先生、教育実習生は未来の宝です
今日も教育実習を終えて帰宅する、学生の方々お疲れ様です。しっかり自分にご褒美をあげて、よく眠って明日に備えてください。
教員になる、免許を取るという選択肢を選んでくれてありがとうございます。先生になりたいと少しでも思ってくれてありがとう。
しかし、そんな実習生を理由あってか、ないのかわかりませんが罵倒する教員も少なからずいるようで、みなさんの周りにはそんな人はいないですか。大丈夫でしょうか。
「指導案の漢字のミス一箇所だけで、長時間叱られた」
「学生気分ではないのだから、教壇に立ったら責任を持てと生徒の目の前で叱られた」
「出欠の書き間違いをしてしまい、更衣室に呼び出されて床に出席簿を投げつけられた」
「仕事の邪魔だから、できるだけ目の前をうろつかないでほしいと言われた」
「授業見学などよりも、物を運ぶことや雑用ばかりをやらされている時間が多かった」
「担当教官の授業のミスを見つけてしまい、授業後指摘したらそれ以降口を聞いてもらえなかった」
これはほんの一例ですが、わたしが過去にも最近も耳にしてきた教育実習生の被害の声です。
自分の勤めている先が教育実習期間頃であることと、Twitterのリプで相談を受けたことをきっかけに、教育実習関係の相談のみDM(@natsumi0451 のアカウントの方で)を受け付けました。朝晩の通勤中や、昼休みなどに返信するようにしているのですが、何十通もDMが来て、こんなに悩んでいる学生が多いんだという現状に胸が痛くなりました。
わたしにDMをくれる学生はみんな、丁寧で熱心で、その文面を見ているだけで向上心が伝わり、本当に一生懸命実習と向き合っているんだなと思える方々ばかりでした。素敵な人柄の方ばかりです。
単純に、指導法の悩みなど、自分に自信がなくて相談したという悩みもあるのですが、話を聞いていると、とにかく教員の対応がひどくて悩んでいる人が多かったです。自分も同じく実習をこなしてきて教員として働いてるのに、何故そんな言葉が出せるんだという怒りさえ覚える対応もありました。
今現場にいる先生。いくら自分と合わない学生や、自分の頃よりやる気が感じられない学生が来たとしても、待ってください。教員を目指して、教員免許を取ろうとしてくれている学生。それは「未来の宝ですよ」。
「給特法」なども取り上げられるようになり、民間以上にブラック企業ということが明るみになりつつある教育界。さまざまなマイナスイメージのニュースが飛び交う中、教育学部志望者はここ十年で激減しています。
そんな中でも、何かのきっかけで「教師になりたい」「免許を取りたい」と思ってくれ、教育実習にたどり着くまで単位を取ってきた学生たち。幼い頃から教師になることが夢だったと語る学生も多いです。初めて出る現場で、緊張して、失敗して、思ったよりうまくいかないことも多いに決まっているのに、彼らの翼を折ることを、どうして教育実習中に容易にしてしまえるんですか。
もちろん、だらしない学生がいないとは言えません。「親に教員免許だけは取れと言われた」「採用試験を受けるつもりはないけど、とりあえず」「教員って楽そうだと思ったから」など、安直な考えで教員免許を取得しようとする学生もいます。
そんな学生を受け入れたくない学校側の気持ちもわかります。しかし、あらゆる学生を拒否し続け、指導放棄し続けて、教員のなり手を減らして将来被害を受けるのは、働いているわたしたちではないでしょうか。「あんなやつが教員になっては困る」とはじめから、学生時代の印象から決めつけてはいけないと、わたしは思います。
教育実習こそ、普段かかわる生徒よりも大人一人を成長させることができる貴重な機会です。その者の進路を、夢を、大きく変えることにもつながります。忙しい現場を生み出している現在の教育界が悪いですが、今後の未来のために指導教官の押し付け合いも、やめませんか。担当者は決めることになるにしても、教科・学年など関係なく、学校全体で教育実習生の世話をすべきだと思います。
①授業見学はいろんな先生のものを見てもらう
