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眠れぬ夜のすごしかた
孤独に襲われたとき、葱を一心不乱に刻む物語はそう、江國香織さんの短編『ねぎを刻む』だった。
泣きながら葱を刻む、そうして孤独と向き合う話だ。
Twitterでとても素敵なコミックエッセイに出会ったのはもう半年以上も前の話で、わたしは思わず引用ツイートでタイムラインにおすすめしたのだった。
その作品では、葱ではなく、カップケーキがつらさをまるくやわらかくしてくれていた。
ああいいなあ、そう思った気持ちが自然と文字になった。
料理には不思議なちからがある。
料理といっても、包丁も使わないような簡単なものでいい。何はともあれ作ったというとてもささやかな達成感、食べたときに不思議とじんわり沁みてくる何か。それはかならず力になる。
簡単にできる美味しいものは、ダメな日のためにあると思う。心から思う。
どうしようもなくて気持ちの行き場がなくて、溜め息ばかりが出る日だって、おなかは空く。
そのぽっかりあいた部分を、こころの穴ごと埋めるもの。
わたしにもそんな経験が、ある。ジャムを煮てみたり、クレームブリュレをつくってみたり。葱をしこたま刻んだこともある。
引用ツイートした作品の収載された本がこちら。今日発売になる。
午後さんの『眠れぬ夜はケーキを焼いて』。
帯の背表紙側には、あの時の引用ツイート。
この作品を担当された編集担当の方が、ツイートを使いたいとの旨をご連絡くださったのだ。とても光栄なこと。
出来上がった本が一足はやく手元にあるのは、ご恵贈いただいたから。ありがたいことと思う。
すべて読み終えて、しみじみとてもいい本だった。レシピがまた、とてもいい。
眠れない真夜中に食べるお豆腐の、ホッとする美味しさ、わかるなあ。
出来たての香りに、まだ粗熱もとれていないうちの味見に、冷えた心がどれほどあたたかくなっただろうか。
美味しいって、すごい。やさしくて、強い。
孤独とともに生きていくひとに、おすすめです。
書店で購入して、身近な人にプレゼントするつもり。
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