トランスジェンダーの子どもが中学校へ入学するにあたって
小さな私のソーシャルアクション。
今日はトランスジェンダーの子を持つ親にとって、現実的に何か役に立つようなことをと思い、子どもが中学校に入学するにあたっての諸々起きたこと、子どもと話したこと、学校と話したことなどつれづれに書いてみることにした
あくまで我が家のケースだし、一人ひとり違うからなんとも言えないこともあるかもだけど、小学校から中学校にあがるときには制服の存在があったり、男女でわけることが小学校のときよりも格段に増えたりするため、実際にどんなことが起きるのか?とか、中学校にどうやって相談させてもらったらいいのか?など悩むこともあるかなと思うので、誰かの何かの役に立つといいなと思う。
ちなみに、我が家の子どもは二人。
上の子ども=エム氏、下の子ども=ワイ氏。
ともに体は女の子だけど、心は男の子だと自認している。
制服がきっかけに
我が家の場合、エム氏からカミングアウトを受けたきっかけは制服だった。
通う予定の公立中学はブレザータイプで、女子用スラックスもある学校だった。
入学説明会でも女子用スラックスを着用する生徒もいますという説明があったので、スカートが嫌いな我が家のエム氏も大丈夫だ!と安心したのを覚えている。
でも、エム氏が着たいと言ったのは男子用ブレザー、男子用ズボン、男子用シャツ。
女子用スラックスやブレザーではなく、こっちがいいと頑なに主張していた。
エム氏がジェンダーに対して違和感を抱えているのを知らなかった私は、ほとんど見た目が変わらないし、なぜこだわるのか理解できず、ズボンを履くのは全然いいと思うのだけど、左右の合わせとかも違うから、女子用ブレザー、女子用スラックス、女子用シャツにしておいた方がいいんじゃない?男子用は学校的にもちょっと無理だと思うよ?と。
エム氏はきっとこのままでは埒が明かないと思ったのか、どうしても男子用がいいんだと理由とともに手紙に綴ってきたのがカミングアウトの手紙だった。
その手紙を受け取って、そうだったんだね、話してくれてありがとう、制服は男子用にしようと話をした。学校には相談するから大丈夫だよと。
ちなみに、制服注文は、同じ小学校からあがってくる子もたくさんいる中で、一斉注文の時に行くのはやりにくさがあった。
一斉注文に行けない場合は、個別にあとから注文できる洋品店があることを知り、別の日にその洋品店を訪れて注文をした。
採寸の時に「え?男子用ですか?」と何度も確認をされて、気まずい気持ちになったのを覚えている。
初めての中学校の面談に向けて
制服の注文はひとまず終えたものの、そもそもの学校生活でのことを中学校に事前に相談しに行っておいた方がいいだろうな。
っていうか、制服は男子用制服を注文したけど着用オッケーなのか事前に確認しておいた方がいいよね、などなど思って緊張しながら入学予定の中学校に面談を申し込んだ。
面談に伺う前に、エム氏とも中学校に入学するにあたっての気がかりを聞かせてもらったら、主に3つだった。
トイレは多目的トイレを使いたい
体育の着替えは更衣室を使いたくない
プールの授業は絶対に受けたくない
あとは中学校のことはよくわからないからなんとも言えないとのこと。
そりゃそうよね、母もよくわかりませんって思った。
「誰に話してもいい?」はとても大事
学校に相談する時にエム氏に確認したのは、「誰に話してもいい?」ということ。
担任の先生のみに話してほしいのか?
保健室の先生にも話していいのか?
体育の先生にも話していいのか?
勝手に他の生徒達に知られないならば、他の先生にも話していいのか?