②実習簿はぎっしり埋めさせない
③毎回みっちり指導案を書かせない
④若手にメンターを頼む
⑤自分も余裕と笑顔を忘れない。生徒への対応も気をつける。
⑥採用試験の結果を知らせるようにしてもらう。講師の確保という縁につなぐ
①授業はいろんな先生のところへ見学させる。
担当教官になったからといって、自分の授業ばかり見させていては自分も実習生もお互いに疲れるでしょう。他教科・他学年の先生の授業をどんどん見に行くようにさせることも、仕事の分担にもつながると思います。何より本人の成長につながるはずです。いろんな先生と交流することで実習生は新たな知見を得ることができ、視野が広がって自分も面白い授業がしたいとわくわくするはずです。
何より、人と人。たった数週間のかかわりでも、濃い絡みがある人とはよっぽど相性がいい人でない限り疲れます。担当教官だとしても、指導しすぎない、干渉しすぎない、これがお互いのためです。仲良くなんてなれません。ならなくていい。ほんの一瞬の縁ですので、必要な時だけ指示をすればいいと思うんです。
②実習簿はぎっしり埋めさせない
生徒にも感想文をぎっしり書けと求める先生がいつまでもいますが、もう現代は、「必要なことを簡潔にまとめる方が勝ち」の時代です。だらだら長ったらしく今日あったこと思ったこと全てを記入して、何になりますか。本当に大切なことは心が覚えています。
もちろん、しっかり実習簿を書く学生をほめるのはいいとは思いますが、同時に、「時短で働く」ということも覚えさせていかなくてはいけないと思います。きれいな字で時間をかけて練りに練った文章で誤字をしてはいけないなんて、そんなきつい指導をしている暇があったら学生をゆっくり眠らせてください。その方が元気に授業をしてくれます。
感想は多い方が美徳だという時代は終わらせましょう。見る側も、簡潔に書いている方が働く時間が減っていいに決まっています。
考えてもみてください。先生たちは今、授業計画で日々の業務がほぼ終わると思います。それなのに、教育実習生は、慣れてないしうまくいくかわからない授業の「指導案」も、「実習簿」も書かなくてはいけないんですよ。今、毎日「実習簿」書けって言われてみてくださいよ。地獄でしょ。
「実習簿」の負担はできるだけ軽く。お互いのためです。
③毎回みっちり指導案を書かせない
本番の研究授業(公開授業)以外にも、見学をある程度終えたら実習生も授業計画をして、教壇に立つと思うのですが、「指導案」毎回いりますか。メモでよくないですか。今、先生たちは指導案など書かずに授業を日々こなしていると思うのですが、堅苦しい形式にのっとった指導案を書く機会なんて、教育実習中か、どこかの学会の研究発表でくらいでしょう。そんなにめったにない機会の練習なんて多く必要ないんですよ。
どこかの研究会で発表できるほどになった教員は、どこかの指導案を見てうまい具合に書きますから、ほとんどの教員にとって、教員人生のうちに指導案なんて書く回数が少なければ少ないほどいいはずです。他のことに時間を割くべきです。
まずは、大学側や本校の例にのっとって形式通りに書かせて、添削をする程度でいいと思いますし、そこでうまく書けないからといってガミガミ叱っても何もいいことはないです。それよりも、「授業」本番が大事じゃないですか。
指導案を書かせている暇があるなら、授業の練習や教壇に立つ回数を増やす方がいい。経験を増やす実習の方が実りがあるはずです。
④若手にメンターを頼む
教育実習生の面倒をみるとなると、ベテランが選出されがちだとは思いますが、若い先生こそ実習生と近い存在だし、実習生に協力的になりたいと考えているはずなんですね。
教科担当・クラス担当・全体統括など役割は分けるほどにいいと思いますし、実習生の心のケアをする役割として「メンター」を配置するのはとてもよいと思います。新任の先生こそ適任だと思います。メンターをやりながら、新任の先生も一緒に授業見学を回るということもすれば、両者が成長できます。
