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夏来る

 梅雨の終わりかけ、夏のはじめに差し掛かるとルバーブの季節だ。

ルバーブ。これを煮るとジャムになる。

 見た目はただの苦そうな茎だが、これを刻んで砂糖とコトコト煮るとトロリとしたジャムになる。

 Twitterがここ数日、規制続きでどうにもならない。相変わらずよく寝付けてなどいないのに、これではすっかり夜を持て余してしまう。
 持て余した長い夜ほど、重いものはない。本を読んでもラジオを聴いてもいいが、上手く入り込めないだろう。こんなときはひたすら丁寧に何かをこなすのがいい。

 皮は剥かなくていいが、見た目の悪いところや変色したところはあらかじめ削いで取ってしまう。ざくりと切って洗ったルバーブを1cm幅に刻んでいく──この長さがベストというわけではないが、そのほうがとろけやすい。ザク、ザクというリズミカルな音が、深夜の静かなキッチンに響く。繊維だらけだから、音がいい。
 鍋にうつして、砂糖をたっぷりまぶしたらよく混ぜる。重量の割合は、ルバーブ2に対して砂糖1。ほうっておくと、浸透圧で水分が出てくる。待っている時間に片付けをしてしまおう。

鍋の中。

 すっかり片付けてしまって、梅シロップを薄く溶かした炭酸水を飲み終える頃には、ルバーブの水分が出てきている。さてと、ここからようやく加熱。

 焦げないように底からゆっくりとかき混ぜて、時折アクを掬う。たったこれだけの単純な作業だ。夜にはそれがよく似合う。ある人は、まるで魔女のようだと言った。そうかもしれない。
 魔法が使えたらなあ。

すっかり、ジャムの顔。

 繊維がすべてとろけてもったりとしたら、もうジャムだ。ペクチンは要らない。レモン汁を加えてもいいが、わたしは入れない。そのままがいい。
 僅かにスプーンで掬って味をみる。独特の甘酸っぱさは、最初の姿からはちょっと想像しにくい。丁寧にやさしく手を加えれば、がらりと変わるもの。

 ヨーグルトに入れようか、買ってきたパンに塗ろうか。そうやって俄かに次の日の食欲が顔を出す。手作りのよさは、多分そこにあるのだろう。

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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」