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渡辺貞夫 meets 大友直人×群馬交響楽団

 「昨日見たはずの建物が目の前に・・・・・・タイムリープ?」

 そんなはずもなく、連日の高崎芸術劇場。待ちに待ったスペシャルプログラム、「渡辺貞夫 meets 大友直人×群馬交響楽団」を鑑賞すべく足を運んだ。

贅の極み・・・・・・!

 昨年はナベサダ御大の体調不良で払い戻し中止となった高崎音楽祭公演。その払戻金をこの日のために保管していた。その時点では何も決まってなどいなかったが、2022年公演の感動をまた再びこの地で味わいたかったからだ。
 すると、なんと芸術劇場をホームとする群馬交響楽団とのコラボレーションとして開催されるという。群響とは昔仕事で何度もご縁をいただいた経緯があり、わたしとしてはもうまさに願ったり叶ったり。
 例によって高崎音楽祭なので、交響楽団とのこの豪華プログラムですらS席8000円。目を疑う。
 しかも最前列!

畏れ多い席に震える

 「ナイス・ショット」で幕開け。この夜のためのオーケストラアレンジが素晴らしく豊かな広がりをみせ、早くも上質なシネマの中に紛れ込んでしまったような心地になる。
 ナベサダによる短い楽曲紹介を挟みながら「ムズーリ」「つま恋」へ。群馬にも嬬恋(つまごい)という地名があるが、このつま恋は勿論のこと静岡は掛川。かけての選曲でもないだろうと思うが、粋な演奏に酔った。
 「ボア・ノイチ」からパティ・オースティンの思い出に触れての「ONLY IN MY MIND」、ボーカルレスでも楽器が美しく歌う。
 「アイ・タッチ」では演奏前に投げキッスならぬ投げアイムーブというお茶目さで場を和ませ、「REQUIEM FOR LOVE」で哀愁へと。一転、お馴染み「TEMBEA」で場を沸かせる。なんという構成、名曲の宝箱だ。ナベサダバンドだけに当たり前だが、リズム隊が巧すぎて巧すぎて震える。いや、西野カナじゃあるまいし。そして全体を時に支え、時に誘うようなオーケストラ。ストリングスがなんとも麗しい。

 15分の休憩を挟んで、第2部のはじまりは「トーキョー・デイティング」から。夜の深まりを感じさせる。続いて「EARLY SPRING」「I'm With You」はこれまた大人の流麗なひととき。「プレリュードのサンバ」から明るい「PAGLIACCI」「Warm Days Ahead」へ、深くも軽やかな音色に座りながらも身体が動く。
 またまたお馴染みの名曲「サン・ダンス」、これはもう痺れる。ここにこれ。欲しいものてんこ盛りにトドメ。もうこの音源リリースして欲しい。
 本編ラストは、「マイ・ディア・ライフ」を。長きにわたる音楽人生を凝縮したようなナベサダ節、ステージ上にも笑顔が咲き誇っていた。

 割れるような万雷の喝采を受けて、そのままアンコールへ。「Life is All Like That(For Snoopy & His Friends)」で存分に沸かせたあと、スタンディングオベーションに応えてふたりきりの「Cariohoso」がこれまた絶品。

 ふたりの巨匠、マエストロと素晴らしい音楽家たちによる、現実を遥かに飛び越えていくかのような珠玉の一夜だった。


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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」