ての人への愛の歌として知られているわけです。
今回、セリーヌ・ディオンは亡くなった夫や家族を思いつつ歌ったのか、ピアフになり代わったつもりで歌ったのか、歌手としてはどうだったんだろうと思ったりしました。
ところで、日本では越路吹雪さんの他に、私は大竹しのぶさんが歌われたバージョンが好きです。本来の意味で言えば、加藤登紀子さんの訳も、美輪明宏さんの訳もいいのですが、大竹しのぶさんが歌われた訳は、2011年に舞台化された時に歌われた歌詞で(訳詞:松永祐子さん)舞台向きの歌詞っぽくていいなぁと私は好きです。大竹さんにすごくハマっていると思います。
サビの部分
あなたが望めば
世界の果てまで
行ってもいいわ
髪の毛も切るの
家も捨てるわ
友達さえも
祖国も裏切るわ
怖いものはない
あなたがいれば
(作詞:マルグリット・モノー、日本語詞:松永祐子)
ただ、ご家庭がある相手に向けてのこの「愛の讃歌」、、、世界的にヒットということですが、そのご家庭の残された家族の気持ちは、、、と思うと複雑かな。
大竹さんのバージョンは、舞台で演じていただけあって乗り移ったかのような、それでいて派手な演技はなく体全体から感じられる歌です。こんな歌い手になりたいな。