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#花二輪展 展示紹介テキスト

2023年8月1~31日に、高円寺にあるShisha&Cafe Celluloidさんにて、わたしの百合短歌を集めた個展を開催させていただくことになりました。

会場ではわたしの既刊「花二輪」に掲載している百合短歌連作、そして大好きな漫画家の岡藤真依さんの原画(桐島の私物)をたくさん展示します。

また、大好きな踊り子である黒井ひとみさんの演目をイメージした新作の百合短歌、そしてそれをイメージして描き下ろしていただいた岡藤さんの新作も展示いたします。

物販やトークショー(8/5,6)、さらにわたしの短歌をイメージした店長特製のオリジナルシーシャなど内容盛りだくさんです!ぜひ遊びにいらしてください。

お店の左奥の小部屋に、これまで桐島がつくってきた本の表紙の原画(いずれも岡藤真依さんの作品)をまとめて展示しています。そこに綴った岡藤真依さん、黒井ひとみさんの紹介文、および既刊の表紙の解説文が、とても立ち読みできる分量ではないのでここにも掲載します。

ここで読む前でも、読んだ後でも、ぜひ、会場で原画をあわせてご覧いただけたら嬉しいです。

岡藤真依さんのこと


初めて岡藤真依さんの作品を拝見したのは、たまたま帰省した大阪で、たまたま通りかかって見つけた「男が憎くて仕方ない」展(二〇一一年、ツツミエリさんとの二人展)。そこから岡藤真依さんの作品に惹かれ、通販で同人誌を購入させていただくなどファンに。初めてTwitterでリプライを送ったのが二〇一四年、同年渋谷で開催されたグループ展(チャームポイント展)で初めて原画を購入。(「25℃の嫌悪」と一緒に展示している「海辺のあの子」)。大好きな作家さんの原画を手にするという経験が初めてで、興奮をそのままにその原画をイメージして書き上げた小説をDMでお送りして以来、岡藤真依さんの寛大なご厚意によってご縁が続いています。

どこかノスタルジックな、かつての自分の記憶を垣間見せてくれるような繊細でエモーショナルな画風と、怒りや悲しみ、性に関する剝き出しの感情までが大胆に描かれる物語のバランスが唯一無二の存在感を放っています。岡藤真依さんの絵が、漫画のワンシーンが、台詞のひとつひとつが、わたしにとってすごく大きな存在です。今回展示している岡藤真依さんの作品は、すべてわたしがこれまで購入させていただき、部屋に飾りつづけているものです。岡藤真依さんに表紙を描いていただくことをモチベーションにして、わたしのいままでの創作活動が成り立っています。


黒井ひとみさんのこと


今回の展示は、黒井ひとみさんからのご紹介で実現しました。初めて黒井ひとみさんのステージを拝見したのは二〇二一年七頭の渋谷道頓堀劇場。文学フリマで出会った黒井の女(黒井ひとみさんのファンの意)が「百合もストリップも好きなら黒井ひとみさんを観るべき!」と連れて行ってくれたのですが、「Black Lilly」(※)の洗礼を浴びるやいなや、あっという間にわたしも黒井の女のひとりとなりました。

演目中、黒井ひとみさんはさまざまな役柄を演じ分けていらっしゃいますが、どの役柄にも、背景にそれぞれの物語が宿っているのを感じます。だれかの都合に合わせた「キャラクター」ではない、ひとりの人間として歩んできた人生をきちんと持っている「人間」が、一回ごとのステージに立ち現れてくる。だからこそ、その人間が肌を見せてくれること、ありのままの姿で目の前に立ってくれることにものすごく励まされるし、感動を覚えるのだと思います。演目のあとも、観客のひとりひとりの目を見てくれる黒井ひとみさんの姿にいつもパワーをいただいています。真摯でかっこいい黒井ひとみさんの舞台が大好きです。

※Black Lilly……シスター同士の禁断の百合を描いた演目。のちに最高のチームショーへと進化し、今回の個展の新作「天国」のモチーフにもさせていただきました。興奮そのままの鑑賞レポートはこちら