教育実習生はなかなか、先生に話しかけられないんです。DMの悩みを聞いていると、「いつも忙しそうで、話しかけるタイミングを見つけられなくてあとで怒られてしまう」という意見も聞きます。可哀想じゃないですか。
いつも、話しかけやすい、頼っていい先生がいて、疑問や吐き出したいことを気軽に聞ける存在として、「メンター」制度、おすすめします。
そんな気軽に話しかけていいよオーラ出す余裕をください、教育界。
⑤自分も余裕と笑顔を忘れない。生徒への対応も気をつける。
実習生について、生徒からの評判を耳にする場面もあると思うのですが、わたしが実習生とDMをしている中で聞いた、「教育実習生が来ている期間は貴重なんだ」という話はとても感動しました。普段教わっている先生ではなくて、たった数週間だけ来る先生の一瞬で終わる授業。人生の中で教育実習生の授業を受けずに終わる人だっているはずです。生徒にとっても「この時間はとても貴重なんだ」とわからせることで、集中力や思いやりの力も上がるはずなんです。
教育実習生がもたらしてくれるものは大きいのです。それを最大限引き出せるかは、先生方にかかっているのです。
先生方にも「この実習生はやる気がない」「だらしない」そんなレッテルを貼り続けたまま実習を終えてしまうことに罪の意識を感じてもらいたい。「やる気がない」と思ったならば、どうやる気を引き出させるか、「だらしない」と思ったならばどう改善させるか考えてください。そもそも、先生がやる気がないことはないですよね。押しつけられたしごとを嫌々こなしてないですよね。
何度も言いますが、教育実習生という存在は宝です。目の前の生徒を面倒みることだけが、教育に携わる者の仕事ではないはずです。教育界全体のことを考えないと、いつまでたっても労働環境はよくはならないです。
⑥採用試験の結果を知らせるようにしてもらう。講師の確保という縁につなぐ
教育実習期間を終えて、巣立っていった学生との縁はそれまででしょうか。誰かが、産休に入るとき、介護休暇をとるとき、助けてくれるのはその学生かもしれません。講師として呼びたくなるほど、また一緒に働きたくなるほど、手塩にかけて育てましょうよ。成長させましょうよ。
わたしは、働いている間に何度か教育実習生の担当になりました。最後にメッセージカードをクラスでサプライズしたり、写真撮影をしたり、思い出に残ることをしてあげると、涙を流して喜ぶ学生。自分も感動する機会を何度も与えてもらいました。
授業見学もどんどん、いつでも来るように声をかけています。よく「授業前に何もアポをとらないで来られて困った」という先生の声は耳にするし、一応礼儀としては前もって実習生は、見学したい先生へアポをとって授業見学するのが鉄則だとは思います。しかし、いつ見られてもいつ来られてもいいという授業を展開していないというのもどうなのかなというのがわたしの本音です。「ぜひ見てほしい」というテーマの授業のときがあるのはいいと思いますが、来られては困る授業をわたしは展開することはないので、いつでもウェルカムという気持ちです。
教育実習生に限らず、いろんな先生同士が忙しさから少しでも解放されて、自己研鑽のためにも「来ちゃった♡」くらいの勢いで、それぞれの先生が授業見学を気軽にし合える学校を作り上げるのがわたしの理想でもあります。
教育実習制度が、実習生と先生と生徒と学校全体が成長する機会になっていくこと、もっとさまざまな先生が実習を前向きにとらえて各学校の実習期間が充実したものになることを常に願います。
学校現場は、きれいごとだけでうまくはいかないかもしれません。しかし、教育実習生を夢に向かって羽ばたかせられるかは、現場の教員にかかっています。わたしは、精一杯優しく接して、しかし直さないと困るところはしっかり指摘をして、楽しく実習を終えさせて、「先生になりたい」という気持ちと自信を少しでも増やして実習生と「またね」と言いたいです。
実習生からも、実習担当の先生からの相談のDM(Twitter @natsumi0451)で受け付けています。いろんな話を聞かせてください。