ピントとトゲ、そしてわたし
世界の見え方はひとりひとり違う。
本当は、同じ色の名前を声に出していても、その色すら万人が同じものを思い浮かべているわけではない。
色の見え方は、均一ではないのだ。
ちょっと傷つきやすくなっている自分に気付いたとき、心の引き出しからそっとその事実を取り出して眺める。
これはnot for meなのだ、同じように世界が見えているわけじゃない、と。
看過してはいけないことも、我慢の限界も、勿論日々の暮らしにはある。
それ以外の、ささやかなトゲを少しずつ減らしてゆく。
ピントのあわせ方を変えてみる。本当はぼやけていないところが、じんわり滲んで写るように。色と色の境目が、やわらかくなだらかであるように。
自分の痛みや怒りを、無理矢理に閉じ込めない。否定しない。
そのかわりに自分の心に問いかける。
どうされましたか。ああ、トゲですね。
ピンセットでそっと抜いて、薬を塗って、小さなおまじないをかける。
痛いの痛いの、ゆっくり何処かへ消えますようにと。
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なつめ
がんサバイバー。2018年に手術。
複数の病を持つ患者の家族でもあり
いわば「兼業患者」