「25℃の嫌悪」


二〇一五年発行。はじめて作った短編集。表紙は、わたしが初めて購入した岡藤真依さんのドローイング「海辺のあの子」をリメイクしてくださったもの。このドローイングからイメージを膨らませて書いたのが巻頭作品「海辺のあの子」。絵に感動して一気に書き上げた勢いそのまま、岡藤真依さんご本人に「こういう小説を書いてみたのですが……」とおそるおそるDMを送った思い出。そのときとてもあたたかいお返事をいただけた喜びをいまも覚えています。


「わたしたちはきれいに死ねない」


二〇二〇年発行。百合だけで一冊作ろう、と思ってまとめた短編集。テーマは「女と女のエモい関係性」。巻頭作品「ひかりを孕む」、そして巻末作品の「エスケイプ」に登場するユキちゃん・ひろちゃんは、岡藤真依さんの既刊「どうにかなりそう」に登場する彼女たちをイメージしています。ご厚意でお名前もそのまま使わせていただきました……! 作品を読んでくださったうえで、「ひかりを孕む」のワンシーンから描いてくださった贅沢な一枚。


「柔肌と幽霊」


二〇二一年発行。百合の連作短編、そして濡れ場! という挑戦がいっぱいの一冊。岡藤真依さんの「マーガレットのような恋」(今回の展示で「アリスたちだった」の傍に掲示している作品)からインスピレーションを得て書き始めた作品。色っぽい描写を意識的に取り入れつつも、下品にはならないように、絵の雰囲気を壊さないように……とどきどきしながら書き続けました。


「顔が生まれる」


二〇二一年発行。黒井ひとみさんの「ストリップ劇場で同担同士のポラ列で始まる百合が読みたい」というつぶやきから生まれた百合小説。あらためて確認すると、黒井ひとみさんの投稿が2021.7.24の12:31、わたしが第一話を書き上げてDMを送ったのが16:03、黒井ひとみさんのご許可をいただき投稿したのが16:24なので全体を通してなかなかのスピード感です。ただただ、大好きな踊り子である黒井ひとみさんに喜んでいただきたくて筆を進めました。執筆中に岡藤真依さんから最高の表紙を頂戴し、その表紙のイラストに合わせた番外編を書き下ろして作品を完結させています。好きな女たち二人に導かれて書き上げた幸せな作品です。


「しずむ深爪」


二〇二二年発行。執筆中の仮タイトルは「ストリップを観てからホテルに行く百合小説」。ストリップの「触れることのない相手に向けるまなざしのエロス」と、恋人同士の「触れることのできる相手に向ける労りのエロス」の対比を意識して書き進めたように思います。性的な描写にも、かならず相手への敬意がこめられているように気をつけたので、そんなふうに伝わっていたらとても嬉しいです。岡藤真依さんの表紙をイメージした三首連作を巻末に添えています。


「花二輪」


二〇二二年発行。はじめてつくった歌集で、百合連作だけを集めました。ここで百合短歌集をつくっていたことが巡り巡って今回の展示につながっているので、本当にご縁というのは不思議なものだなぁと思います。百合、と一言で言ってもひとによってイメージはそれぞれ異なると思うのですが、わたしにとっての百合とは「女が女に対して抱く、割り切れない感情の総称」です。地の文として、明確に説明することが難しい、言語として抽象化してしまうのは憚られる……そんなあいまいな領域を、短歌という形式の力を借りてすこしずつすこしずつ表現していく、そんなイメージで作品を作り続けています。表紙の絵については、百合短歌集であることをお伝えしたうえで、あえて着色等をしないドローイングを依頼しました。誰かの記憶を覗いているような、かつての自身を振り返っているような、さまざまな物語を感じさせてくれる最高の表紙です。


「保留音」


二〇二三年発行。二冊目の歌集は百合に限定せず、近い期間にできた連作をまとめたところ「日々をやり過ごすために保留せざるをえないこと」がテーマだと感じたのでこのタイトルになりました。わたしは短歌をつくるとき「主体=自分」であるとは考えていません。だけど完全にフィクションというのもまた違って、普段思っていること、感じていること、本当にあったことや「あればよかったのに」と思っていることなど、自分のなかにあるさまざまなもののなかでも、特に自分にとって整理のついていないもの、をなんとか掴んでみたくて、短歌という形式に甘えてかたちをもらっているのだと思います。表紙については、表題作「保留音」の連作をお送りして、モチーフ等はお任せでお願いしたのですがやはり最高の作品に仕上げてくださりました……! あとがき代わりの掌編と、奥付けに添えた一首は表紙をイメージしています。

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