【長野日記】12月、澄んだ空気が浮き上がる
12月1日
初めて穂高神社に行った。駅に掲示されていたポスターが目に止まって。「かみあかり」という催しがあるらしい。来場した人たちが竹に仕込まれたろうそくに火を灯していく。
一緒に行った後輩ちゃんは御朱印集めを趣味としており、このイベント限定のものをいただいていた。竹のスタンプ(?)が押してあり、とても可愛かった。
「また思い出が増えましたね!」と言う後輩ちゃんが、竹のスタンプよりも可愛かった。
12月5日
長野に出張に来られた方をぽっとごはんに誘う。美味しいご飯を食べて、お店の前で「ありがとうございました。おやすみなさい」までは楽しいが、帰り道は自分の首を絞めることになる。
居酒屋の集まるエリアから最寄りの駅まで電車で帰り、家に向かう。(お誘いした方はお店の近くに泊まるので)
最寄りの駅からわたしが住む家は徒歩40分。(この町に住み始めて、わたしにとっての「最寄り」の意味の幅が広がった)車とすれ違うときしか足元は照らされないような田舎道。側溝に蓋がついていない。歩道の区切りはなめらかではなく、明らかな段差になっている。
わたし以外歩いている人がいない。
人が歩いていたら安心かと思いきや、わたし以外の人がぽつり歩いていても......こわいのだった。
12月8日
近所を散歩する。近くのカフェ行こうかな、とかいう選択肢がそもそも無いのは、節約できるありがたさ8割、切なさ2割(この割合は日替わり)
雪を被った山々が見える。なんだか目が覚める気がした。急にハッとするような。着実に季節は移ろう。身を持って四季を感じた1年だったと思う。
これからもわたしはここで生きていくのか、ここを想いながら別の街で生きるのか。
決定を迫られているような気もする。気のせいだろうか。
12月9日
「最寄り」の駅までてくてく歩き、電車に乗って町に出る。
家の近所とは違い広々とした通りに、個人経営のカフェや美術館が立ち並ぶ。時間をかけて足を運んだから、素敵に映るのだろうか。いやいや、元々立派な歴史や想いが積み重なってできている町。
大事な時間だな、と思いながらまっすぐな道を歩く。いつも大活躍するイヤホンはひと休みしておいてもらおう。
いろんな考えやアイデアが浮かんだ。どうしてもどれかはこぼれ落ちてしまうのだろうな、と思いながら頭の隅にメモをする。帰りの電車に乗る2時間後の自分に託すために。
帰り道、駅から自転車を漕ぐ(訳あって駅に置きっぱにしていた自転車を回収)普段より目線がずっと遠くなことに気づく。白くなった山々と、まだ白くない山々を、見据えていたかった。
町に出かけた理由は、透明のiPhoneケースとピアスを購入するため。iPhone11Proのケースを近所で全然手に入れられずやきもきしていたのだが、無事購入できてよかったな。嬉しくて2個買ってしまった。
先日浅間温泉の雑貨屋さんで買ったこのステッカーをやっと挟めた。
家に帰ってきて、ちょっぴり遅めのランチ。文章を書いたり、友だちに手紙を書こう。
12月14日
1日に行った穂高神社の「かみあかり」も、今日の信州大学の定期演奏会も、駅や駅前通りのポスターで知った。町の中で町の情報を仕入れる。なんて文化的!とそれだけで嬉しくなる。
同時にポスターの偉大さを知る。パッと目に止まり、すぐに情報が頭に入る構成、デザイン、言葉選び…..ちょっと興味出てくるな。
さて、藤井風さんの「青春病」が大好きなわたし。先日ライブ映像がYoutubeで公開された。
過去の自分の青春に想いを馳せるのではなく、今このときに謳歌されている青春に目を向けたくなる。不思議だなと思いながら涙ぐんでしまう。青春っていつの日も素敵で儚くて、でも決してそれが全てではない。むしろ青春を抜けた先がスタートなんだ、地続きの日々を熱を持って歩んでいくんだ、と背中を押してくれる。
そんなことをじーんと感じていたら、青春に触れる機会をポスターで知ることができた。信州大学吹奏楽団の定期演奏会。
ソロを預かった際には、どれだけ緊張するのだろうか。でも堂々と音を鳴らしていて、それだけで胸打たれる。
シュガーソングとビターステップはかなり印象的。メインステージの端から伸びているサイドステージ?まで出てきて踊っている子たちから目が離せなかった。キレキレのダンスを見て、これに叶うものは無いな、と思ったりする。
曲と曲の間のMCも、幕ごとに担当が変わり、個性豊かな曲紹介がされていた。漫談みたいなパートがとても面白かった。ドリフメドレーの後、「(ドリフへの尊敬の念を込めて)ずっとちょびひげ着けていきます!」という宣言後、すぐに捨てるくだりとか。
他にも、第二部で譜面台の裏の絵(客席に見える側)が変わったり、幕間でゆるっと始まったバンド演奏がジャジーでとてもかっこよかったり。さまざまな要素で楽しませてもらったのだった。
終わった後、いそいそと会社の忘年会に向かう。青春を大いに浴びさせてもらったわたしは、他でもない社会人7年目だった。
12月17日
会社の回覧で信州大学の広報誌と統合報告書を読む機会があった。
国内外で広げている「水」のための研究活動、教育学部の卒業生であるベテラン先生が続けている「映画をつくる」授業についての記事がたいへん興味深かった。大学の広報誌ってこんなにおもしろいのだっけ。
背表紙には、長野市の展望台から写真部の方が撮ったアルプスと雲海の写真も。いつか行ってみたい展望台が増えたのでしっかりGoogleMapにフラグを立てる。
「信州」というのは旧国名の「信濃国」の略称であり、旧国名をそのまま大学名に残しているのは信州大学だけだそう。
触れるたびになんだか心地よいなと感じている「信州」という言葉。先日ローカルスーパーで手に入れた「信州ウイスキー」も美味しい。
12月24日
クリスマスイブの午前中は健康診断。なんて色気のないスケジュール……と思いながら寒空の中歩く。
健康診断が終わり、たまにしか行かないイオンモールを端から端まで見た。人へのプレゼントを買う目的で歩くと、だいたい自分の物を買って満足してしまう。
夜は後輩ちゃんと予定がある。何かクリスマスらしい食べ物を買っていこうと考えていたら、駅中で「チキンいかがですかー!」と頑張っているサンタガールたちが。可愛い売り子さんからモスチキンを購入するといういい体験をした。
初めて降り立つ豊科駅。クリスマスの2日間のみ、駅からあづみの公園までシャトルバスが運行してくれていた。イルミネーションを見るためにやってきた。
クリスマスなのに人があまり居ない……平日だから?と話しながら光で彩られた公園の中を歩く。長野といえばのりんごが可愛かったな。
12月29日
市民だけど市内の宿にも泊まりたい。松本駅から10分ほど歩いたところにある「旅宿松本やぐら禅」に一泊することにした。
木の香りを感じながら作業できるのがとても心地よい。今お宿で書き進めているこの長野日記、木の香りも一緒に届けられたらいいのに。
バスルームも新しく綺麗で使いやすかった。松本へ訪れる一番の目的が松本城の人にはとてもおすすめかも。いつでもすぐに観に行くことができる。
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新たな年の始まりが近づいている。1年後のわたしはどこで何をしているだろうか。長野県に居ても、居なくても、この澄んだ空気を忘れたくないな。