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軽い気持ちでDuolingoを始めたら生活を支配される羽目になった

皆さんは人生で語学にハマったことがありますか?私にはありません。

というか、「何が悲しゅうてwwwwwww違う言語なんかwwwww勉強せなあかんのwwwwww」くらいで生きてきました。ネイティブと同等の直観を持つことも叶わないまま、微妙〜に片手落ちのツール(言語)を習得するために時間もコストもかけるのって、単純にタイパ悪くねみたいな。

ところが人生いろいろあるもので、表題のとおり、軽い気持ちでDuolingo(語学学習アプリ)を始めたところ、ありえんハマり方をして中国語を勉強する羽目になりました。今日はそんなDuolingoに支配され続けた2ヶ月半を振り返っていきたいと思います。


空き時間にやれることを求めて

去年の12月、私は頭がパツパツの状態で生きていました。年末は駆け込みでのご依頼が増えるため、常に何かを考え、連絡を返し、アウトプットをしなければならない環境に置かれるのです。

そこへ来て去年は、博士論文の最終改訂作業という大変重たいタスクがのしかかっていました。指導教員+副査からの「意図不明」「自明では?」「なぜこの結論に至るのか説明がなされていません」みたいなコメント(約200個)を一つずつ解決していくのは、大変胃腸に厳しい作業でした。

種類の異なる重たいタスクが常にあると、息抜きもままなりません。ちょっとばかし時間があっても「あ〜あれやらなきゃ」みたいになる。かといってずっと集中し続けることはできないので、ドキュメントを開いては虚空を見つめ……みたいな日々が続いていました。めちゃくちゃ無為。

せめてゲームとか、YouTubeのような受動的な趣味があったら良かったのですが、私には趣味もありません。狂ったように歩くか、無理やり寝るか、リラックスの手段はそのくらいでした(狂い歩きが高じて山手線1周、55kmを歩いた話も、そのうち書いたほうがいいかもしれないですね)。

そんななか、お世話になっている媒体で、懇意にしているライターさんが語学学習アプリ「Duolingo」のレビューをなさっていました。(noteに埋め込むと、なぜか毎回OGPが出ない…)

Duolingoといえば、私も7年くらい前にインストールし、学部のときに挫折したフランス語に挑んだものの、「やっぱやめぴ」で放置し続けていたアプリです。でもなんだか進化していそうだし、気分転換にいいかも。そんな気持ちで再挑戦することにしました。

学ぶ言語は、正直なところ、英語以外なら何でも良かったです。とにかく「仕事にも研究にも関係がないことをしたい」気持ちだったので、ちょうどセブで中国人の友達ができたことを理由に、軽い気持ちで中国語を選びました。

これが狂気のトーナメントへの入り口だったとはね……。

「1日5分」で楽しくレッスン開始…のはずが

Duolingoでは、1日のノルマを自分で設定できます。確か5分/10分/15分の3択だったかと思いますが、とにかく「意識低い系」でやっていきたかったので、まずは5分を選びました。

最初のレッスンは単語のみで、「猫(猫)」とか「狗(犬)」とかそんなレベルです。正解時の「ポピーン!」みたいな音が気持ちいいので、あっという間に1日分が終わりました。

「まーこのくらいなら続けられるか……」と数日取り組んでいたのですが、ここで絡んでくるのが、1週間ごとの「リーグ」機能。レッスンごとに得られる経験値で競うシステムで、上位数名までは上位リーグに進出できます。

実は夏野、鬼の負けず嫌いなので、こういうシステムにはめっぽう弱いんですね。「この私が1位じゃないなんて有り得ないから」とかいって取り組んでいたら、あれよあれよと上位リーグに進出していきました。

私の生活を監視してるのか?
超・使える表現も満載だ

アプリ版には文法解説がない!

当然の帰結ですが、上位リーグに行けば行くほど†語学狂人†の巣窟(すくつ)になっていきます。初期の記憶はもう薄れましたが、朝/夜に規則正しく学ぶことで得られる「15分間、XP倍増」などのアイテムを駆使しつつ、仕事の移動時間をすべて語学に充てることで†語学戦士†との戦いを制するようになっていました。

ところがここで立ちはだかるのが文法の問題です。アプリ版のDuolingoでは文法解説がないため、新しい表現が出てきても、カンで問題を解くしかないのです。

先述のとおり、特殊アイテムには時間制限があるので、いちいち間違っていると経験値効率が下がってしまいます。ではどうするか?勉強するしかないんですね。

というわけで、文法解説の欠落を補うべく、書店へ行って文法書や単語の本を購入。ウォーキング時には聞き流し系のYouTubeでリスニング力を鍛え、最短最速で経験値を稼ぐ方向にシフトしました。あれ?もはや普通に語学やってる人じゃね?

