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LIVE the SPEEDSTAR at 幕張メッセ

 幕張メッセにて、初のLIVE the SPEEDSTAR supposed by ビクターロック祭り。
 乗り換え1回で行けるとあって、朝からほのぼのまったりお出掛け。開場時間10分弱前に着くくらいでいいかな、雨だけれどもう相当並んでいるだろうな⋯⋯と思いきや、あれ、全然並んでない⋯⋯?

久しぶりのメッセ。
ひとりで来たけど大丈夫かなあ、と思いつつ。
スムーズに中へ。ええっ。
フラワースタンドがずらり。綺麗。

 この時点で「ああそうか、みんなお目当てに合わせて来場するんだ」と気付く。観られるものは全部観たいわたしのような人は、比較的少数派なんだろうな(またはライターとかね)。

 入場後、「こちらに3列になって並んでくださーい」の言葉にぞろぞろ。ここで人波に乗るかたちで並んでいたら、この日スタートのROARステージ側ではなくBARKステージだった。わたし痛恨のミス。オーディションを勝ち抜いたオープニングアクトを見逃した!
 高校生バンドMaverick Mom、またいつかかならず。

リハから良。聞こえてくる。
「ねずみ浄土」よすぎる。

 まあ怪我の功名とはよく言ったもので、気付けば最前列。前にいた人たちがVIPエリアに移動したのと、後続が競歩のような速さなのでちょっと押されるかたちで前に出た感じ(ここで無理に立ち止まると群集事故につながりかねない)。壁ドンならぬ、柵ドン。こんなことってあるんだね。

近っ。

GRAPEVINE

 BARKステージはGRAPEVINEがトップバッター。えっ、トップバッター。わかっていても思考がバグる。充分すぎるほどにキャリアのあるバインがここなのは、MCでも触れられたがレーベル歴。
 「ねずみ浄土」から「Gifted」を経て「光について」を朝から聴くの、いやどんだけ贅沢よ⋯⋯。
 特に「光について」の照明演出があまりに良すぎて、魂がうっかりしゅるるんと抜けかけるんじゃないかなどと思った。ずっと暗めで推移してからの真っ白な光は、なんとも美しい。
 ラストはつじあやのが登場、「GRAPEVINEがバックバンドをやった曲です」(Vo.田中)と前振りして「Shiny Day」を共演した。ハッピーな空気が満ちていく。レーベル周年祭を彩るに相応しい、この日の幕開けとなった。

【セットリスト】
Alright
Evil eye
目覚ましはいつもなりやまない
ねずみ浄土
Gifted
光について
*ゲスト:つじあやの(vo.)
Shiny Day

 

スガシカオ

 待ってました、というにはこちらも早い順番だが、前回ツアーを諸事情で行けなかったわたしにはまさに「待ってました」の初スガシカオ。
 1曲目の「Party People」から"地上波ではできない"新曲「バニラ」、Twitterでもお馴染みの「19才」と豪快にかっ飛ばしていく。続くのはKAT-TUNへの提供曲「Real Face」のセルフカバー、DURANのギターも冴え渡って流石格好いい。タオル回しいいな、先に買っておけばよかった。
 「さよならサンセット」から誰もが聴きたかっただろう名曲「Progress」、そして「コノユビトマレ」で締め。パワーチューンをたくさん持つベテランならではの、短くも濃厚なステージだった。

【セットリスト】
Party People
バニラ
19才
Real Face
さよならサンセット
Progress
コノユビトマレ 

 

UA

 一時期パワープレイのように聴いていたUAも、ライブはこの日が初。
 「太陽手に月は心の両手に」から最新ヒット「お茶」、「情熱」と踊らずにはいられない曲が続く。フロアじゃん。「お茶」にあわせた緑色の照明演出で、会場もミュージックティータイム。そういえばコーラスのファッションも青茶白茶に緑茶のよう。続く「雲がちぎれる時」からの流れにつよい祈りを感じたのはわたしだけだろうか。
 圧倒的な存在感を放つ声のDIVA、さながら巫女でキュートで、愛に満ちていた。

