農業って楽しいですか?なんで農業なんですか?
つい昨日のこと、はじめましての人に前のめり気味に聞かれたのが、農業って楽しいですか、なんで農業?楽しいですか??だった。
農業って、楽しいかと聞かれたら、この酷暑の中でそれを聞かれたら、ハウスの中の暑さを思い浮かべながら、そうですねぇ、楽しいけど暑くて大変ではありますね。
生業なのでそれで稼いでいかなければならないので、そこも大変ですね、資材、肥料高騰もあるし、それが作物の値段に転嫁できるかといったらなかなか難しいですよね。
でも私はもともと文学部で、民俗学とか資料で読み込むこともあったりして、古代の人たちの営みを農作業することで腑に落ちることがあったり、作業することも楽しいので、楽しいですよ。
と、答えたのだけれど、相手がそれで納得したのかはわからない。
その人は私の今いる地域の住人で、きっと周りの農家さんの大変さや、跡取りがいないこととか、色んな大変さを知ってるから、わざわざ東京の人間がなんでまた農業をやってるんだろうと、思ったのだろう。
その事がここ最近でなんだか非常に衝撃的だった。
というのも私のまわりの友達は農業を選んで仕事している人が多いので、実際やってみたら面白い職業だというのが共通の概念であり、そんなに農業って楽しくないと思われてるのか、とびっくりしたのだ。
そこでしばらく、なんでなんだろう?何が楽しくて農業なんだろう?と考えてみた。
まず一番は、たとえば山に雲が湧き立つと雨が降る、という自然の事象がある。
私は都会っ子で、田舎が都市近郊だったので自然が身近ではなかった。読書好きで外遊びよりうちにいるのが好きだし、しかも親もインドア派だった。自然の中にいることがなく、本を読む事で知識として仕入れた感じだ。
それが、大学で先生に呆れられたのだ。
古代の人たちは山に雲が湧きそれが雨をもたらすことを知っていた。山の神の存在を信じ、しばしば石を依代として、それを神とした。古今東西奇妙な石の話があるのも石を拝むと雨が降る、などということが信じられたのも、自然の力を知っていたからだ。
私は古代の人は石が雨を降らすのだというのをそのまま、石が雨を降らすと妄信していたと思っていた。
でも、そこには前提として山の自然現象があるのだ。
私は知識として知っていたけれど、それが繋がらなかった。
沖縄、九州から北海道までいくつもの田舎をまわって、やっとそれがそのまま目の前で起きている事で、見ることでわかった。
それが、すごく悔しくてまたバカだなあ自分、と思ったのだ。自然に何にも興味がなかったから、大学のゼミの合宿で山小屋に籠って先輩や仲間と資料を読み込むことをしていても、何も見えてなかったのだ。もし私がその自然の摂理を体感していれば、苦労なく資料を読み込めただろう。もっと深く探る事ができただろうに。
他にもたくさん大学で学んだことが、実際に仕事しているとそういうことか!とわかることがたくさんあった。それが楽しい。あの頃を思い出して、また楽しい。
古代から人はまず生きる事が最優先事項で、そのためには衣食住を整える必要があった。
今のように食べ物が溢れる時代はほとんどなく、食べ物を生産できるようになった農耕というのは、すごい技術だった。
それには天候の変化を見逃さないことが大事で、植物の観察は欠かせないことだった。
それを追体験しているのが、面白い。
今は便利な道具や機械もあり、そこまで自然のまま農作業はしないけれど、人の営みのその裏に、たくさんの問題も出てきていることも、自然の脅威も、変化することを考えることができるのも、興味をもって俯瞰してみることを学んできたことは、今の仕事に活きている。
そして、私は農業といっても、最初に体験したのが畜産農家の手伝い、今の仕事は園芸(ビニールハウスや露地で野菜を作ること)、米農家もやっているので、いろんな形の農業を知っているのは、他の農家さんと話をしていても内容がわかるから楽しい。
私は夫と出会う前にたくさんの農家さんから話を聞いてきたけれど、みんな農業をやる若者がいない、困っていると言っていた。
大変な仕事だし、他に仕事があればそちらに行くのもわかる。
でも、現場の大変さを知り、家に入り込んで一緒に作業してたくさんの人にお世話になった自分が、では、もとの生活に戻ります。とはいかなかった。
食べることは生活と切り離せない。
知らんふりして毎日食事をしながら今まで通りの生活をするということは自分に矛盾を抱えて生きていくことになるとわかってしまったら、仕事をすることに迷いはなく、それを楽しみと結びつけていくのは、難しくないことだ。
もし、本当に苦しくなったら、その時はその時。
今は昔と違う。士農工商でお役人に区分されたわけではないのだ、自分でまた一から考えればいい。
だから、農業って楽しいし、だからこそ農業なのだ。
#農家 #農業 #農業って楽しい #民俗学 #追体験 #自分で選ぶ #矛盾を抱えて生きられない
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?