Duolingoに支配されているうちに、人脈が広がる

ダイヤモンドリーグあたりからは本当に激しい戦いになり、昨年末に友人と行ったシンガポール旅行中も、待ち時間はひたすらDuolingoに取り組んでいました。飛行機内では文法書を読むと同時に付録音声を聞いていたのですが、これは睡眠導入剤になってよく眠れました。

そんな会社はやめた方がいいと思うよ

私が中国語を始めたことは中国人の友達にも伝えていて、「いつ諦めるか見ものだな」とか言われていたのですが、私が意外としぶといので、春節には中国人ファミリーのパーティに招いてくれました。

餃子を包む作業を任せてもらいました。めっちゃ下手だったけど

完璧に覚えた「太贵了,不买(高すぎます。買いません)」を披露したら妈妈が爆笑していたので、ダメ押しで「便宜一点儿!(まけてください)」と言ったら、「今すぐ中国に行けるよ」と熱烈に背中を押されました。難しいことで有名な「出租车(タクシー)」を発音したら、「こりゃダメだ」とすぐに手のひらを返されましたが。

隠しリーグ「ダイヤモンドトーナメント」にブチ込まれる

そんなこんなで学習を続けていたところ、最上位の「ダイヤモンドトーナメント」のさらに上位である隠しリーグにブチ込まれました。

ここまで来ると本当の戦士しか残っていなくて、1日の何時間をDuolingoに捧げているのか?みたいな人しかいません。怖……まあ勝つんだが。

決勝を迎えるころには、今Duolingoに収録されている中国語のレッスンは全て終わってしまっていて、経験値も稼ぎづらくなっていたのですが、過去のレッスンを何度も復習したり、英語版に切り替えて拼音を勉強したりしてしぶとく食らいつきました。

最後の最後、決着がつく19時付近には研究室の先輩・後輩と論文のチェックに取り組んでいたのですが、「ちょっと戦わせてください」とかいって、2位の人と熾烈な争いを繰り広げたのち、全てのリーグを制しました。バトル星人の私と懲りずに仲良くしてくれて、ありがとう。

最後の実績解除。いろんな裏技に頼ることもなく、純粋に†語学狂人†として勝ちました

※攻略方法についてはこのような情報もあるようです↓

Duolingoでできること、できないこと

そんなわけでDuolingoの中国語レッスンは全て終わってしまったので、結果について振り返りたいと思います。

声調・拼音の勉強は「英語版Duolingo」で

そもそもの前提として、中国語を学ぶには「声調」「拼音(ピンイン)」を覚えなければなりません。

「声調」はあの有名な、マーマーマーマーのやつです。要は4つのトーンがあって、同じ「フ」でも「フゥ↑」なのか「フゥ→」なのかでまったく意味が変わりますよというシステムです。難しすぎるだろ。

なおかつ、中国語には拼音(ピンイン)という、日本語でいうところの「ひらがな(ふりがな)」に当たるものが定められています。声調と拼音を覚えることで、知らない単語でも正しく音読できるわけですね。

ところが日本語版Duolingoでは、これらを体系的に学ぶことができません。上述のとおり、いきなり単語の学習から始まるので、カンで覚えるか、他の教材で補うしかないのです。

この仕様のせいで、私はいまだに「読めるし、聞き取れるけど、タイピングできない」状況に置かれています。「报纸(bàozhǐ:新聞)」とかもね、音も意味もわかるんですよ。でも拼音でどう入力すればいいか分からない。これでは中国人の友達にLINEひとつ送れません。

ところが、なぜだか知りませんが、英語版のDuolingoには声調・拼音ともに学べるシステムがあるんです!英語版への切り替えはサクッとできるので、特別な準備も要りません。

まずは英語版で拼音を学んでから、日本語版の中国語レッスンを始めるのが良さそうです

過去に戻れるのであれば、まずは英語版で声調・拼音を勉強してから単語や文法のレッスンに入ったことでしょう。そのほうが効率いいし。

ちなみに英語版には漢字の練習なんかもあるので、小学生に戻った気分で「和」の書き方とかを勉強できますよ。

Duolingoの中国語は、HSK何級まで学べる?

