しまんちゅの温もりが感じられるゲストハウス「奄美ロングビーチII」
ハッと息を呑むような美しい景色、近所にあったら通い詰めたくなるほどのおいしいグルメなどいろんな旅の魅力があれど、「人との出会い」を一番大事にしているという旅人も多いのではないだろうか。
以前、地域の魅力を知れる場として「飲食店」を例に挙げたが、「宿」も、その地域や地域に住む人のことを深く知れる場所のうちのひとつである。
今回は、私の地元奄美大島に旅人の間で人気で、リピーターがとても多いゲストハウスがあると聞き、その魅力を探りに行ってみた。
▼前回紹介したおすすめの飲食店の話はこちら
手作り感と木の温もりを感じる外観
今回訪れたのは、「健おじ」の愛称で親しまれている島出身のオーナー久保健市(くぼ けんいち)さんが営むゲストハウス「奄美ロングビーチII」。
健おじが定年後に始めたというゲストハウスは、木を基調とした建物に、サンゴ礁が埋め込まれた白い壁、周りにはヤシの木がそびえ立ち、南国の風を感じることができる。
また、DIYが好きという健おじは入口のスロープを海から砂を運んできて手作りし、いまは1階のベランダに屋根付きの洗濯物干し場を増築中だった。
開放的で小さな工夫が詰まった宿内
このゲストハウスは、夕陽や満天の星で有名な大浜海浜公園の近くにあるのだが、その満天の星をイメージしてあらゆるところに健おじのこだわりポイントが込められていた。
どれも分かる人には分かる、といった小さな工夫だけれど、それに気づくと、健おじは嬉しそうに笑って、その工夫のウラに隠れたエピソードを話してくれた。
島人のつながりを凝縮したような宿泊体験
南国を感じさせる外観も、星を基調とした開放的な内装も、この宿の魅力のひとつだと思うが、私がここで時間を過ごして一番感じたのは、健おじと宿全体に広がる温かい雰囲気だった。
今回取材に応じてくれた健おじは同じ島人(しまんちゅ)とはいえ、初対面。それでも、にこやかに中を案内してくれる健おじにすぐ心を開き、そして一緒に出迎えてくれた奥さんのひろえママには安心感を覚えた。
何が理由なのかはわからないが、おそらく飾らず自然体で接してくれる2人の姿に、実家に里帰りしてきたような感覚になるのだ。
ここのゲストは日中はそれぞれ観光したり、宿で仕事をしたり、思い思いの時間を過ごすが、夜にはみんなお酒や食材を持ち寄って、自然と宴会が開かれるのだという。
そこには健おじも参加し、みんなでわいわい盛り上がり、ウクレレを弾く人がいたり、歌を歌ったり、誰かの誕生日をお祝いしたり。
初めましての人も、常連さんもみんな混じって楽しいひとときを過ごす。
そんな過ごし方が、島人の在り方そのものだなぁと思った。島では都会のような極上のサービスが受けられるわけではないし、みんな自由気ままに過ごすことが多い。
でもその人の職業や肩書きなどで区別することはなく、お酒片手に歌や踊りなど宴を楽しむ。夜が明ければ、何事もなかったかのようにそれぞれの日常に戻る。
島で育った私にとっては、それが特別だと感じたことはなかったが、一度奄美の外に出てみて、この島の人とのつながりが温かいと感じるようになった。
もしかしたら、ゲストハウス「奄美ロングビーチII」が気に入って、何度も足を運ぶお客さんはこの温もりに惹かれているのかもしれない。
「健おじ、ひろえママまた遊びにきたよ〜!」「おかえりー!」という声が今にも聞こえてきそうなゲストハウス、気になった方は一度足を運んでみては。