誰までに話していいとするのかは、エム氏本人の想いを大切にしたいし、尊重するのを基本にしつつ、意見を聞いたうえで、「念のためだけど、こんな可能性も考えられるように思うけど、そこは気にならない?」など確認はした。
どこまでの人に話していいと思っているのか?はとても大事なことなので、学校側にもこちらの希望を明確に伝える必要があると思う。
どうしても先生方の中でもLGBTQ+への知識や理解に差があると思う。忙しい中、当然のことだと思う。
たまたまエム氏が入学した中学校は、数年前からLGBTQ+の当事者の方を迎えての講演を年に一回実施されている学校だったので、先生方も一定の知識や理解を持っていらっしゃったのでありがたかった。
それでも、言わなくてもわかってくれるはず、ではなくて、特に大事なこと(アウティングに関わるようなこととか)は明確にこちらの意思や背景などは丁寧にお伝えすることは大事だと思う。
奥にある願いから
いよいよ学校との面談。
面談には夫婦で伺わせていただいた。
入学する我が子がトランスジェンダーであることを伝えつつ、面談でまずお話させてもらったのは、こういうことを協力してほしい!という相談や要望ではなくて、何よりもまず私たちの奥にある願いからはじめたいと思って、そこからお伝えさせてもらった。
奥にある願いを伝えようと思ったのはNVCの学びの中で、異なる考え方の中でも奥の方にある本質的な願いでなら深いところで繋がれるということを実感していたのもあったし、学校の先生方へのリスペクトがおおもとにあったのでそれも最初にお伝えしたいと思ってた。
「私たちは、子ども本人が、できる限り安心して楽しんで学校生活を過ごしながら成長していって欲しいという願いがあります。
このことは、きっと学校の先生方も私たちと同じように願ってくださっていて、日々心を砕きながら子どもたちに向き合ってくださっていらっしゃっていると思っていて、本当に日々、先生という存在に感謝と尊敬の気持ちがあります。
本当にありがとうございます。
今回ご相談させていただきたいことはあるものの、もちろん家庭からもできる限りのことはしたいと思っています。
ただ、本人が安心して学校で過ごせるためにどうしても学校のお力をお借りることもあると思いますので、気がかりなことはご相談させていただきたいと思っています。
でも、ご対応が難しいことは遠慮なく難しいとお伝えいただけたらと思いますし、可能な範囲で構わないので一緒に考えていただけたらとても嬉しいです。」
たしか、そんなことを話させてもらった。
校長先生は、学校も同じ願いを持っています。もちろん一緒に考えていきましょう!
とおっしゃってくださった。
子どもの想いを真ん中においてくれた
それから印象に残っているのは、本人はどのように接してもらいたいと思っていますか?男の子として接してもらいたい?それとも、性別については周りには明確にせずに、気がかりなことを解決していく感じがいいのか?というようなことをすっと聴いてくださったこと。
その問いかけによって、「本人がどうしたいと思ってるのか?」という子どもの想いを真ん中に置いて考えようとしてくださっているのを感じて、とても心強く感じた。
その後、実際に気がかりなことをいくつかご相談させてもらい、特に着替えやトイレなどは具体的にどんな形で解決できるか?は次の機会にエム氏と一緒にきて実際に見たり話したりしながら決めましょうということになった。
次にエム氏と一緒にお伺いしたときは、実際の多目的トイレの場所だったり、着替えのときに使っていい場所だったりを見学させてもらうことができて、入学前の色々わからない時期だったので、少し安心したのを覚えている。本当にありがたいと思った。
そしてこの後、先日の記事に書いたことがあって、さらに先生方へのリスペクトがあふれることになった。
ほかにも親の私よりも先生方の方が諦めずに向き合ってくれた修学旅行の話もある。
これはまた今度ぜひ書きたいと思う。
あと、保健室の先生にもやっときた話などもどこかのタイミングで書きたい。
ここまで書いてきて、改めて思うのは、たまたま学区の中学校が理解があり、子どもの想いに寄り添ってくださる学校と先生方で、本当に恵まれていてラッキーだったと思う。
そんな恵まれた中でも、入学してしばらくして、学校生活が苦しくなってしまい、登校前に過呼吸が出るようになり、本人の意志で学校には行かないという選択をすることに。
ただでさえ多感な時期に、周りに話せないことを抱えながら過ごすことは、想像を遥かに超えた大変さがあったのだと思う。
事情も話してくれてわかっているし、学校も協力的に関わってくださっていてもだ。なかなか一筋縄にいかないものだなと思った。
ちなみに今はとてもエム氏本人に合った高校に出会うことができ、楽しく学校生活を過ごすことができている。
毎日楽しそうにしていて、表情もとても明るくなり、学校でのいろんなことや友だちのことなどを嬉しそうに話してくれるのは、やはり親としてほっとしている。
学校がすべてではないけど、やはり大切な成長や学びの場だなと改めて思う。
今回は中学校に入学するにあたっての諸々の中で書き残しておきたいなと思ったことを綴ってみた。
最後まで読んでくれたみなさん、ありがとう。