中国語力を測る検定として、日本ではHSK(漢語水平考試:Hànyǔ Shuǐpíng Kǎoshì)、もしくは中検(中国語検定試験)がメジャーなようです。

このうちHSKは、ちょっと分かりづらいのですが、1級がもっとも「低い」レベル、6級がもっとも「高い」レベルとなります(※)。

※ちなみに近々、HSKはリニューアルして9級までに再編され、各級の内容も変わるそうです。

レベルの目安は、公式サイトによるとこのような感じ。色々な情報を見てみるに、「中国語がちょっと話せる」と自称するには、HSK4級が目安になるのだとか。

(初級)
1級:大学の第二外国語における第一年度前期履修程度。
2級:大学の第二外国語における第一年度履修程度。

(中級)
3級:生活・学習・仕事などの場面で基本的なコミュニケーションをとることができ、中国旅行の際にも大部分のことに対応できる。
4級:中国語を用いて広範囲の話題について会話ができ、中国語を母国語とする相手と比較的流暢にコミュニケーションをとることができる。

(上級)
5級:中国語の新聞・雑誌を読んだり、中国語のテレビや映画を鑑賞することができ、中国語を用いて比較的整ったスピーチを行うことができる。
6級:中国語の情報をスムーズに読んだり聞いたりすることができ、会話や文章により、自分の見解を流暢に表現することができる。

各級の難易度はサンプル問題を見ていただければと思うのですが、日本語話者の場合、漢字が読めるのがかなり強いアドバンテージなので、1級はかなり簡単だと思います(スキップを推奨する人もいます)。

たとえばですが、文章を読んで適切な写真を選ぶ問題なら、たとえ細かな文法が分からなくても「『衣服』って書いてあるんだからそりゃ服屋でしょ」みたいな選び方ができます。日本人なら、2級〜でチャレンジするのが良さそうです。

んでもってDuolingoでの出題範囲ですが、HSK2級まではほとんどカバー、3級の単語がちょろっと出てくるかな?くらい。

ただし、1級相当の「冷(寒い)」が出てくるのがかなり後半だったりと、出題の順序が若干不思議なところはあるので、試験対策をしたいのであれば別途書籍を購入するか、YouTube等で補う必要があるでしょう。

ちなみに私はHSK2級のサンプル問題を解いたところ、ほぼ満点を獲得できました。ただ、3級からは拼音がなくなるし、単語数も増えるので別の勉強方法を探すしかないですね。

私がずっとお世話になっていたYouTube動画たち↓

聞き取れる/発音できる、は雲泥の差

英語もそうかもしれませんが、中国語を「聞き取れる」ことと「発音できる」ことの間には高い壁があります。

なんというか、口の筋肉の使い方がまったく違って、「我(wǒ:私)」すらコツがいる感じ。「日(rì)」なんかね、「rとjの中間の音」ですからね……「我是日本人(Wǒ shì rìběn rén)」すらスッと名乗らせてもらえないからね……。

声調も有気音も難しいので、慣れるまでは、普段出している声量の2倍くらい出してやっと中国語っぽくなるかな?という感じです。頑張って大声出していこうな。

↓私が公園を2時間歩きながら練習しまくっている動画

語学って面白いね!

というわけで、Duolingoで死闘を繰り広げているうちに普通に語学を始めてしまったという話でした。

中国語に関しては、注意書きを見て「『因为~所以』構文だ!」と感動したり、観光客の方が自販機を指差しながら「这……这个……」とかおっしゃっていると「『え〜っとこれが……』みたいな言いさし表現か」と気付いたりと、インプットの機会も多いです。きちんとした文法で話せなくても、「酒店前面(ホテルの前)」「那件衣服(その服)」くらい言えるようになれば旅行でも役立つんじゃないでしょうか。

個人的には、これまで「語学が嫌い」だと思っていたけれど、実際のところはアルファベットに興味がなかったんだな、と気付けたのが収穫でした。思えば高校の頃から一番好きな科目は漢文だったし、卒論のテーマは助数詞/類別詞(classifier)だったので、英語で「語学嫌いじゃ!」となる前に中国語をやっておけば、もっと異なる人生があったのかもしれません。

今は、より上のレベルを学べるアプリを探すとともに、誘われるがまま、マジで知らん中国の歌手のライブとかに赴く日々を送っています。いつか大好きな李賀の詩を原語でしっかり味わえるようになりたいですね。四千年の歴史を感じろ!再见……

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夏野かおる
とっても嬉しいです。サン宝石で豪遊します。