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showmore「liquid city」release tour

 showmore待望の4thアルバム「liquid city」release tour、恵比寿LIQUIDROOMに行った。

 平日の、仕事終わり。普段ならば家におとなしく帰るところ、翌日が病院受診で休みなのをいいことに恵比寿へ。
 体調に不安がないと言えば、嘘になる。ただ、気持ちがどん底だった12月の夜、鶯谷のダンスホール新世紀で観たワンマンが残り火のように胸にあった。道すがら橋の上から見下ろした暗い闇と、フロアを飾るクリスマスツリーの華やかな光。ライブ中、心の琴線を鳴らし続けた音の渦。

 リキッドに着くと顔見知りが既にいて、少しだけ言葉を交わした。最近高崎ばかりですね、と言われてそうだなと振り返る。あの音楽祭はちょっと特別なんです。ブッキングが強くて。
 ・・・・・・電車一本で着く場所なのに、足が遠のいていた。

リキッドのカウンター
昭和型板ガラスを使ったステンドグラスが美しい

 スタンディング、4列目ほど。キーボード側に立つ。鮮やかなピンクレモネード。

 ライブは新作からvioletでスタート。続いてmarble、そしてcircus、redとお馴染みの好きな曲が立て続けに。歌詞が胸に飛び込んで、歌声があまりに響いて、声も漏らさずにどうしようもなく泣いていた。
 君は美しいよ、からの君は美しいのに。こんな切なさが他にあるか。

 以降はずっとぽろぽろこぼれてくる涙を抑えながら聴いていた。心を掴んで離さないシンセ、素晴らしいアレンジ、太くあたたかいベースにドラム。そして、丈造さんのトランペット。
 spotlightとリンシャンを挟んで怒涛の新作タイム。沸くフロア。あまりにいい。新しい曲たちなのに、一体感に満ちている。
 「あなたにとっての愛は、私にとっての何だ」──アルバムを貫くようなliquidの歌詞、その問いかけ。引き返せない何か、液体都市の中を浸す憂い。対峙と躊躇いと葛藤。見えない壁。それらをうねりながら放つ音。

 MC、実は一度フロアを出た。多分心が、飽和状態だった。こんなことは今までなかった。空のコップを渡して気持ちを落ち着けてから、再び熱気の中へ。

 胸躍るジャスタモメン、summer magicはego apartmentのShuと。トークのやわらかなローテンションさに気持ちが和む。
 新作からfruit、旧作から37℃、そして12月のワンマンで「産地直送漁師しか食べられない幻の魚」と言っていた、あのdaybreak。
 「明日はいつになれば 確かなものに変わるの」
 突き刺さる。届けたい気持ちと、受け入れられない気持ちと。自ら切り開こうともがく手。たしかな既視感。

 本編ラストはmetroで明るく。こんなふうに日々を楽しめたらいい。乗りこなすためにただ好きな音楽に身を委ねて浸して、その反動すらもよじ登っていけたらな。

 アンコールはauroraから。これがまた涙腺クラッシャーで、やり場のない感情が込み上げる。限りなく切ない。君の悪夢を溶かして夜空に浮かべたら──なんてやりきれなくてかなしくて美しいんだろう。
 ラストはhave a good day、引き続きぼろ泣き。日常の祈りに満ちた「よい1日を」、人はそんな小さなおまじないの繰り返しで日々生きていくのだと思う。
 最後にその祈りのベールをそっとかけられたようで、胸をつまらせながら会場を後にした。恵比寿の街が、着いた時よりも少しだけ綺麗に見えた。
 

【セットリスト】
violet
marble
circus
red
spotlight
rinse in shampoo
screen
escape
liquid
siren
SALE!
Just a moment
summer magic feat. Peggy Doll(guest:Shu)
fruit
37℃
daybreak
metro
◇Encore
aurora
have a good day

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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」