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地続きのあなたを
ニュースを見ていても、XやThreadsを見ていても、心が重くふさいで気晴らしにならない日が続いた。
闇バイト。世代間断絶、治安悪化。高齢者はずるいという声の向こう側で、齢70や80を超えた人が勤務中に事故の報。一生働かないと生きていけないのよ。先週寂しげに微笑んだマダム、深い皺が刻まれた手を思い出す。
性加害のニュース、そういえばいつかあの人は「事実はわからない」としながらも加害者を庇っていた。活動できなくなるなんて、と。女性の訴えはいつも小さく、またはずるいこととして見積もられる。笑えない。
党首が言う、「女性は18歳から大学に行かせない」「女性は25歳を超えて独身ならば結婚禁止」「女性は30歳を超えたら子宮摘出を」が頭の中を蹂躙する。マンスプレイニング。
わたしも、大学進学はしたが話し合いでは条件つきだった。地元、家から通えるところだけ、私大は認めない。女子大または短大が望ましい。女性があまり学をつけると嫁の貰い手(!)がなくなる、医学など以ての外、どうせ数年働いたら家庭に入るのだからと。
経済的な理由がなくとも、道を制限された女性、そもそも進学すら許されなかった人が今よりも多かったのではないかと思う。本人の学ぶ意志よりも、トップになるほど励んでも、出会うかどうかわからない未知なる男が優先されることを悲しく思った。性別で無効化される。
より上位校に行けるのにと、担任には何度も懇々と言われた。期待と現実の板挟みで、苦しかった。近くの国公立大学に当時五指に入ると言われた研究者がいて、結局わたしはそちらを選んだ。自ら選んだから後悔していない、就職もすんなりできた、母が背中を押してくれた。それでも記憶にはいまも蟠りがある。
年齢で結婚の禁止って、なんだろう。子宮摘出って、なんだろう。ナチスの虐殺やハンセン病の人たちが歩まされた歴史は、なかったことになったのだろうか。
SFとさえ銘打てば、言い訳にすれば、法や尊厳などどうでもいいのか。そう言って逃げおおせる時代になったのだな。SFは差別や偏見を容認し、隠すための装置ではないのに。文学は、そんなふうに扱われるものに成り下がったのか。
高額療養費は限度引き上げの議論がはじまるらしい。現在でも、高額な医療費に治療を諦める人たちがいる。月またぎに怯える人たちがいる。高額療養費の算定には、入院中の食事代や差額ベッド代、先進医療にかかる治療費や入院にかかる需品も含まれない。身内が付き添いや説明で仕事を休んでも、その分がどこかから湧き出るわけでもない。
どうなるのだろうな。平成25年の検討では年収1510万円以上の枠があったものの、立ち消えになった。拡がりゆく格差、選べる命と選べない命。
弱い立場におかれた人、権力勾配の下の方にある人が、自己責任だから不要だと切り捨てられているような気がする。細いラインから外れた人を誰かが笑う。ヒューマニズム、社会とはなんだ。
おまえらは努力が足りないはずだ、黙って尽くせ、差し出せ、結果は常に行いからしか生まれないはずだと。何かを出来なければ、条件を満たせないのであれば、生きている価値が見いだせないのは当然なのだと。
それに触れた悲しみを言葉にすれば、被害者ぶるな他責だと詰られ、口を塞がれる。笑え、忘れろ。麻酔のような、賢いライフハック。
ずっとそうだったものの、今はより強く感じる。心がとめどなく痛い。痛くても何ひとつ変わりはしない。それでも地続きの誰か、少し先の自分かもしれない人を思う。思ってしまう。どうしようもなく。もうどこにもいられないような重苦しい心に、猫が頬ずりをする。
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