【セットリスト】
太陽手に月は心の両手に
お茶
情熱
雲がちぎれる時
AUWA
プライベートサーファー
微熱
 
 

KREVA

 ラップの「やたらカジュアルな服(=B-boy系ファッション)」「目立つ派手なタトゥー」つまり「ファッションは自由だし人は見た目じゃないけど、なんとなくちょっと怖そうなんだよな」という個人的なイメージをクルッと覆してくれたのがKREVA。この日もワントーンのスーツスタイルで、スタイリッシュ。
 格好いいのは見た目だけじゃない、場にもオーディエンスにもリスペクトフル。挨拶や曲ごとにピシッとした一礼が美しい。
 感染症禍を経ての「Finally」が会場に響きわたる。やっと集まれた、声を出していいことになった。勿論身振りであらわすも自由。そんな喜びが爆発するような「パーティーはIZUKO?」「イッサイガッサイ」の一体感、みんな大好き「音色」で締めくくるのは最強。
 レーベル唯一のラップ勢、KREVA。めちゃくちゃいいステージだった。これはみんな好きになっちゃうなあ。パーティーはここだ!

【セットリスト】
Finally
基準
パーティーはIZUKO?
人生
居場所
イッサイガッサイ
C’mon, Let’s go
音色  

 

くるり

 サラリと出てきて2曲リハーサル、でもこのリハは実は本番とは違う曲。そんな粋さ。登場があまりにサラリとしていたので、冒頭ちょっと気付かなかったくらい。
 リハ「春風」「愛なき世界」を経て「まだリハだから」とまた後ほどなんてゆるりとはけて、本番いきなり「琥珀色の街、上海蟹の朝」「ばらの花」と名曲を「へいお待ち」といった風情で出すくるり、流石すぎる。バラエティに富んだセットリストがうれしい。
 MCで語られた、レーベルに所属することになった経緯の話がアツい。「心中しよう」なんて、惚れ込まないと言えない。才能を見い出すのも輝かせるのも、また才能なんだよな。「今は元恋人みたい」という言葉に、時の流れを感じた。
 心地よすぎる貫禄のステージ。いつかどこかでまた。

【セットリスト】
春風(リハーサル)
愛なき世界(リハーサル)
琥珀色の街、上海蟹の朝
ばらの花
虹色の天使
愛の太陽
Liberty & Gravity
everybody feels the same
ハイウェイ
Remember me  

 

星野源

 ねえドラえもん、こんな近くで弾き語りを聴けるのって夢じゃないよね?
 会場案内の声が俄かに強く大きくなる、振り向けばぎゅうぎゅうと思わしき人波。朝からごはんも食べずに観ていた(真似してはいけない、完全に抜けられなくなってただけ)けれど、抜けたら再度入れたか微妙だ。
 「すごいなあ」「ありがとうございます」とあのいい声で。会場がそのたびに揺れる。
 暗い曲を持ってきました、と初期の「ひらめき」「ばらばら」、そしてSAKEROCKでかつてカバーした「スーダラ節」を。「人間の真理」を歌っていると評し「やめられませんよね」「最近のコンプライアンスにはそぐわないですが」の言葉に、歌詞にも随所にあらわれる観察眼の鋭さを垣間見る。
 「恋」のバラードアレンジが美しい。歌詞の深さがひときわ輝きを放つよう。「化物」を経て、個人的に入院の思い出が深い「地獄でなぜ悪い」から名曲「くせのうた」「くだらないの中に」、少し涙してしまった。
 訥々と語りかけたMC。
 「日々、色々なことがありますけど。」
 若干の間をおいて
 「⋯⋯シンプルですけど、生きていましょう。」
 ああ、しみるなあ。笑うように生きていたい。

【セットリスト】
ひらめき
ばらばら
スーダラ節(カバー)
恋(バラードバージョン)
*ゲスト:長岡亮介(gt.cho)
化物
地獄でなぜ悪い
くせのうた
くだらないの中に 

うん、素晴らしかった。圧巻。
すべてをもらったような気さえする。

 
 

