〇〇戦隊〇〇ジャー!
【チャンさん年少の頃】
幼稚園で戦いごっこをするうちに覚えてきた戦隊モノのヒーロー。
試しに初めてテレビを観てみると、チャンさんたちまち虜に。
「スーちゃんにじゃまされるからよぉ」と、押入れに籠って何やら作り始める。
疲れ果ててそのままドラえもんみたいに寝てしまい、翌朝やっと完成!
できたのは、チャンさんオリジナル戦隊ヒーローコスプレ(お面と剣)。
お面は、真っ白な画用紙に鉛筆で不器用な縦と横の線がいくつも書いてあって、目出しのための穴が二つくり貫かれているシンプルかつモノクロな仕上がり。(どうやら乱れ踊る線は、線路をモチーフにしているらしい。)
剣は、クロッキー帳の表紙をリングからビリビリと引きはがしたそのままの味を活かした、ものすごくギザギザと狂気をまとったノコギリみたいな仕上がりになっていた。
正直、一目見ただけでは、というか何度見ても、あの戦隊もののヒーローだとはわからないけれど、チャンさんはとても満足気な笑顔。
そんなほくほくした顔を見ていると、つられてこちらも幸せな気分になってしまう。
朝食を済ませて幼稚園の準備を始めると、チャンさんはおもむろに四角いままのお面をぐるりと顔に巻き付け、幼稚園カバンを背負って剣を持ち、「これでいく」と言い出した。
冷静に見れば、この少年はかなり怪しい…。このまま世に放っていいものなのかと迷ったけれど、チャンさんのワクワクを尊重してそのまま家を出る。
意気揚々として、堂々とバス停まで歩みを進めていくチャンさん。少年の背中にはヒーローの気概ってやつさえ溢れている。
一切恥ずかしがる様子もなく、チャンさんは颯爽とバスに乗り込み登園して行った。
勇ましいぜ!
ここだけの話、担任の先生はジェ…ジェイソンが来た!!と思ったそうだ。確かにそっちの方が近いと私も思う(笑)
けれど、チャンさん、あなたは私のヒーローよ!
━━
6年後…、10歳になったチャンさんにその時の写真を見せて、覚えているのかたずねてみた。
「覚えてる!なんかに化けたんだよね。確か、あのテレビのヒーローに!」と嬉しそうにしていた。
化けたって!確かにビジュアルは化け物?!だけど(笑)
ちゃんと覚えてるんだ!