斉藤和義

 星野源終わりで体力的に若干ギブアップ気味、星野退場の波にもみくちゃにされながらいったん休憩所へ。無念、だがくらくらだ。
 斉藤和義の音楽は当然聴きたいという貪欲さもあり、水分とカロリーを補給しつつ脚を休ませながら休憩所とライブスペースを行ったりきたり。ビジョンがあるし、休憩所でも生音は充分聞こえてくるのだが。
 ドストレートなバンドサウンドが格好いい。どアタマに「やさしくなりたい」はパンチ力抜群だよなあ。
 この日初演の新曲「問わず語りの子守歌」を聴けたのは幸甚。ラストの「歩いて帰ろう」はとても大好きな曲、うれしい。場内でこっそりはしゃいでしまった。後ろに行ってはじめて、ビジョンのカメラワークもしっかり堪能した。

【セットリスト】
やさしくなりたい
明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ
問わず語りの子守歌
Boy
ずっと好きだった
ベリーベリーストロング~アイネクライネ
歩いて帰ろう
 
 

LOVE PSYCHEDELICO

 きたぞ、この日初のROARステージ。高いところにステージが設けられているので、どこからでも非常に良く見える。BARKは基本的にフラットなので、フェスでこのつくりはとても嬉しい。中央エリア前方で観た。
 ギターでジャラっと、聴衆に笑う。準備はOK?とにかく最高に粋だ!
 応えては控えめな声のシンガロングが、ごく自然に。見回すに歴戦の人も多そうだ。わかるわかる、デリコは歌いたくなるよね。
 Your Song→Last Smile→Calling you→Lady Madonna~憂鬱なるスパイダー~
 この流れで盛り上がらない人いる?勿論、これは反語だ。グルーヴがとめどなく押し寄せては溢れて、耳が幸せ。
 ここに在りながらどこかに連れて行ってくれるサウンド、醸し出される極上のムード。ギターの迸る色気。長く愛されるには充分すぎるほどの理由がある。
 
【セットリスト】
Free World
Swingin'
Your Song
Last Smile
Calling you
Lady Madonna~憂鬱なるスパイダー~
A revolution
 
 

矢野顕子

 疲れた身体に矢野顕子は、唯一無二の才にあてられてちょっとヘビーかもしれない。そんなことをふと思ったが、ここで観ないわけにはいかない。いざ尋常に。「曲はいいので聴いてください」を何度も、ウィットの中に騒動の影響がなければいいが。
 「ラーメン食べたい」でこんな楽曲を成してしまう人は世界にこの人しかいない。やっぱりあてられてしまう。続く「音楽はおくりもの」Pat Metheny作「PRAYER」の濃密さ。ピアノが嬉しそうに歌っている。
 そしてこの日くるりが演奏した「ばらの花」をカバー、一日で両方聴けるのはなんとも贅沢だ。
 これを契機に招き入れたゲスト・岸田繁との演奏が素晴らしかった。「PRESTO」「おいてくよ」の2曲、非凡な才と才がぶつかるのではなく、互いに包み込むようで素敵だったな。言うなれば音楽のマリアージュといったところ。まろやかに場を包み込む。
 新曲を経てラストは「ひとつだけ」、長く愛聴するド名曲の、生のちからに震えた。
 流石に脚がつらく会場内をそっと移動して聴いたが、音の光が隅々にまで行き渡る名演だった。

【セットリスト】
ラーメン食べたい
音楽はおくりもの
PRAYER
ばらの花(カバー)

*ゲスト:岸田繁(gt.vo)
PLESTO
おいてくよ

ドラゴンはのぼる
ひとつだけ

congrats

※スガシカオ「Real Face」カバーはSpotifyにないためインストゥルメンタルに置き換え
※斉藤和義の新曲「問わず語りの子守歌」は発売前のためまだSpotifyにない
※矢野顕子Spotify未公開分は除外
*矢野顕子「ばらの花」カバーはピヤノアキコにあるがSpotifyで公開されていないため、くるりのRei Harakami mixに置き換え

文中敬称略

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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」